来週の為替相場見通し 『米中リスク後退でドル円上昇。来週は英国情勢が焦点』(10/12朝)

来週は、10/16の米・9月小売売上高や、10/17のベージュブック、10/15−18にかけて複数発表される米当局者講演を睨みながらの神経質な展開が見込まれます。

来週の為替相場見通し 『米中リスク後退でドル円上昇。来週は英国情勢が焦点』(10/12朝)

米中リスク後退でドル円上昇。来週は英国情勢が焦点

今週のレビュー(10/7−10/11)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、@トランプ米政権が「中国の監視カメラ製造最大手ハイクビジョンなど計28企業・政府機関について禁輸措置の対象とする」「中国への資本フローの制限を検討している」と報じたことや、A中国外務省がこれらに対し、報復措置の可能性をにじませたこと等が重石となり、週前半は、106円台後半での上値の重い展開が継続しました。

しかし、BパウエルFRB議長がバランスシート拡大再開を表明すると(※短期国債を月600億ドルのペースで購入し、2020年4ー6月期まで継続予定)、C「中国は米国との部分的な合意にオープン」「米国がファーウェイへの一部製品の供給を許可」「トランプ米大統領は中国の劉鶴副首相と11日に会談」「中国政府が米国産大豆と豚肉の輸入を急拡大」など立て続けに米中対立緩和を意識させるヘッドラインが報じられたことも重なり、週央以降は、「リスク警戒ムード後退→株高→リスク選好の円売り」の流れが強まりました。

週末にかけては、「米国と中国は部分合意に至る見通し」との報道を背景に上値を伸ばし、8/1以来、約2ヶ月半ぶり高値108.61まで急伸しました。もっとも、急激に上げ過ぎた反動から戻り売りが強まると、引けにかけて伸び悩む展開に、結局108.40前後まで押し戻されての越週となっております。

尚、今週は、米・9月生産者物価指数(結果1.4%、予想1.8%)、米・9月消費者物価指数(結果0.0%、予想0.1%)、同コア指数(結果0.1%、予想0.2%)など米インフレ指標が軒並み市場予想を下回る結果となりましたが、市場の反応は限定的なものに留まりました。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0975で寄り付いた後、@ドイツ・8月製造業受注(結果▲0.6%、予想▲0.3%)の冴えない結果や、Aドイツ政府高官による「景気刺激策の必要性はない(=財政出動期待の後退)」との発言が重石となり、翌10/8に、週間安値となる1.0941まで下落しました。しかし、一目均衡表転換線に続落を阻まれると、B英ポンドの急伸に連れ高となったことや、CECB議事要旨にて「債券買い入れを巡る当局者間の意見の対立」が明らかとなったこと(追加緩和期待の後退→欧州債利回り上昇→ユーロ買い)などが支援材料となり、週末にかけては、約3週間ぶり高値となる1.1063まで上昇しました。もっとも、1.1067近辺に控える分厚い雲をバックに戻り売りが強まると、引けにかけて反落。結局、1.1030台まで押し戻されての越週となっております。

来週の見通し(10/14−10/18)

<ドル円相場>
ドル円は、10/3安値106.48をボトムに底打ちすると、10/4安値106.58→10/7安値106.69→10/8安値106.82→10/9安値106.93→10/10安値107.17→10/11安値107.85と、週を通して下値を切り上げる力強い動きとなりました。この間、一目均衡表基準線や、一目均衡表雲上限、90日移動平均線、一目均衡表転換線、ボリンジャーミッドバンド、前回FOMC直後に記録した直近高値108.48を軒並み突破するなど、テクニカル的みて、「地合いの強さ」が意識されるチャート形状となりつつあります。

もっとも、ファンダメンタルズ的に見ると、@トランプ米大統領を巡る弾劾機運の高まりや、A欧米を始めとした世界経済の減速懸念、B米中を巡る不確実性の継続(部分合意に留まったことで本質的な解決は先送り)、C中東及び朝鮮半島を巡る地政学的リスク、D英国の合意なき離脱リスク、E香港情勢の緊迫化、F日米金融政策格差(追加利下げが織り込まれる米国と、副作用を警戒して追加緩和に二の足を踏んでいる日銀との金融政策の方向性の違い)など、ドル売り・円買いに繋がり易い材料が引き続き多く残っています。

来週は、10/16の米・9月小売売上高や、10/17のベージュブック、10/15−18にかけて複数発表される米当局者講演を睨みながらの神経質な展開が見込まれます。米小売売上高が冴えない結果となったり、米当局者よりハト派的な発言が見られれば、今月末のFOMCでの追加利下げを織り込む形で、米長期金利低下→ドル売りの流れが強まると考えられます。また、英国のEU離脱を巡っては、10/17−10/18にEU首脳会議、翌10/19に英国によるEU離脱申請期限を控えています。米中通商協議の山を乗り切ったことで足元やや楽観的なムードが広がっていますが、まだまだ油断は禁物です。米中を巡る続報がネガティブなものとなったり、英国発でリスク警戒に繋がる材料が出てくれば、今週の反動も相まって、ドル買い・円売りの巻き戻しが生じる恐れもあるからです。当方では、ファンダメンタルズ的な不確実性に鑑み、来週はドル円相場の反落(今週の急騰劇の反動)をメインシナリオとして予想いたします。(ドル円の予想レンジ:106.50ー109.50)

<ユーロドル相場>
ユーロドルは、10/1に記録した約2年5ヶ月ぶり安値1.0879をボトムに切り返すと、週後半にかけて1.1034まで急伸しました。この間、ボリンジャーミッドバンドや、一目均衡表基準線、これまでサポートとして機能してきた6/25高値と8/6高値を結んだ中期レジスタンスラインを突破するなど、テクニカル的に見て「下値の堅さ」が意識されるチャート形状となりつつあります。但し、9/13高値1.1111を突破しない限り、上昇トレンドに転じたとは言い難く(ダウ理論)、足元の反発はあくまで下落トレンド下における「一時的な戻し」と整理できます。

ファンダメンタルズ的には、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや(=米政権は10/18に欧州連合に対して75億ドルの関税を発動予定)、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感、Bイタリアの財政悪化問題(=EU各国は10/15までに欧州委員会へ2020年度予算案を提出しなければならず、イタリアの財政悪化懸念が再浮上する恐れあり)、Cトルコを巡る地政学的リスク(=シリア情勢の悪化)、D英国の合意なき離脱リスク(= 10/17−18にかけてEU首脳会議が開催、10/19はEU離脱申請期限)など、不安材料は山積みです。


以上の通り、ユーロドルはテクニカル的にやや持ち直しの兆しが見られるものの、ファンダメンタルズ的な弱さが続伸を阻むと考えられます。来週は10/14のデンギンドスECB副総裁をはじめECB当局者講演が複数予定されている他、10/15には、ドイツ・10月ZEW景況感調査が発表されます。また、10/18には米国による関税発動がなされる他、10/17−10/18には注目のEU首脳会議、翌10/19は英国によるEU離脱申請期限が予定されています。今週は米中協議に注目が集まる中、ユーロドルは蚊帳の外となりましたが、来週はユーロドルや英ポンドなど欧州通貨が主役の週となります。英国情勢を睨みながらも、ユーロ安・ドル高基調の継続をメインシナリオとして予想いたします。(ユーロドルの予想レンジ:1.0850−1.1150)

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ドル円日足

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