来週の為替相場見通し『米中合意期待でドル円急伸。但しちゃぶ台返しには要警戒』(11/9朝)

今週のドル円相場は、週初108.19で寄り付いた後、直後に安値108.17まで下落しました。

来週の為替相場見通し『米中合意期待でドル円急伸。但しちゃぶ台返しには要警戒』(11/9朝)

米中合意期待でドル円急伸。但しちゃぶ台返しには要警戒

今週のレビュー(11/4−11/8)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初108.19で寄り付いた後、直後に安値108.17まで下落しました。しかし、@トランプ米大統領やロス米商務長官が中国との月内の「第1段階」の貿易合意に楽観的な見方を示すと、A米・9月貿易収支(結果▲525億ドル、前回▲550億ドル)の改善(※今年4月以来の水準まで縮小)や、B米・10月ISM非製造業景況指数(結果54.7、予想53.5)の良好な結果、C中国商務省による「中国と米国が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に廃止することで合意」との発言、DIMF報道官より「米中が部分合意に至れば、世界経済成長予測が改善される可能性」との見解、

E上記@からDを通じて、「米主要株価指数上昇(史上最高値更新)→リスク選好の円売り」の流れと、「米長期金利上昇(7/31以来となる1.972%を記録)→ドル買い」の流れが重なったこと等が支援材料となり、週後半にかけては、約5ヶ月半ぶり高値109.49まで上昇しました。もっとも、その後はトランプ米政権が上記Cに対して「何も合意していない」と否定的な見解を示したことで伸び悩み、本稿執筆時点(日本時間4時00分現在)では109.20近辺まで値をと落としております。

<ユーロドル相場>

今週のユーロドル相場は、週初1.1167で寄り付いた後、早々に高値1.1177まで上昇しました。しかし、@米中協議の進展期待や、A良好な米経済指標の結果、B上記@Aを受けた米長期金利の急上昇、C欧州委員会による経済成長率見通しの下方修正(2019年見通し:結果1.1%、前回1.2%、2020年見通し:結果1.2%、前回1.4%)が重石となると、週末にかけて、約4週間ぶり安値1.1016まで下げ幅を広げました。引けにかけて小反発するも上値は重く、本稿執筆時点(日本時間4時00分現在)では1.1024近辺で推移しております。

来週の見通し(11/11−11/15)

<ドル円相場>
ドル円は週後半にかけて急伸し、約5ヶ月半ぶり高値109.49を記録しました。この間、心理的節目109円丁度や、200日移動平均線109.04、11/5高値109.25、10/30高値109.30、8/1高値109.33を上抜けするなど、テクニカル的に見て「モメンタムの強さ」が強く意識されるチャート形状となりつつあります。109円台で底固めできれば、5/30高値109.94や、心理的節目110円乗せも視野に入るでしょう。

一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@日米金融政策格差(利下げに踏み切ったFOMCと、追加緩和の見送りを決めた日銀)や、Aトランプ米大統領・弾劾リスク、B米経済の先行き不透明感など、ドル安・円高に繋がり易い材料は残っています。また、米中協議を巡っても、これまで二転三転してきた経緯を踏まえると、足元で広がる「米中合意期待→リスク選好ムード」が、一気に「ちゃぶ台返し」となるリスクも警戒されます。事実、トランプ米大統領は週末にかけて、中国商務省による「中国と米国が貿易戦争の過程で発動した追加関税を段階的に廃止することで合意」との発言に対して、「何も決まっていない」と否定的な見解を示しました。

以上の通り、ドル円は、テクニカル的に持ち直しの兆しを見せつつも、ファンダメンタルズ的な弱さが上値を阻む展開が予想されます。来週は11/13の米・10月消費者物価指数や、11/14の米・10月生産者物価指数、11/15の米・10月小売売上高に加えて、パウエルFRB議長議会証言を始め、複数の米当局者講演に注目が集まります。冴えない米国ファンダメンタルズが示されたり、米当局者よりハト派的なコメントが発せられれば、「米長期金利低下→ドル売り」の流れが再燃する恐れもあります。また、米中を巡るヘッドラインにも引き続き注意が必要です。米中合意期待が後退すれば、「リスク回避ムード再燃→株安→円買い」への波及が意識されるからです。米中合意が正式に決定しない限り、心理的節目110円超えは容易では無く、来週はドル円の反落リスクを念頭に置いたトレードが必要となりそうです。(今週の予想レンジ:107.75ー110.25)

<ユーロドル相場>
米長期金利上昇→ドル高の流れが加速する中、ユーロドルは週を通して軟調推移が継続しました。この間、強い買いシグナルを表す三役好転が消失した他、一目均衡表転換線や、ボリンジャーミッドバンド、90日移動平均線、一目均衡表雲上限、一目均衡表基準線も割り込みました。更には、ダブルトップからの下放れも実現するなど(ネックライン1.1073)、テクニカル的にみて、続落リスクを強く意識させるチャート形状となっております。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Bイタリアの財政悪化問題、C英国を巡る先行き不透明感、Dドイツの政局不透明感、EECBによる根強い追加緩和観測など、ユーロ売りに繋がり易い材料は山積みです。

特に来週は上記Aに関して、11/12にドイツ・11月ZEW景況感調査、11/14にドイツ・第3四半期GDP速報が明らかとなりますので、「欧州経済を巡る悲観論再燃→ECBによる追加緩和観測→欧州債利回り低下→ユーロ売り」への波及に注意が必要でしょう。但し、11/14のドイツGDPが前回に続きマイナス成長を記録した場合は、2四半期連続のマイナス成長(=テクニカルリセッション入り)となることから、「ヘッドライン直後はユーロ売り→ドイツの財政出動期待再燃→ユーロ買い戻し」といった「下に往って来い」のシナリオも念頭に置いておく必要性がありそうです。

以上の通り、ユーロドルはテクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「下落リスク」が警戒されます。11/12のドイツ・11月ZEW景況感調査、11/14のドイツ・第3四半期GDP速報、米長期金利の動向を睨みながらも、来週は心理的節目1.1000割れをメインシナリオとして予想いたします。(ユーロドルの予想レンジ:1.0950−1.1150)

米中合意期待でドル円急伸。但しちゃぶ台返しには要警戒

ドル円日足

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