ドル円週報 「年初来安値を更新する可能性大」(週報8月第1週)

先週のドル円は、2つの大きなイベントがそれぞれ逆方向の動きとなり、ドル円としては久しぶりに大きく動いた一週間でした。

ドル円週報 「年初来安値を更新する可能性大」(週報8月第1週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、2つの大きなイベントがそれぞれ逆方向の動きとなり、ドル円としては久しぶりに大きく動いた一週間でした。まず。FOMCにおいて市場参加者の緩和寄りの思惑に修正をかけるような利下げと声明となりドル高の動きとなり、短期的にはドルが底を打ったと思わせました。ただ、パウエル議長は会見で利下げは1回限りとは言っていないと補足していますので、利下げ効果を見つつも今後の物価関連の経済指標次第では年内の追加緩和もあり得るとは思います。ちなみにCMEのFF先物の取引状態からは、9月追加利下げを考える向きが改めて増えてきています。

そして、そこに出てきたのがトランプ大統領による9月からの対中制裁関税第4弾発動の発言です。これまで対象から外れていたほぼすべての中国製品に10%の関税がかかることとなり、製品価格の上昇をはじめ消費者への影響がストレートに出てくる可能性があります。これまでも米中間の協議は合意間近と決裂を繰り返してきた経緯がありますので、今回の制裁関税も実際の発動は回避される可能性もあります。金曜には延期や発動中止もあり得るとの発言もありましたが、市場参加者の反応は鈍く、これまで何度も期待しては梯子を外されてきたことで、オオカミ少年状態になっていると思われます。

FOMCでは、FRBが調整の緩和としていることに対して、トランプ大統領は今後の緩和へのスタートという言葉を市場参加者は望んでいたと、自身の希望を市場参加者の言葉かのように発言しましたが、冒頭に書いたFF先物の取引状況はFOMC直後こそ年内の追加利下げを見込む向きが半分以下にまで減っていましたが、木曜の制裁関税第4弾の発言以降は急速に元の利下げ織り込み度へと戻し、FOMCに対して催促相場となっています。

8月5日の東京時間の織り込み度の分布を見ると、9月FOMC時点での利下げ織り込み度が100%で、0.25%以上の追加利下げを見込んだ取引となっていますし、12月FOMC時点となるとコンセンサスは更なる0.25%の利下げとなる1.50〜1.75%となっています。先週の利下げ直前までも市場参加者は大幅利下げを見込む向きもあって、振れやすい傾向はみられるものの、あと2回はまだ不明ですが、年内でもう1回の利下げは制裁関税発動の懸念が残る限りは可能性が高そうだと言うこととなるでしょう。

ファンダメンタルな面では、ドル売り・円買いにバイアスがかかりやすい材料が多いのですが、テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。

テクニカルには「4月から続いていたドル安トレンドに変調が見られ、6・7月の安値圏でいったん底打ちしたと見る方が自然」と書いた通りで、FOMC後には109円台にしっかりと乗せ、短期筋のドル買いポジションが一時的に増えた場面であったと考えられます。この水準は年初来高値112.40とその後の安値106.78との38.2%戻し108.93を上回ったことから、変形ダブルボトム状の反転パターン完成か、と思わせました。


しかし、対中制裁関税発動の発言で一気にドル売りへと転じることになりましたが、短期筋の投げが加わったことで思った以上の値幅を伴う動きとなっています。先週はドル円で1日の値幅が2円を超えましたが、これは年初のフラッシュクラッシュのような異常な値動きを除けばドル円としては比較的珍しい変動幅です。これがテクニカルには直前のダマシドル買いとともに、本流となるドル安のきっかけとなりました。

執筆時点で既に105円台を見ていて、これはフラッシュクラッシュ以来の水準ですが、すでにフラッシュクラッシュ時の安値(前回のチャートからインターバンク安値の104.78を採用しています)と年初来高値の78.6%(61.8%の平方根)押し106.41を下回っています。ここから下のターゲットでは100%押しの104.78があり、この水準は年初来来高値からの逆N波動(ピンク)の78.6%エクスパンション(青のターゲット)104.90とも近く、おそらく早い段階で年初来安値を試しに行く流れにあると考えられます。

今週は、基本的に上がっても下がってもドル売りという流れを考え、104.70レベルをサポートに、106.80レベルをレジスタンスとする週を見ておくこととします。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

