ユーロ週報 ブレグジットの結果次第で大きく振らされる(10月第2週)

いよいよ国民投票から3年3か月を経て、英国のEU離脱という結果を今週見ることになりそうです。

ユーロ週報 ブレグジットの結果次第で大きく振らされる(10月第2週)

ブレグジットの結果次第で大きく振らされる

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、8日NY市場でメルケル首相とジョンソン首相の発言から合意無き離脱の可能性もありそうだとの見方から一時的に下押しする場面も見られましたが、結局は前週からの上昇トレンドの流れの中での調整に留まり、その後は逆にブレグジットの代替案についてEU側が譲歩するとのヘッドラインからユーロ買いの流れに弾みがつきました。週後半は米中通商協議の部分合意思惑がリスクオン材料とされ、ユーロ円での円売りの動きもユーロを下支えしましたが、金曜には英国とEUと双方から離脱協議進展との言及があり、ユーロドルは1.10台半ばへと上伸する動きに繋がりました。

先週の節目となったメルケル首相とジョンソン首相の合意に否定的な発言のあと、英国とEU双方の離脱担当相が協議は進展しているとのポジティブな方向に舵が切られて週末を迎えました。ブレグジットの代替案は、遡ると8月下旬にジョンソン首相が欧州を歴訪し、その中でメルケル首相と会談した際に代替案は可能というメルケル首相の発言から、最後の合意チャンスに向けて動き始めたと考えられます。

英国側はバックストップ条項が削除されれば合意可能という立場に対して、EU側は北アイルランドをアイルランドと同様に扱えるようEUの関税同盟に残すという立場で、そもそもはメイ首相の時にそれでEUと合意していたわけです。しかし、この国境問題がネックとなりメイ首相は辞任、その後ジョンソン首相は強硬離脱をちらつかせながら代替案による合意をEUと交渉してきたこととなります。

8月時点の代替案と現在の代替案には違いがあるのでしょうが、当初はアイルランドを筆頭に欧州の主要国も英国の提案は議論にならないというところから、直筋では協議進展という言葉が示すように代替案での合意ある離脱への流れを今週のEUサミット(欧州理事会)までにまとめようとギリギリの調整が続いているようです。

EUサミットでは各国による全会一致が基本ですが、実際には離脱代替案による離脱協定自体は参加国の55%以上(ただし英国除くので27か国の72%以上の賛成かつ65%以上の人口割合となれば可決可能な特定多数決となるはずなので、今後数日の調整でなんとかなるのではないかという気もします。問題は、その後の英国とEUとの各分野での取り決めとなりますが、これについては全会一致条項となると言われていて、更に時間がかかるでしょう。

いずれにしても、いよいよ国民投票から3年3か月を経て、英国のEU離脱という結果を今週見ることになりそうです。現時点では代替案による合意ある離脱の可能性が7割、結局まとまらず合意無き離脱の可能性が3割というところだと見ています。離脱延期については英国もEUももはや意味が無いと考えている様子ですから、ほぼ無いのではないかと思われます。

そして、合意ある離脱の場合、当面はポンド買い、ユーロ買いになると考えられます。ここに至るまで長期的な売りポジションが積みあがっていますので、ポジション調整による買い戻しも相当量出てきそうです。しかし、現在のグローバルな景気減速の中で米国が対EUの追加関税を発動予定ですし、特に欧州の景気が悪いことを考えると、そのまま上がり続けるという流れは考えにくく、どこかで現実を見て、またいったん材料出尽くしから売りが出てくる流れに戻るのではないかと見ています。止まるまでの値幅として300pips程度ではないかと思います。

いっぽうで、合意無き離脱となる場合ですが、これは素直にポンド急落、ユーロも追随して急落、短期的には底が見えてこない流れになりそうです。最初の一波で200pipsその後も下げて500pipsくらいは動く可能性が高いと思います。

次にテクニカルな観点でチャートを見てみましょう。

ブレグジットの結果次第で大きく振らされる

6月高値からの下降チャンネルを先週後半の上げで抜けてきていることがわかります。このチャートパターンでの強い動きがユーロ買いを強める結果となったと考えることもできそうです。そして、現在は青の太いラインとそれに平行に引いたラインとで構成される緩やかな下降チャンネルへ移行した可能性が強いのですが、同様に10月安値から引いた小さな上昇チャンネル(紫)の中での推移を考えることもできます。

おそらくサポートはこのチャンネルのサポート(紫)、レジスタンスは緩やかな下降チャンネルのレジスタンス(青)に挟まれた狭いレンジの中で1.10台前半をもみあいの中心としながら、結果次第で上述した300〜500pips程度の振れが見られるのではないかと見ています。あえてレンジは書きませんが、上下ともそれなりに動く可能性があるでしょう。

