来週の為替相場見通し 『楽観ムードから悲観ムードへ。市場の関心は米中問題へ回帰』(9/21朝)

ドル円はテクニカル的にみて、下落リスクが高まりつつあると判断できるでしょう。

来週の為替相場見通し 『楽観ムードから悲観ムードへ。市場の関心は米中問題へ回帰』(9/21朝)

楽観ムードから悲観ムードへ。市場の関心は米中問題へ回帰

今週のレビュー(9/16−9/20)

<ドル円相場>
今週のドル円(USDJPY)相場は、サウジアラビア東部の国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が攻撃されたことに端を発した地政学的リスクの高まりを背景に、窓を空けて寄り付くと(13日の終値108.08、16日の始値107.75)、早々に週間安値107.48まで下落しました。しかし、一目均衡表雲上限をサポートに持ち直すと、その後は、米FOMC(連邦公開市場委員会)を前に108円台での方向感に欠ける値動きが継続しました。

注目されたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、予想通り25bpの利下げ(結果1.75%ー2.00%、前回2.00%ー2.25%)が実施され、声明文においても、次回追加利下げを示唆する「will act as appropriate(適切に行動するだろう)」の文言が残りました。しかし、同時に発表されたFOMC参加者によるFF金利予想分布図(ドットチャート)にて、17人のメンバーの2019年末の予想中央値が1.875%に留まり、2020年も追加利下げを見込んでいないことが明らかとなると、追加利下げ観測が後退し(=利下げ打ち止め観測が台頭)、ドル円は約1ヶ月半ぶり高値となる108.48まで上昇しました。もっとも、2019年末は予想中央値こそ1.875%となったものの、17人中7人のメンバーが年内あと1回の利下げを予想している他、パウエルFRB議長も記者会見で「経済が弱まれば、より大幅な利下げが必要になる可能性もある」と追加利下げの可能性を滲ませたことが材料視されると、米長期金利が伸び悩み、ドル円も反落に転じました。

更に、FOMCと同日に発表された日銀金融政策決定会合(BOJ)では、「金融政策の現状維持」が決定され、一部で期待されていた追加緩和は見送られる結果となりました。失望売りが強まる中、ドル円は一時107.79まで下げ幅を広げました。しかし、@公表文の最終パラグラフに、『日本銀行は、「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、より注意が必要な情勢になりつつあると判断している。こうした情勢にあることを念頭に置きながら、日本銀行としては、経済・物価見通しを作成する次回の金融政策決定会合において、経済・物価動向を改めて点検していく考えである』との強い表現が付け加えられたこと、A黒田総裁が記者会見で「追加緩和に前回より前向き」と発言したこと等が、次回会合(10月開催)での追加緩和の布石と受け止められると、ドル円はその後108円台を回復する動きとなりました。

もっとも、サウスチャイナ・モーニングポストによる「トランプ米大統領は中国との合意協定が迅速に合意されない場合、関税を50%から100%に引き上げる可能性がある」との報道や、来週予定されていた「中国代表団による米農家視察がキャンセルされた」との報道が米中協議進展期待の後退に繋がり、結局107.50台まで押し下げられての越週となっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル(EURUSD)相場は、中東を巡る地政学的リスクに端を発した「有事のドル買い」を背景に、9/17に安値となる1.0990まで急落しました。しかし、1.10割れの押し目買いに続落を阻まれると、ドイツ・9月ZEW景況感調査(結果▲22.5、予想▲37.0)が市場予想を上回ったことや、サウジアラビアの原油生産が予想より早く通常稼働に戻るとの安堵感が支援材料となり、週央にかけて、1.1076まで反発しました。その後は、FOMCやBOJ、BOEなど日米英の金融政策イベントに振らされながらも方向感を見出せず、結局1.1020近辺まで押し戻されての越週となっております。尚、今週は、デギンドスECB副総裁より「経済のリスクは下を向いている」「金融政策だけで経済を回復させることはできない」との発言が見られましたが、市場の反応は限定的となっております。

来週の見通し(9/23−9/27)

<ドル円相場>
ドル円は週末にかけて下げ幅を広げ、@90日移動平均線や、A一目均衡表転換線を割り込んでのクローズとなりました。FOMCやBOJといった重要イベントを終えたことで、材料出尽くし感に伴うポジション調整(ロングポジション解消)の動きが確認されます。下値目処として意識される一目均衡表雲上限(107.19)や、ボリンジャーミッドバンド(107.10)を割り込めば、106円台への反落も想定されます。ドル円はテクニカル的にみて、下落リスクが高まりつつあると判断できるでしょう。

来週は、米中通商協議を巡るヘッドラインやトランプ米大統領のツイートに振らされる神経質な展開が予想されます。ドル円は、9月に入って以降、金融緩和期待を背景にリスク選好的なムードが続いてきましたが、主要国の金融政策イベントを全て終えたことで、市場の関心が「米中問題」に回帰しつつあります。米中問題に関しては、サウスチャイナ・モーニングポストが「トランプ米大統領は中国との合意協定が迅速に合意されない場合、関税を50%から100%に引き上げる可能性がある」と報じたことや、来週予定されていた「中国代表団による米農家視察がキャンセルされた」との報道も出てきており、米中協議進展期待が大きく損なわれるリスクを孕んでいます。言い換えると、市場のセンチメントは「楽観ムード」から「悲観ムード」へ変わると見られ、当方では、米中問題の再燃を背景に、来週はドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。(ドル円の予想レンジ:106.00ー108.50)

<ユーロドル相場>
ユーロドルは、トレンドの方向性を示唆するボリンジャー・ミッドバンドを挟んでの上下(=トレンドレスな状態)が続いております。但し、6月高値と8月高値を結んだレジスタンスラインに5日連続で上値を抑えられたことを考慮すれば、テクニカル的に見て、やや下落リスクが高まりつつあると判断できます。

一方、ファンダメンタルズ的に見ると、@米中貿易摩擦が欧米貿易摩擦に波及するリスクや、Aユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感(※OECDは9/19にユーロ圏の2019年及び2020年の経済成長率見通しを下方修正)、Bイタリアの財政不安、C中東地域やトルコを巡る地政学的リスクなど、不安材料は山積みです。ドラギECB総裁や、デギンドスECB副総裁はこうしたネガティブ要素に立ち向かうべく、「金融政策と財政拡張の両面から景気を下支えすべき」と訴えましたが、先行きは尚不透明です。欧州圏の足並みが揃わなければ、財政出動規模が予想より小さくなり、却って失望を招く可能性も出てきそうです。

来週は、9/23に予定されている独・製造業PMI速報値、非製造業PMI速報値、9/24の独・Ifo景況感指数に注目が集まります。市場予想を下回る冴えない結果となれば、欧州経済を巡る悲観的な見方が強まり、ファンダメンタルズ主導で下落するシナリオも想定されます。先週サポートされた1.0990前後を割り込むことができれば、9/3に付けた年初来安値1.0926や、先週のECB理事会直後に記録した安値1.0927を試す展開も意識されます。今週はユーロドルの下落をメインシナリオとして予想いたします。(ユーロドルの予想レンジ:1.0900−1.1150)

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