ドル円調整でやや押す動き。ブレグジット結果には注意(週報10月第2週)

先週のドル円は、通商協議思惑で押しを挟みながらも安値を切り上げる展開が続き、月曜安値の金曜高値と一週間の間に約2円も円安に動くこととなりました。

ドル円調整でやや押す動き。ブレグジット結果には注意(週報10月第2週)

調整でやや押す動き。ブレグジット結果には注意

今週の週間見通し

先週のドル円は、通商協議思惑で押しを挟みながらも安値を切り上げる展開が続き、月曜安値の金曜高値と一週間の間に約2円も円安に動くこととなりました。終章は米中通商協議に対して中国が協議範囲を狭める提案をしたことで、先週までトランプ大統領が部分合意はしないという強気な発言をしていたため、また協議決裂かと思わせましたが、次官級から閣僚級へと協議が進む中で、米国側が部分合意する方向へと方針を転換しました。

木曜も東京前場では閣僚級でまとまらない懸念があったのですが、その後部分合意を好材料とする流れに転じたことは、明らかに米国側が落としどころを探し、目先の合意という形式にこだわった様子が伺われます。日米交渉でも協議範囲を狭めたことで早期合意での決着となり、米国民向けには大成功だというパフォーマンスを見せましたのが、今回の米中協議も同様のものとなりました。

トランプ大統領にとっては、弾劾調査をはじめ今年に入ってからは目立った実績が出せない中で、来年2月には本格的に大統領選の活動が始まりますので、1月までに対日、対中、対欧と3地域との貿易摩擦問題で成果を出せたという格好を整えたいと考えることができます。

今回の米中協議における部分合意の内容は、中国による米国農産物の購入拡大、知的財産権保護の強化、通貨政策(人民元安)の透明性確保、という程度に過ぎません。米国と異なり中国側は合意という言葉を使っていないことからも、かなり狭い範囲での部分合意に過ぎません。これに対し、米国は15日に予定されていた報復関税発動中止となりましたが、年末商戦に向け消費者への影響が大きい関税上げを回避したいという思惑は米国の方が強かったように思えます。また通貨政策については10月の米国財務省の報告書で中国を為替操作国から解除を検討する方向のようです。

特に関税上げを回避したかったのは年末商戦に影響を与えるここからの2か月に限られたことからも明確です。これまでの対中関税はそのまま残り、第3段までの2500億ドル部分に25%、第4弾の一部(スマホ、PC等を除く)となる1100億ドルに15%、これはこのままです。そして、12月に予定されている第4弾の残り1600億ドルに対する15%は検討対象のままです。今後の構造問題等に関する協議内容次第では発動の可能性が無いとは言えません。

ファーウェイの禁輸措置も検討と、米国側は報復関税を発動しなかったに過ぎませんので、これまでの関税の影響がグローバルな景気減速を招き、それが米国でも緩和政策に転換する直接的なきっかけであったことを考えると、今後も米国の経済指標はミックスあるいは冴えず、10月末のFOMCでは追加利下げ、と結局のところ金融市場に与える影響には好転は見られないと考える方が妥当です。

であるとするならば、為替相場においても先週の106円台後半から108円台後半へのドル上昇は実際には今後の結果が伴わないことに対する期待だけでリスクオンに動いたとしか思えないという結果です。引き続き、今回残した部分の協議進展と、現在進行形の制裁関税の変化について見極めていく必要があると言えるでしょう。

今週は連日のように経済指標や要人発言が続きますが、最も大きな材料はEUサミット(=欧州理事会、17・18日)においてブレグジットが最終的に合意に至るのかどうかの一点と言ってよいでしょう。このテーマついてはユーロの週報をご覧ください。

テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

金曜NY市場で108.62レベルの高値をつけたことで9月高値をわずかに上回ることとなりましたが、引けにかけて下げたことから上ヒゲで抜けたに過ぎず、明確に抜けたとは言えない状況です。また8月1日に7月高値を上ヒゲで上抜けた後に大きく下げた動きを見てきましたので、108円台後半は積極的に買う水準ではなく、短期的には先週金曜に高値を付けた流れとなった可能性も考えなくてはならないでしょう。

個人的には材料的にリスクオンに動く材料とは思えず、またいったんは米中協議に対するリスクオンは材料出尽くしで、次のテーマへと移る段階に来ていることから、ブレグジットの結果次第の面ではあるものの、今週高値追いする動きが出ても後から考えると108円台後半は売りだったということになるのではないかと考えています。

先週は約2円のドル高の動きを見せましたので、今週はその上げに対する調整から10月安値106.49と先週高値108.62の半値押しとなる107.56(青のターゲット)水準への押しが入る可能性を考えたいところです。今週は先週の調整をメインシナリオに107.60レベルをサポートに108.60レベルをレジスタンスとする流れを見ておきますが。ブレグジットの結果が分かった段階で一時的に振れるリスクは考えてください。

調整でやや押す動き。ブレグジット結果には注意

ドル円日足

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

10月14日(月)
**:** 東京、NY市場休場
**:** 中国9月貿易収支
16:00 トルコ8月鉱工業生産
16:15 デギンドスECB副総裁講演、スペイン中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏8月鉱工業生産
**:** APEC財務相会合(〜15日)

