ドル円見通し 米中対立深刻化さらに進む、1月3日以来の安値圏(8/6)

米中対立は深刻化の一途をたどっている。株式市場が大幅下落して長期国債が買われ、金融市場全般は米連銀への追加利下げ催促となっている。

ドル円見通し 米中対立深刻化さらに進む、1月3日以来の安値圏(8/6)

【概況】

8月1日未明の米FOMC声明で0.25%の利下げが決定されたもののパウエル米連銀議長がその後の会見で「長期的な利下げ局面の始まりではない」と発言したために継続的な利下げ期待が後退したとしてドル円は8月1日午前高値で109.31円を付けて7月10日高値108.98円を超えたが、1日深夜にトランプ大統領が中国への制裁関税第4弾発動を宣言したことから情勢が一変し、米中対立の深刻化による安全資産買いと米連銀が追加利下げに追い込まれるとの見方でドル円は急落に転じた。
8月1日付け日足は前日比で1.41円の円高ドル安となる大陰線となり、さらに8月2日も米雇用統計がさえなかったことで前日比0.80円の円高ドル安の続落陰線となり、安値で106.49円を付けて6月25日安値106.75円を割り込んでいた。

【株安・長期債利回り低下に地政学的リスクも】

週明けもさらに米中対立が深刻化する中でドル円は5日午前に106円を割り込んで105.78円の安値を付けた。その後は106円を挟んだ揉み合いとなっていたが、6日早朝に105.52円まで一段安している。
中国商務省は「中国企業が米農産品の購入を一時停止した」と発表。また人民元相場は対ドルで1ドル=7元台まで下落して2008年5月以来11年3か月ぶりの安値へ元安が進んだ。これは中国当局が元安容認に転じた動きと市場は受け止めたが、トランプ米大統領はツイッターで「為替操作だ」と批判、その後に米財務省は中国を為替操作国に認定したと発表した。

NYダウは先週末まで4日間続落していたが、週明けは前週末比767.27ドル(2.9%)安と大幅続落した。1日の下げ幅としては今年最大。株安を受けて安全資産としての債券が買われ、米10年債利回りは前週末比0.14%低下の1.71%へ低下して2016年10月以来2年10か月振りの低水準となった。
米長期債利回り大幅低下によりユーロが上昇、ドル円が105円台に沈んで今年1月3日に104円台へ急落した時以来の安値となり、ドル指数は8月1日から3日連続の陰線で急落している。また市場全般のリスク回避感を示す恐怖指数(VIX)も20を上回る急上昇となった。

8月5日夜の発表された米サプライ管理協会(ISM)の7月非製造業景況指数も53.7となり市場予想の55.5を下回ったが、前月の55.1から低下して2016年8月以来2年11か月振り低水準となった。

米中対立は深刻化の一途をたどっている。株式市場が大幅下落して長期国債が買われ、金融市場全般は米連銀への追加利下げ催促となっている。ドル円にとっては株安からの逃避買い、米長期債利回り低下による金利面からのドル売り圧力がかかる状況にあるが、イラン情勢や北朝鮮による連日のミサイル発射(8月5日から米韓合同演習が始待ったことへの対抗)もあり、地政学的リスクから円が買い戻されている印象もある。

【6月25日安値割れからさらに続落、日足は三羽烏】

8月1日から5日まで日足は3日連続陰線=三羽烏(黒三兵)出現となっている。また2日間で2円以上の急落幅となっている。6月25日安値から8月1日高値まで二段戻しだったが、底割れによる一段安入りであり、日足チャート上の下値目途となる安値は1月3日の104.82円及び2018年3月26日安値104.63円まで見当たらないが、それらに対する余裕も徐々に乏しくなっている。新たな悲観材料が出てくれば早々にそれら安値を割り込む可能性も警戒されるが、その場合は週足や月足チャート上の安値目安となるのは2016年6月24日(ブレクジット投票ショックによる下落時)安値99.04円まで切り下がる。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

USD/JPY時間足

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは8月1日の下落で7月30日夜安値を割り込んだため、8月2日朝時点からは1日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして8月3日夜から6日夜にかけての間への下落を想定してきた。5日午前安値から下げ渋りを入れてから6日早朝に安値を更新しているのでまだ一段安余地ありとみる。また6日夜を超えて続落の場合は5日午前安値を直近のサイクルボトムとして底割れによる連続的な弱気サイクル入りによりボトム形成期が8日午前から12日午前にかけての間へさらに伸びる可能性も検討される。強気サイクル入りは5日夕高値106.34円超えからとし、その場合は6日の日中から8日にかけての間への上昇と107円試しを想定するが、情勢を大きく変化させる材料を伴わない場合は106.50円以上は反落警戒圏とみる。

60分足の一目均衡表では1日夜の下落から遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した状況が続いているので、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったんリバウンド入りの可能性を優先するが分厚い先行スパンが抵抗帯となってくると思われる。

60分足の相対力指数は2日朝から指数のボトムが切り上がっているが相場は戻せずにいるため、50ポイントを超えないうちは一段安余地ありとみる。50ポイント超えからはいったんリバウンド入りとするが、その後の40ポイント割れからは下げ再開を疑う。


以上を踏まえて当面のポイントを示す。

(1)当初、105.50円を支持線、106.00円を抵抗線とする。
(2)106円以下での推移中は一段安警戒とし、105.50円割れからは105.00円前後試し、さらに2018年3月26日安値104.63円試しを想定する。104円台中盤では買い戻しも入りやすいとみるが、下落が加速する場合は104円割れもあり得ると注意する。
(3)106円超えを強気転換注意、5日夕高値106.34円超えからはいったん強気サイクル入りとみて106.50円から107.00円手前にかけてのゾーンを試すとみるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/6(火)
10:30 (豪) 6月 貿易収支 (5月 57.45億豪ドル、予想 60.00億豪ドル)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利 (現行 1.00%、予想 1.00%)
14:00 (日) 6月 景気先行指数CI速報値 (5月 94.9、予想 93.5)
14:00 (日) 6月 景気一致指数CI速報値 (5月 103.4、予想 100.4)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 -2.2%、予想 0.5%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -8.6%、予想 -5.2%)
23:05 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、会議挨拶
26:05 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、講演

8/7(水)
08:50 (日) 7月 外貨準備高 (6月 1兆3223億ドル)
08:50 日銀金融政策決定会合における主な意見(7月29-30日分)
11:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利  (現行 1.50%、予想 1.25%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.3%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 -3.7%、予想 -3.1%)
22:30 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、メディア向け朝食会を開催[シカゴ]
28:00 (米) 6月 消費者信用残高 前月比 (5月 170.9億ドル、予想 165.0億ドル)

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