「目先の高値をつけイベントで振れやすい展開」(週報9月第3週)

先週のドル円は、週初から着実に安値高値ともに切り上げる上昇相場を続けました。

「目先の高値をつけイベントで振れやすい展開」(週報9月第3週)

「目先の高値をつけイベントで振れやすい展開」

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初から着実に安値高値ともに切り上げる上昇相場を続けました。ECB理事会直後にユーロ円が急落した際にいったん下押しする局面も見られましたが、上昇トレンド自体に変化は無く、週末には108.26レベルと週初の安値から1円50銭切り上げる強い地合いとなりました。背景には10月の米中通商協議に向けての期待から株式市場が上昇、それを見てのリスクオン相場と言えますが、これまでの米中間の経過を見ている限り、そこまで楽観的になれるのかは個人的には疑問を感じずにはいられません。

そして、週末に突然飛び込んできたニュースに、イエメンの親イランテロ組織が無人爆撃機でサウジアラビアの主要な原油施設を破壊したという大事件があります。この攻撃でサウジアラビアの石油産出は5割減となり、これは世界全体の石油産出量の5%にも達するとのことです。しばらくは周辺国も含めての増産と備蓄の切り崩しで対応可能という話ですが、週明けの原油価格は暴騰、NY原油(WTI)は週末終値の54.82ドルから今朝の早朝夜間取引では一時63.34ドルと15.5%もの上げを見せました。

やや過剰に反応した面があるとは言え、当面原油価格は高止まり、そして中東におけるイランを中心とした地政学的リスクの上昇により円相場は上値を抑えられやすい流れになってきそうです。今回のテロはイエメンのテロ組織ではあるものの、米国は裏で動いているのはイランであると非難しています。どうもイランを取り囲む情勢は、安倍首相がイランを訪問した際のタンカー攻撃以降リスクが高まっているのですが、先週は対イラン強硬派のボルトン補佐官が更迭され、ホワイトハウスとしては対話を進めようとしていた矢先の出来事です。陰謀論を掲げるつもりは無いですが、黒幕はさらに米国の軍産複合体では無いかと思わせるような出来事でした。

さて、今週はこのサウジアラビアの事件という新たなニュースが加わりましたが、注目材料としては日米の金融政策決定会合があります。19日未明にFOMCの結果発表がありますが、こちらは0.25%の利下げでほぼ確定、その後のパウエルFRB議長の会見で年内に更なる利下げがあるのかどうかヒントとなるものを見つけようとする動きになりそうです。

しかし、FOMCの後、同日の昼頃には日銀会合の結果発表もあり、2週間前までは現状維持の無風通過と思われていましたが、ECBが予想以上の緩和に舵を切ってきたこと、FRBも利下げを行うことが確実なことから、日銀も何らかの追加緩和を行うのではないかという思惑が出てきました。先週の円安相場の要因のひとつには日銀緩和の思惑もあったと考えられます。仮に日米双方とも緩和ということになると、効果的には打ち消す方向に動きそうですが、実際に追加緩和に動けば円安、何もしない場合には円高という動きになるでしょう。ひょっとするとFOMC以上に変動要因となる可能性があります。

ただ、来月には消費増税も控えていて、ここまでの円安の動きを考えるとそろそろ息切れしてきそうな感じもします。サウジアラビアへの攻撃で108円台が一層重たくなってきたような感じもしますが、テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

長期ドル安トレンド自体に変化は無いものの、8月から9月上旬にかけての反転パターンをネックラインを上抜けたことで完成し、4月高値からのレジスタンスラインを先週後半にトライする動きとなっていました。何も無ければそのまま上抜けとなりそうでしたが、週末のサウジアラビア攻撃で再びレジスタンスの下側へと押してきたことで、一時的な上抜けが大いなるダマシとなりそうな感じです。

また、8月高値と安値のフィボナッチ・リトレースメントでは、78.6%(61.8%の平方根)戻しが108.28(緑のターゲット)となっていて、ほぼ先週高値と一致していることも戻し高値を付けた可能性を考慮しなくてはいけない状況としています。すると、8月安値と先週高値との押しを考えることとなり、その38.2%押しの106.81(青のターゲット)を下値のめどとすることになります。

