ドル円 下値リスクくすぶる、105円割れトライも(週報8月第2週)

先週のドル/円は、ドルが続落。週末にかけては105円前半まで値を下げ、1月3日に記録した年初来安値も意識される局面が観測されていた。

ドル円 下値リスクくすぶる、105円割れトライも(週報8月第2週)

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先週のドル/円は、ドルが続落。週末にかけては105円前半まで値を下げ、1月3日に記録した年初来安値も意識される局面が観測されていた。

前週末には、米国務長官から「中国の悪い行いが自由貿易を阻害」との発言が聞かれたことに対し、中国の新国連大使が「貿易問題、米が戦いたいなら応戦」と応じるなど、米中貿易戦争激化が改めてクローズアップされるなか、週明けの為替市場は寄り付いている。

ドル/円は前週末のNYクローズと大差ない106円半ばで寄り付いたのち、当初はドルが小じっかり。一時的には107円台も回復している。しかし、滞空時間は短く軟落に転じると、週末にかけては逆にドルが緩やかな右肩下がり。106円を割り込み、週間安値の105.27円を観測、週末NYもドル安値圏である105.65-70円で取引を終え越週となった。
なお、そうしたなか中国人民元は、対ドルで2008年5月以来となる11年ぶり1ドル=7元台へと下落する局面しただけでなく、一度達したのちは週末にかけて7元台を連発。当局が元安容認姿勢に転換した可能性も指摘されている。

一方、週間を通して材料目白押しの状況のなか、とくに注目された要因は「米中貿易戦争激化」と「米金融政策」について。
前者は、先で取り上げたやりとりでも一端が垣間見えるが、その後も対中制裁関税第4弾への報復として「中国企業が米農産品の購入を停止」する反面、米財務省は「中国を為替操作国に認定した」と発表、また「米国企業が華為技術(ファーウェイ)とのビジネスを再開するためのライセンスに関して決定を先送り」との報道が観測されるなど報復合戦、ノーガードの打ち合いといった様相も。

対して後者は、7月末に実施されたFOMCでFRBは利下げを実施したものの、その下げ幅が小さすぎるとしてトランプ米大統領から、度重なる「利下げ圧力」が観測されていた。たとえば7日に「FRBは大幅で速やかな利下げを行うべき」と発言したことに続き、週末9日には「1%かそれを少し超える利下げを望んでいる」とコメントしたという。
そのほか単発モノとして、ドル/円が105円台まで下落したこともあり、本邦要人からは口先介入が相次ぐ。一例を挙げると、安倍首相は「必要なら機動的マクロ経済政策を躊躇なく実施」、武内財務官「緊張感を持って市場を見続ける」、麻生財務相「株価と為替、著しく変動するのは経済に良くない」−−などといったコメントが週間を通して聞かれていた。また、先週を含め、北朝鮮がここ2週間ほどでトータル5度の「飛翔体発射」を実施してはいるものの、トランプ米大統領が「北のミサイル試験はすべて短距離」などと発言し不問に処す考えを示していることで、為替をはじめ金融市場への影響は取り敢えず限られている。

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途中に一旦落ち着いたような感も見られたが、先週末にかけてドル安・円高が再燃。一時105.27円まで下落してきた。ドルの下落スピードが若干早いものの、リスクがドル安方向に高いことは間違いないだろう。今週は週のどこかで105円割れトライ、場合によっては1月3日に記録した年初来安値に接近あるいは更新する可能性もありそうだ。
材料的に見た場合、「北朝鮮情勢」や「イラン情勢」のほか「米貿易問題」、「米金融政策」などが依然として注視されている。そのいずれも大事だが、とくにとなると「米貿易問題(米中貿易戦争激化)」になるだろう。米中とも一歩も引かぬ構えを見せるなか、この週末にはトランプ氏が「9月に会合するのなら結構なことだ。会合しないのなら、それも構わない」などと述べたとされている。果たして上手い落し所などあるのだろうか?なお、トランプ氏は9日から18日まで夏休みを取る予定であり、発言も手控えられる可能性はあるが、ツイッターなどSNSを使用した発言頻度は変わらず、引き続き注意が必要との見方も少なくない。

テクニカルに見た場合、筆者の使用しているデータでは今年のドル最安値は1月3日の104.10円なのだが、フィボナッチの観点でいうと、同安値を起点とした上げ幅の76.4%押しを大きく割り込んできた。次のターゲットは100%戻し、つまり104.10円になる。
一朝一夕に105円を割り込む展開をたどることは見込みにくそうだが、本邦勢はいわゆるお盆休みに入る向きも多く、流動性が低下するだけに思わぬ価格変動にも一応要注意。「薄商い=荒れ模様」となる可能性もある。

一方、材料的に見た場合、7月の消費者物価指数や8月のミシガン大消費者信頼感指数速報値といった幾つかの米経済指標が発表される予定となっており、そちらはまず要注意。内容如何では、トランプ氏による「大幅利下げ要請」を後押しすることにもなりかねないだろう。
そのほかでは、米国を中心にさほど目立った要因は見られないものの、季節要因として、8月15日前後は四半期定例となる米国債の満期償還とクーポン利払いが集中。円転による円買い発生が意識されやすいことは頭の片隅にとどめておきたい。

そんな今週のドル/円予想レンジは、104.50-107.00円。ドル高・円安については、105円あるいは106円台に強い抵抗はみられない。意識されるのは107円レベル、あるいは先週高値の107.11円か。それらを超えれば、ドルの下値リスクはかなり軽減しそうだ。
対するドル安・円高方向は、先週安値の105.27円をめぐる攻防にまずは注目。割り込むといよいよ105円割れも。年初来安値が視界内に捉えられるなか、当局などによる口先介入にも一応要注意。(了)

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