ドル円見通し リスク選好の株高円安継続で108円に到達(9/12)

中国が9月1日から発動していた対抗関税の一部を対象から除外したことでの協議進展期待

ドル円見通し リスク選好の株高円安継続で108円に到達(9/12)

【概況】

9月5日午前の米中協議再開報道をきっかけとしたリスク選好による株高とともにドル円も上昇、8月23日に米中双方が関税拡大を宣言してからの急落分を解消して9月5日深夜には107円台に乗せ、さらに10日、11日と戻り高値を徐々に切り上げて108円に迫ってきていた。
9月11日は翌日のECB理事会を控えてのユーロ安ドル高、中国が9月1日から発動していた対抗関税の一部を対象から除外したことでの協議進展期待、米生産者物価の伸び率が予想を上回ったことがドル円を押し上げ、12日朝には108円に到達して8月26日以降の戻り高値を更新している。

【中国の関税一部除外、米PPI良好、ECB理事会意識】

8月1日から8月26日への円高ドル安は、米中貿易戦争の深刻化と米連銀の利下げ及び世界的な金融緩和観測による欧米長期債利回りの大幅低下と株安が背景だったが、9月5日の米中協議再開報道から流れが変わり、8月23日夜からの急落分を解消したことでその時点よりも楽観的な市場心理となってきている。

米中貿易戦争問題では、11日に中国財政省が米国の対中制裁関税第4弾への報復として発動した追加関税のうち、潤滑油や飼料用魚粉など16品目を今後1年間は対象から除外すると発表して米国との協議への前向きな姿勢を示した。関税戦争による中国国内企業への影響を緩和する配慮と思われるが、これに対してトランプ米大統領は「良い意思表示だ、中国は正しいことをした」と評価した。また「中国は合意を望んでいる」と述べる一方で「中国は米国を出し抜いて巨額をかすめ取ってきた。米国にとって正しい合意を得なければならない」との強硬姿勢も改めて示している。

米中双方は10月上旬とされる閣僚級協議へ向けた事務レベル協議を行っているところであり、10日には香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが「中国は米農産品の購入を拡大する見通しで、米中双方が5月の協議決裂前に交渉していた草案を土台に議論する」と報じている。また10日にはナバロ米大統領補佐官が対中関税について「見事に機能している」「中国の経済侵略に対する最善の防衛策であり中国が誠実に協議を継続するための最良の保険措置であることを理解する必要がある」と述べている。進展期待がある一方で米国の強硬姿勢も垣間見られる。
 
11日夜にユーロが反落した。9月3日から市場のリスク選好を背景に反騰してからは持ち合いが続いていたが、11日夜には対ドルで1.10ドルを割り込んだ。12日のECB理事会での金融緩和や11日夜の米生産者物価が予想を上回ったことが背景と思われる。12日のECB理事会ではマイナス金利の深掘りや資産買い入れ等による緩和姿勢を示す可能性が指摘されている。

11日夜に発表された8月の米生産者物価上昇率は概ね予想を上回った。全体の前月比は0.1%で市場予想の0.0%を上回ったが、7月の0.2%は下回った。前年同月比は1.8%で市場予想及び7月の1.7%を上回った。コア指数の前月比は0.3%となり予想の0.2%及び7月のマイナス0.1%を上回った。コア指数の前年同月比は2.2%で予想の2.2%及び7月の2.1%を上回った。これらはドル高材料となった。

来週の9月17−18日に米連銀FOMCが開催される。市場は0.25%の追加利下げを見込んでいるが、11日もトランプ米大統領が米連銀議長を批判しつつ大幅利下げを要求するツイートをしている。大統領は「米連銀は政策金利をゼロ未満に引き下げるべきだ」「各国がしていることをしないパウエルとFRBは愚かだ」と述べている。米連銀は政権から独立しているが、昨年末までは利上げ継続姿勢だったものを年明けに利上げ棚上げへ変わり、さらに7月末には利下げを決定するところまで方針を変えてきた。政権による執拗な利下げ要求も米連銀の政策判断に影響しているとも言えるだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月3日深夜安値から3日目となる9月6日夜安値からの上昇で9月5日深夜高値を超えたため、10日朝時点では9月6日夜安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクルに入ったとした。また9月5日深夜高値を基準として今回の高値形成期を10日夜から12日深夜にかけての間と想定されるとし、11日朝時点では107円台を維持するうちは上昇余地ありとして11日夜から12日朝にかけては高値を試しやすい時間帯とした。
12日朝には108円に到達しているので引き続きサイクルトップ形成中とみる。108円台序盤では戻り売りも出やすいと注意するが、107.50円を上回るうちは高値試しを続けやすいとみる。107.50円割れからは弱気転換注意として10日深夜安値107.19円試しとし、10日深夜安値割れからは弱気サイクル入りとして12日の日中から13日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では、9日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜き、その後も両スパンそろっての好転を維持しているため、遅行スパン好転中は高値試し優先とする。26本基準線割れ、遅行スパン悪化と続く場合は弱気転換注意とし、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10日午前高値から11日夜への上昇期に指数のピークが切り上がっているのでまだ上昇余地ありとみるが、10日から3度目の70ポイント超えとなるので、指数のトリプルトップ形成による下落も警戒されるところとして60ポイント割れから続落する場合は下げ再開を疑う。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.50円を下値支持線、108円から108.25円を上値抵抗帯とみておく。
(2)107.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、108.25円超えの場合は108.50円前後試しとする。108.25円以上は反落注意圏と考えるが、107.50円以上での推移中は13日も高値を試しやすいとみる。
(3)107.50円割れを弱気転換の注意地点として10日深夜安値107.19円試しとし、安値更新からは弱気サイクル入りと仮定して106.90円前後試しを想定する。107円割れはいったん買い戻されやすいとみるが、10日深夜安値を割り込んだ後も107.30円割れの状況が続く場合は、13日の日中も安値試しを続けやすいとみる。また、リスクオフ材料を伴って下落する場合は106.50円台まで下値目途を引き下げる。

【当面の主な予定】

9/12(木)
13:30 (日) 7月 第三次産業活動指数 前月比 (6月 -0.1%、予想 -0.3%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.2%、予想 -0.2%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 -1.6%、予想 -0.1%)
18:00 (欧) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 -2.6%、予想 -1.3%)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 19.75%、予想 17.25%)

20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ドラギECB総裁、定例記者会見
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.8%、予想 1.8%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 2.2%、予想 2.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.7万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.2万人、予想 169.0万人)
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -1197億ドル、予想 -1950億ドル)

9/13(金)
休場 中国(中秋節)
香港デモ、対政府5大要求回答期限
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 1.3%)
13:30 (日) 7月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 0.7%)
13:30 (日) 7月 設備稼働率 前月比 (6月 -2.6%)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調済 (6月 179億ユーロ、予想 175億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調前 (6月 206億ユーロ)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 0.2%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 0.2%、予想 -0.4%)
21:30 (米) 8月 小売売上高 前月比 (7月 0.7%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 1.0%、予想 0.1%)
23:00 (米) 9月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (8月 89.8、予想 90.5)
23:00 (米) 7月 企業在庫 前月比 (6月 0.0%、予想 0.3%)

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