8月5日(月)
**:** シドニー市場休場
10:45 中国7月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコ7月CPI
16:50 フランス7月サービス業PMI改定値
16:55 ドイツ7月サービス業PMI改定値
17:00 ユーロ圏7月サービス業PMI改定値
17:30 英国7月サービス業PMI
22:45 米国7月サービス業PMI改定値
23:00 米国7月ISM製造業景況指数
26:30 ブレイナードFRB理事講演

8月6日(火)
07:45 豪州4〜6月期失業率
08:01 英国7月小売売上高
10:30 豪州6月貿易収支
13:30 豪中銀政策金利発表
15:00 ドイツ6月製造業新規受注
25:00 セントルイス連銀総裁講演


8月7日(水)
08:50 日銀会合主な意見公表
11:00 NZ中銀政策金利発表
13:00 (シカゴ連銀総裁講演)
15:00 ドイツ6月鉱工業生産
15:45 フランス6月貿易収支
23:30 週間原油在庫統計


8月8日(木)
08:50 本邦6月貿易収支
**:** 中国7月貿易収支
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国6月卸売在庫

8月9日(金)
**:** シンガポール市場休場
08:50 本邦4〜6月期GDP速報値
10:30 中国7月CPI・PPI
10:30 豪中銀四半期金融政策報告書公表
15:00 ドイツ6月貿易収支
15:45 フランス6月鉱工業生産
17:30 英国4〜6月期GDP速報値
17:30 英国6月鉱工業生産
17:30 英国6月貿易収支
21:30 米国7月PPI

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

7月29日(月)
ドル円は日経平均が下げたことと仲値に向け実需のドル売りが持ち込まれたところに、金曜安値を割り込んだことでストップオーダーも巻き込みながら東京前場に一時108.39レベルの安値をつけました。しかし、その後は株価が持ち直す動きとともにじり高となり、欧州市場では動きが止まったもののNY市場に入り月末スポットの実需の円売りが入り、ドル円、ユーロ円ともに上昇、ドル円は108.90レベルまで上昇後にやや押して引けました。


7月30日(火)
ドル円は朝方から日経平均の上昇とともにリスクオンの動きが強まりましたが、高値は108.95レベルまで、109円超えのドル売りオーダーに阻まれる形で、その後は急速に値を崩す株価とともに水準を下げました。日銀会合では予想通り現状維持となり、このことも若干の円高要因とされたようです。海外市場に移ってからは108.43レベルまで売られたものの前日安値は試しきれず、FOMCを前にして108円台半ばでのもみあいに終止しました。

7月31日(水)
ドル円はFOMCを控えて108円台半ばで全く動きの無い展開が続きました。FOMCでは予想通り0.25%の利下げとなりましたが、全体としては市場予想よりもタカ派な印象を与えた声明となっていました。決定にあたり2人のメンバーが利下げに反対したこと、今回の利下げは緩和局面のスタートではなく成長を持続させるための調整であることにも触れ、次回以降も利下げを期待していた市場参加者とは距離を置いた印象です。唯一バランスシートの縮小停止を前倒しで決定した点は若干緩和的と取れます。これらの決定を受け、株式市場は大幅安、為替市場は金利差縮小は1回限りで終わる可能性からドル買いで反応、ドル円はしっかりと109円台乗せを見ることとなりました。

8月1日(木)
ドル円は朝方に前日FOMC後の高値を超えるとストップオーダーも巻き込みながら仲値前には109.32レベルの高値をつけました。しかし、動きが止まると実需の売りも出てきて徐々に上値の重たい動きとなりNY市場入り。NY市場に入り発表された経済指標が弱かったことから売りが強まり、ドルを買った向きのストップオーダーを巻き込み週間安値を更新しました。後場に入りトランプ大統領が対中制裁関税第4弾を9月から実施との発言にドルは大幅安となり107円台前半へと朝の水準から2円も下げる大相場となりました。

8月2日(金)
金曜のドル円は、前日の対中制裁関税発表以降のリスクオフの流れを継続し、中国側も対抗措置との発言が出てジリジリと水準を切り下げる展開が続きました。NY市場に入りトランプ大統領が延期や中止の可能性に言及し、一時買い戻しが入りましたが、NEC委員長は同発言について何も聞いていないと述べたことで反落。改めて円買いの動きから106.51レベルまで水準を切り下げ、安値圏での引けとなりました。雇用統計はミックスした内容だったこともあって目立った動きには繋がりませんでした。

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