今週のコラム

今週もユーロ円の日足チャートを見ます。

ブレグジットの結果次第で大きく振らされる 2枚目の画像

先週示した7月高値と9月高値を結んだレジスタンス(ピンクの太線)を抜けてきたことでユーロ円はこれまでの下げの動きから上昇へと転じる可能性が出てきているのですが、よく見ると8月上旬以降の高値圏をネックライン(青)と考えると変形ダブルボトムのような反転パターンを形成中に見ることができます。

その場合、120円の大台にしっかりと乗せてくると一段高、抜けられないとレジスタンスライン(ピンク)が位置する118円台半ばまで下押しする可能性があります。ただ、ユーロ円も今週はユーロの動向次第ですから、あくまでにブレグジットの結果がわかる前に動きが出た場合にのみ有効な見方という押さえでいてください。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

10月14日(月)
**:** 東京、NY市場休場
16:15 デギンドスECB副総裁講演、スペイン中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏8月鉱工業生産

10月15日(火)
15:45 フランス9月CPI
17:30 英中銀総裁講演
17:30 英国9月失業率
18:00 ドイツ10月ZEW景況感指数
18:00 ユーロ圏10月ZEW景況感指数
**:** IMF世界経済見通し公表

10月16日(水)
17:30 英国9月CPI、PPI
18:00 ユーロ圏8月貿易収支
18:00 ユーロ圏9月CPI
21:30 オランダ中銀総裁講演
22:00 英中銀総裁討論会参加
24:00 レーンECB専務理事講演
26:00 ドイツ連銀総裁講演
27:00 ベージュブック

10月17日(木)
06:00 フランス中銀総裁講演
07:00 英中銀総裁討論会参加
17:30 英国9月小売売上高
18:00 ユーロ圏8月建設支出
26:30 フランス中銀総裁講演
27:00 イタリア中銀総裁講演
29:30 オランダ中銀総裁講演
**:** EUサミット(〜18日)

10月18日(金)
06:00 スペイン中銀総裁講演
**:** 米国対EU追加関税発動予定

19日(土)
 **:** 英国EU離脱合意期限

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

10月7日(月)
ユーロドルは、東京市場では売りが先行後、海外市場に移ってからは買い戻され、と方向感がはっきりしない展開が続きました。その後、ドル円とともにユーロ円の買いが目立ち、その動きがユーロドルに波及、一時1.1001レベルの高値をつけました。しかし、1.10の大台超えには売りオーダーも多く、NY市場ではドル買いの動きに引っ張られユーロは週末終値を若干下回る水準へ押して引けました。

10月8日(火)
ユーロドルは、東京市場から欧州市場前場までは底堅い展開が続きました。欧州市場に入りブレグジットの英国代替案による合意は困難とメルケル首相が言及、ジョンソン首相も合意は本質的に不可能と述べたことからポンド売りが広がりましたが、ユーロポンドでのポンド売りも出たことからユーロは下げずにNY市場入りとなりました。その後はドル円とともに下げていたユーロ円に引っ張られユーロドルでも売りが強まり、NY市場後場には1.0941レベルまで下押し後にやや戻して引けました。

10月9日(水)
ユーロドルは、欧州市場までは前日の下げに対する調整からやや買いが出ている程度でしたが、欧州市場に入りユーロ円が底堅い動きとなっていたところに、ブレグジット代替案でEU側が譲歩とのヘッドラインを受け、ユーロドルは1.0991レベルの高値をつけました。しかし、1.10の大台はこれまで同様に上値が重くNY市場では徐々に水準を下げる展開のまま引けました。

10月10日(木)
ユーロドルは、東京市場では動意薄の状態が続きましたが、欧州市場序盤にこれまで抜けられなかった1.10の大台をしっかりと上抜けたことで、ストップオーダーも巻き込みながらユーロ買いが強まる流れとなりました。欧州市場の昼頃には1.1034レベルの高値をつけましたが、NY市場では米中通商協議進展思惑によるドル買いの動きから反落、1.10の大台近辺での引けとなりました。

10月11日(金)
ユーロドルは、英国とEU双方の離脱担当相から協議進展と合意ある離脱に近づいたという思惑がポンド高となり、ユーロもポンドに引っ張られてユーロ買いの動きとなりました。17・18日のEUサミットでの決定を待つこととなりますが、これまでの流れから英国代替案に寄せる形で合意最終日19日までに形が整うという思惑が強まりユーロ高となりました。不透明な部分は残るもののユーロドルはNY市場で1.1063レベルへと週間高値を更新し、NY市場ではドル高の動きに沿って下押ししての週末クローズとなりました。

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