上値は先週高値を見ておくとよさそうですから、今週は106.80レベルをサポートに108.25レベルをレジスタンスとする流れを見ておくこととします。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

9月16日(月)
**:** 東京市場休場
11:00 中国8月鉱工業生産、小売売上高
16:00 トルコ6月失業率
20:15 フィンランド中銀総裁講演
21:30 米国9月NY連銀製造業景況指数

9月17日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
10:30 豪州4〜6月期住宅価格指数
18:00 ドイツ9月ZEW景況感指数
18:00 ユーロ圏9月ZEW景況感指数
18:40 フランス中銀総裁講演
22:15 米国8月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国9月NAHB住宅市場指数
26:10 クーレECB理事講演
**:** FOMC(〜18日)

9月18日(水)
**:** 日銀会合(〜19日)
07:45 NZ4〜6月期経常収支
08:50 本邦8月貿易統計
17:00 南ア8月CPI
17:30 英国8月PPI
18:00 ユーロ圏8月CPI
20:00 南ア7月小売売上高
21:30 米国8月住宅着工、建築許可件数
23:30 週間原油在庫統計
24:15 フランス中銀総裁講演
27:00 FOMC結果公表
27:30 パウエルFRB議長会見
**:** 英中銀MPC(〜19日)

9月19日(木)
07:45 NZ4〜6月期GDP
10:30 豪州8月失業率
**:** 日銀会合結果公表
15:30 黒田日銀総裁会見
16:30 スイス中銀政策金利発表
17:30 英国8月小売売上高
19:00 クーレECB理事講演
19:30 フィンランド中銀総裁講演
20:00 英中銀MPC結果公表
**:** 南ア中銀政策金利発表
21:30 米国4〜6月期経常収支
21:30 米国9月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国8月景気先行指数
23:00 米国8月中古住宅販売件数

9月20日(金)
08:30 本邦8月CPI
15:00 ドイツ8月PPI
23:00 ユーロ圏9月消費者信頼感速報値
24:20 ボストン連銀総裁講演
26:00 (ダラス連銀総裁講演)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

先週の概況

9月9日(月)
 ドル円は終日堅調な動きとなりました。東京市場ではこれといって目立った材料は無かったものの106円台後半でわずかずつ下値を切り上げる展開となり、海外市場に移ってからも買いが先行する流れが続きました。NY市場ではユーロ円の買いとムニューシン財務長官による米中通商協議に対する楽観的な見通しも加わり、107.28レベルまで上昇後に高値引けとなりました。

9月10日(火)
 ドル円はNY市場までは107円台前半で20?50銭で上下ともにオーダーが入っている動きを繰り返していましたが、全体としては底堅さが目立ちました。NY市場に入り日銀会合で追加緩和検討の思惑や中国側から米国に通商協議に関する提案があったとこことを受け、後場にはレンジを上抜け。勢いこそ無いものの、その後もじり高の展開を続けて引けました。

9月11日(水)
 ドル円は前日の流れを継続し東京市場からリスクオンムード、株式市場が底堅い動きとなったこともあって107円台後半へと水準を切り上げました。海外市場に移ってからは底堅いもののもみあいが続き107.75前後での小動きとなりました。

9月12日(木)
 ドル円は米国の対中追加関税の発動が半月延期されるとの発表に10月に予定されている米中通商協議への期待から株式市場が上昇し、為替市場も追随してリスクオン姿勢が強まりました。東京の昼過ぎには108.17レベルまで上昇したものの108円台では売りも多く、その後はじり安。ECB理事会後のユーロ円の下げもありNY朝方には107.52レベルまで水準を下げたものの、その後のユーロ円の買い戻しから日中高値をわずかに更新後に高値圏での引けとなりました。

9月13日(金)
 東京朝方は株高と連休前の仲値ドル買いの動きが重なって108.26レベルと高値をわずかに切り上げましたが、依然として108円台では売りたい向きも多く、その後はユーロ高の動きとともに108円台を割り込んでもみあいが続きました。NY市場に入り強めの経済指標をきっかけに再び108円台を回復しましたが、東京3連休を前にして動意薄のままの週末クローズとなりました。

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