ドル円見通し 10月3日深夜安値からのリバウンド途絶える、米中問題再び暗雲(10/9)

10月3日安値を割り込む一段安へ向かいかねない雲行きとなりつつある印象だ。

ドル円見通し 10月3日深夜安値からのリバウンド途絶える、米中問題再び暗雲(10/9)

【概況】

米経済指標が相次いで予想外の悪さを示したことから10月1日高値108.46円から急落に転じて10月3日深夜には106.50円の安値を付けた。9月19日高値108.47円をわずかに超えられずに失速して、両高値の谷間にある9月25日安値106.94円を割り込んだことで8月26日からの上昇がダブルトップ形成で一巡となり下落期に入った印象が強まっていた。
しかし、10月4日の米雇用統計で9月の失業率が49年ぶりの低水準となる3.5%へ低下するサプライスもあって107.12円まで戻し、その後に107円を再び割り込んだものの7日夜には米中協議進展期待を持たせるトランプ発言等に後押しされて上昇、8日未明に107.46円まで戻した。

10月1日から3日への下落幅に対する半値戻しが107.48円だったが、8日未明も午後もわずかに届かず上値の重さが出始めていたが、米中協議進展期待に水を差す米国の対中企業への制裁拡大と中国側の批判、英国のブレクジット問題も暗礁に乗り上げる懸念が強まったこと等から欧州株が全面安となり、ダウ先物も失速したことで市場全般のリスク回避感が強まり、ドル円は夕刻から急落に転じた。
8日夜には106.80円の安値を付けたが3日深夜安値割れには至らず、107円割れに対する突っ込み警戒感から9日未明には107.29円までいったん戻したが、9日朝には再び107円を割り込んでいる。10月3日深夜安値からの戻りが続かずに失速したため、10月3日安値を割り込む一段安へ向かいかねない雲行きとなりつつある印象だ。

【米中通商協議、閣僚級協議前の駆け引き的な強硬姿勢?】

米商務省は10月7日、中国によるイスラム教少数民族ウイグル族に対する弾圧の制裁として、監視カメラ大手のハイクビジョンや新疆ウイグル自治区当局など28団体・企業への米国製品輸出を原則禁止すると発表した。制裁対象にはウイグル自治区政府の公安当局等の19機関、ハイクビジョンやダーファ・テクノロジーなど8企業が含まれる。これらは9日付で米国の安全保障上のブラックリストに加えられる。米国の動きに対して中国外務省は「米国は誤った方法を正して中国の問題への介入をやめるべき」「中国は主権を守るため引き続き断固とした措置をとる」と批判した。

また中国による米ブラックリストへの報復に「注目を」と述べ、報復措置をにおわせた。10月10日から11日まで米中閣僚級協議が予定されており、すでに事務方による事前協議が始まっているが、その最中の追加制裁であり、米中閣僚級協議が暗礁に乗り上げる可能性が出てきた。
8月1日から8月26日への円高ドル安、その後の反騰、9月25日から10月1日へのリバウンド等は米中動向での悲観と楽観を反映したもので、いずれの起点も米中関連報道やトランプ大統領発言がきっかけだった。8日の日中はさほど大きな反応ではなかったが、ブレクジット問題等も絡んでリスク回避感を相乗的に強めるものとなった。

8日夕刻からのドル安円高では欧州株安も影響した。メルケル独首相がジョンソン英首相との電話会談で北アイルランド国境問題等により「離脱合意の可能性は極めて低い」と述べたと報じられたことでリスク回避感が強まった。為替市場ではポンド安が進行、円が買われ、NYダウも米中問題も含めて悲観売りとなり313.98ドル安と下落、株安円高感が強まった。
ドイツが英国の離脱案を事実上拒否したことで、10月末の離脱期限前合意は不可能となる可能性が高まった。またそれによる英国の政治混乱、欧州企業心理の悪化、金融市場全般でのリスク回避感の拡大が懸念される。

米商務省の発表した9月の生産者物価指数は全体の前年同月比が1.4%にとどまり市場予想及び8月の1.8%を下回った。コア指数の前年同月比も2.0%にとどまり市場予想及び8月の2.3%を下回った。前月比は全体もコア指数もマイナス0.3%となった。
発表当初の市場反応は鈍かったが、先週のISMの景況感悪化、雇用統計における平均時給の伸び鈍化等に続いて生産者物価の伸びが鈍化したことは、米連銀への追加利下げ圧力を高めるものとしてドル円にとっては円高要因と思われる。

