ドル円見通し リスクオン全開で108円に到達、米中協議結果みるまでは揺れ返し注意(10/11)

トランプ大統領が劉副首相と11日に会談するとツイートしたことから楽観が広がって、ドル円は10日午前高値を超えて11日未明には108.01円を付けるところまで続伸した。

ドル円見通し リスクオン全開で108円に到達、米中協議結果みるまでは揺れ返し注意(10/11)

【概況】

10月10日早朝、「米国と中国は次官級の貿易協議で進展がなく、中国代表団は11日ではなく10日に米国を離れる計画だ」と香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが報道した。これをきっかけにドル円は10日未明高値107.62円から急落して107.03円を付けたが、107円割れを回避、その後はやや過剰反応だったとして揺れ返しの上昇となり、米中協議進展への期待報道もあって10時台には107.76円を付けて10日未明高値を超えた。香港紙の報道からダウ先物が急落して、ドル円も同調したのだが、ダウ先物が反騰に転じたことで株式市場が落ち着き、上海総合株価指数は前日比0.78%高と上昇、ドル円も107円台中盤でしっかりした。

その後はきっかけ待ちとなっていたが、21時半の米消費者物価指数の伸びが予想よりもやや悪かったものの積極的なドル売りへの動きが見られなかったことでドル高円安を試す流れとなり、中国の劉副首相が「中国は米国との通商協議で双方が重要と見なす問題で合意を目指す意向を持っている」と述べ、トランプ大統領が劉副首相と11日に会談するとツイートしたことから楽観が広がって株高・長期債利回り上昇となり、ドル円は10日午前高値を超えて11日未明には108.01円を付けるところまで続伸した。

【米中協議進展期待、ブレクジットへの楽観】

米ニューヨーク・タイムズは、トランプ米政権が中国の通信機器大手ファーウェイに対し、機密性の低い製品を供給することを一部の米企業に認めるライセンスを近く発行すると報じた。
米中協議については10月7日と8日の次官級協議では中国が国家による補助金政策や技術移転を議論のテーマとすることを拒否したと報じられたが、一方では米国が10月15日と12月15日に計画している対中制裁関税拡大を見送るなら米国産大豆の大量購入に応じる意向を示しているとも報じられている。
トランプ米大統領は10日のツイッターで中国の劉鶴副首相と11日にホワイトハウスで会談すると述べたが、これも合意形成への期待感を拡大させたため、NYダウは前日比150.67ドル高と上昇、米10年債利回りは同0.06%上昇の1.67%となり、ドル円の上昇を助長した。

ブレクジット問題でも楽観が広がりポンドが急伸した。英国のジョンソン首相とアイルランドのバラッカー首相が10日の首脳会談で、EU離脱への合意に向けた道筋が見いだせるとの見解で一致したと報じられた。これを受けてドイツ、フランス等の欧州主要国の10年債利回りが大幅上昇し、株高とともに英ポンドが急伸、ユーロも一段高となった。ドルストレートではドル安だが、クロス円では円安となり、ドル円においては株高によるリスクオン心理も加勢して円安感が勝りドル高円安となった。

米中協議についてはトランプ大統領と劉副首相の会談結果を見なければまだ油断できないと思う。中国側は部分的な合意でも協議進展を得たい姿勢と思われるが、全面的な譲歩を迫ってきたトランプ大統領が受け入れるかどうか。中国は香港問題、米国は大統領弾劾問題も抱えているので双方が成果を強調するために妥協する可能性もあるだろうが、米国にとっての対中強硬姿勢は両国の覇権争いという位置づけのため安易な妥協は取られてこなかった。また中国側も交渉継続を引き延ばしつつ大きな妥協をしてこなかった。
今回の協議で年内ないしは年明けまでに米中首脳会談が実現して合意形成に至る道筋が示されれば市場は大きな楽観に支配され、株高とともにドル円も大上昇する可能性はあるだろう。しかし、米中問題もブレクジット問題も楽観と悲観が交互に繰り返されてきた難題であり、昨日の楽観が一挙に悲観一色へ変わる可能性もあるので、10月3日深夜からの強気基調の梯子が外されてもよいようにリスク管理をしっかりしておくところと思う。逆にリスクオン全開ならその流れに乗ってゆく積極性も必要かもしれない。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月3日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りとしてきたが、8日夜に106.80円まで急落してからの反騰により、8日未明高値を直近のサイクルトップ、8日夜安値を同サイクルボトムとした強気サイクル入りとして11日未明から15日未明にかけての間への上昇を想定した。10日朝に急落したが、10日朝時点では8日夜安値を割り込まないうちは107.30円超えから上昇再開とみて10日未明高値試しとし、高値更新なら11日未明から15日未明にかけての間への上昇継続とした。
11日未明へ一段高し、その後も高値圏を維持しているのでまだ上昇余地ありとするが、107.50円割れからは弱気サイクル入りと仮定して11日夜から15日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、9日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも突破したが、10日午前の急落場面も両スパンそろっての好転を維持した。遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、新たな高値更新へ進めないと11日深夜にかけて遅行スパンが悪化してくるため、その際は下落再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数では10日未明高値から11日未明への高値更新に対して指数のピークがほぼ横ばいのため弱気逆行型を形成しつつある。50ポイント台を維持するうちは上昇余地ありとするが、50ポイント割れからは下げ再開を疑い30ポイント前後への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.70円、次いで107.50円を下値支持線、11日未明高値108.01円を上値抵抗線とみる。
(2)107.70円以上での推移中は上昇余地ありとし、11日未明高値超えからは10月1日高値108.46円試しを想定する。107.35円以上は反落注意とするが、米中問題等での強気材料から急伸する場合は109円に迫る可能性ありとみる。また107.70円以上での推移なら週明けも高値を試しやすいとみる。
(3)107.70円割れを弱気転換注意とし、107.50円割れからは弱気サイクル入りと仮定してまず10月10日午前安値107.03円試しとし、底割れからは10月3日深夜安値106.50円試しへ下値目途を引き下げる。米中問題等で悲観が広がっての下落なら週明けも安値試しを続けて106円前後試しへ向かうとみる。

【当面の主な予定】

10/11(金)
米中閣僚級貿易協議[最終日、ワシントン]
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、Q&A参加
21:30 (米) 9月 輸入物価指数 前月比 (8月 -0.5%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 9月 輸出物価指数 前月比 (8月 -0.6%、予想 0.1%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (9月 93.2、予想 92.0)
26:15 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
28:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演

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