10月15日(火)
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
10:30 中国9月CPI、PPI
**:** 黒田日銀総裁挨拶
15:45 フランス9月CPI
16:00 トルコ7月失業率
17:25 セントルイス連銀総裁講演
17:30 英中銀総裁講演
17:30 英国9月失業率
18:00 ドイツ10月ZEW景況感指数
18:00 ユーロ圏10月ZEW景況感指数
21:30 米国10月NY連銀製造業景況指数
22:00 (アトランタ連銀総裁講演)
25:45 カンザスシティ連銀総裁講演
28:30 (サンフランシスコ連銀総裁講演)
**:** IMF世界経済見通し公表

10月16日(水)
06:45 NZ7〜9月期CPI
17:30 英国9月CPI、PPI
18:00 ユーロ圏8月貿易収支
18:00 ユーロ圏9月CPI
20:00 南ア8月小売売上高
21:30 米国9月小売売上高
21:30 オランダ中銀総裁講演
22:00 英中銀総裁討論会参加
23:00 米国10月NAHB住宅市場指数
23:00 米国8月企業在庫
23:45 シカゴ連銀総裁講演
24:00 レーンRCB専務理事講演
26:00 ドイツ連銀総裁講演
27:00 ベージュブック

10月17日(木)
06:00 フランス中銀総裁講演
07:00 英中銀総裁討論会参加
09:30 豪州9月雇用統計
17:30 英国9月小売売上高
18:00 ユーロ圏8月建設支出
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国9月住宅着工・許可件数
21:30 米国10月フィラデルフィア連銀製造業系供養指数
22:15 米国9月鉱工業生産、設備稼働率
24:00 週間原油在庫統計
26:30 フランス中銀総裁講演
27:00 イタリア中銀総裁講演
29:20 NY連銀総裁講演
29:30 オランダ中銀総裁講演
**:** EUサミット(〜18日)

10月18日(金)
06:00 スペイン中銀総裁講演
08:30 本邦9月CPI
11:00 中国7〜9月期GDP
11:00 中国9月鉱工業生産、小売売上高
23:00 米国9月景気先行指数
23:05 カンザスシティ連銀総裁講演
**:** 米国対EU追加関税発動

19日(土)
 **:** 英国EU離脱合意期限

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

10月7日(月)
 週明けのドル円は週を通して行われる米中通商協議において中国が協議範囲を狭めるとの報道からギャップダウンしてリスクオフのスタートを切りました。しかし、いつもと同じことが繰り返されギャップを埋めるとじりじりと水準を切り上げる流れ。NY市場に入ると中国の部分合意提示が好材料とされる動きへと転じ、株価とともにドル円は上昇、一時107.46レベルをつけたものの引けにかけては、米中間で具体的には何も決まっていないこともあり、やや押しが入っての引けとなりました。

10月8日(火)
 東京市場のドル円は底堅かったもののほとんど動意の無いままに欧州市場入りとなりました。欧州市場ではブレグジットに向け英国の代替案による合意が困難なことにメルケル首相が言及、ジョンソン首相も合意は本質的に不可能と述べたことからポンド売りだけでなく、リスクオフの円買いとなりました。さらに次官級米中通商協議が難航している様子が伝わり、場合によっては週後半の閣僚級を待たずに中国代表団が早期に帰国する可能性も取り沙汰され一時106.80レベルの安値をつけました。NY市場ではユーロ売りの動きからドル円でもドル買い戻しとなりましたが、戻しは限定的で引けにかけては107円近辺に押して引けました。

10月9日(水)
 ドル円は終日底堅い展開が続きました。基本的には米中通商協議に対する期待思惑があること、日経平均株価が堅調で海外市場でも先物で買いが目立っていたことからリスクオンの動きとなりました。NY市場では週間高値を更新したこともあってストップオーダーに仕掛け買いも加わり、一時107.63レベルをつけた後に引けにかけてはやや押してのクローズとなりました。

10月10日(木)
 ドル円は早朝市場で米中通商協議の雲行きが怪しくなったことを嫌気しリスクオフの売りが先行しましたが、早朝リスクオフの下げはカウンターで買い戻しが入り高値を取りに行くというこれまでのパターンが繰り返されました。最初のきっっかけは東京前場に出たファーウェイ禁輸の一部解除、ここから閣僚級協議への期待が復活しました。NY市場までは前日終値近辺でのもみあいと様子見が続いていましたが、トランプ大統領が中国副首相と11日にホワイトハウスで会う、協議がうまく進んでいると発言したことでドル円は一時108円台乗せを示現後に若干押して引けました。

10月11日(金)
 ドル円は東京市場では3連休を前にまったくの動意薄、米中通商協議閣僚級の合意期待はあるものの結果を待ちたいという流れでした。欧州市場に入り19日に合意期限を迎えるブレグジットの協議で英国とEU双方の離脱担当相から協議進展という話が聞かれたことでユーロが対ドル対円で上昇し、ドル円は円安方向に動意づきました。NY市場では昼頃に通商協議が終了、部分合意という話が聞こえ一時108.63レベルの高値をつけました。しかし、残された問題も多いことから引けにかけてはやや押しての引けとなりました。

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