米連銀のパウエル議長は8日のコロラド州の講演で、短期金利市場の安定を図るために保有資産を増やす方針を近く発表すると述べた。また持続成長を支えるために適切に行動すると従来の姿勢を改めて述べ、追加利下げに含みを残した。利下げの是非については「政策会合毎に行う」と語っている。
シカゴ連銀行のエバンズ総裁(FOMC投票権あり)も8日の講演で「追加利下げの是非に関する議論にはオープンだ」「追加利下げはよりインフレ圧力を高めることにつながり、景気悪化リスクに対する保険になるだろう」と述べた。利下げが不可欠かについては「分からない」とも述べているが、基本的には追加利下げの可能性ありという姿勢と思われる。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

ドル円60分足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月3日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りし、10月1日夕高値を基準として今回の高値形成期を4日夕から8日夕にかけての間と想定した。8日朝時点では既にサイクルトップを付けての下落再開注意期にあるとし、107円割れからは新たな弱気サイクル入りの可能性が高まるとした。

8日夜に106.80円まで急落し、いったん戻したものの再び107円を割り込んでいるので8日未明高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとみる。ボトム形成期は8日深夜から10日深夜にかけての間と想定されるので、早ければ8日夜安値でボトムを付けた可能性もあるが、8日夜安値割れからは3日深夜安値も割り込んでの一段安へ進みやすくなると警戒する。上昇再開には9日未明高値107.29円超えが必要と思われる。8日未明高値超えからは新たな強気サイクル入りとして11日未明から15日未明にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では、9日早朝への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落したので、遅行スパン悪化中は安値試し優先とするが、両スパンそろって好転するところからは上昇再開とみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8日未明と8日午後の高値がほぼフラットだったのに対して指数のピークが切り下がる小規模な弱気逆行が見られるので、60ポイント超えへ戻せないうちは一段安警戒として20ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、10月8日夜安値106.80円を下値支持線、9日未明高値107.29円を上値抵抗線とみる。
(2)107.29円を超えないうちは106.80円割れから3日深夜安値106.50円試しとする。106.50円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、106.50円割れから続落の場合は106円試し、さらに105円台後半まで下値目途が切り下がる可能性もあると注意する。107円以下での推移が続く場合は10日の日中も安値を試しやすいとみる。
(3)107.29円超えからは強気サイクル入りの可能性ありとして8日未明高値107.46円試しとする。高値更新に至らないうちはその後の107円割れから下げ再開となる可能性ありだが、107.46円超えからは強気サイクル入りとして108円を目指す上昇を想定する。また107.46円を超えた後も107.25円以上での推移なら10日の日中も高値を試しやすいとみる。

【当面の主な予定】

10/9(水)
23:00 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 0.2%、予想 0.4%)
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
23:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、金融政策再点検のためのイベント
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨

10/10(木)
米中閣僚級貿易協議[11日まで、ワシントン]
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前月比 (8月 -0.3%、予想 0.0%)
08:50 (日) 9月 国内企業物価指数 前年同月比 (8月 -0.9%、予想 -1.1%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前月比 (7月 -6.6%、予想 0.0%)
08:50 (日) 8月 機械受注 前年同月比 (7月 0.3%、予想 -8.4%)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 214億ユーロ、予想 186億ユーロ)
15:00 (独) 8月 経常収支 (7月 221億ユーロ、予想 179億ユーロ)

17:30 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 0.3%、予想 0.0%)
17:30 (英) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 0.1%、予想 0.0%)
17:30 (英) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 -0.9%、予想 -0.8%)
17:30 (英) 8月 製造業生産 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
17:30 (英) 8月 貿易収支・物品 (7月 -91.44億ポンド、予想 -100億ポンド)
17:30 (英) 8月 貿易収支・全体 (7月 -2.19億ポンド、予想 -10.50億ポンド)

20:30 (欧) 欧州中銀(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前月比 (8月 0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 9月 消費者物価指数 前年同月比 (8月 1.7%、予想 1.8%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 9月 消費者物価コア指数 前年同月比 (8月 2.4%、予想 2.4%)
21:30 (米) 前週分 新規失業保険申請件数 (前週 21.9万件、予想 21.8万件)
21:30 (米) 前週分 失業保険継続受給者数 (前週 165.1万人、予想 165.1万人)
25:15 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、対話集会参加

10/11(金)
米中閣僚級貿易協議[最終日、ワシントン]
06:30 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
07:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
08:50 (日) 9月 マネーストックM2 前年同月比 (8月 2.4%、予想 2.4%)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (独) 9月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)

21:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、Q&A参加
21:30 (米) 9月 輸入物価指数 前月比 (8月 -0.5%、予想 -0.1%)
21:30 (米) 9月 輸出物価指数 前月比 (8月 -0.6%、予想 0.1%)
23:00 (米) 10月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (9月 93.2、予想 92.0)
26:15 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
28:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演


オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る