ドル円見通し FOMC後の一段高から一転して暴落、米中貿易戦争エスカレート(8/2)

1日夕刻からは米10年債利回りが低下し始めたことでドル円は109円台を維持できなくなり、FOMC直後の上昇一服感から下落に転じた。

ドル円見通し FOMC後の一段高から一転して暴落、米中貿易戦争エスカレート(8/2)

【概況】

8月1日未明の米FOMC声明では政策金利が0.25%引き下げられ、今年9月末に予定していた保有資産の圧縮終了も7月末へと2カ月前倒しされた。利下げはリーマン・ショック直後の2008年12月以来10年7カ月ぶりで、声明では「景気拡大の持続へ適切な行動を取る」として追加利下げの可能性を示唆したのだが、パウエル米連銀議長がその後の会見で「長期的な利下げ局面の始まりではない」と発言し、今回の利下げが景気拡大期における「政策の中間調整」として限定的なものとされたために追加利下げ期待が後退してドル買いとなり、ドル円は7月30日高値を超えて一段高となった。1日午前には109.31円まで買われたが、株安によるリスク回避感もあってその後の上値は抑えられていた。

1日夕刻からは米10年債利回りが低下し始めたことでドル円は109円台を維持できなくなり、FOMC直後の上昇一服感から下落に転じた。
1日夜にはISM製造業景況指数が予想を下回ったことでドル安が進み、さらに深夜にはトランプ大統領がこれまで保留していた中国への制裁関税第4弾の発動に踏み切るとツイートしたことから米中対立深刻化懸念が急浮上してNYダウが大幅下落となり、ドル円はリスク回避感から急落、一挙に107円台前半まで下げた。

米サプライ管理協会(ISM)が発表した7月の米製造業景況指数は51.2となり6月の51.7から低下、2016年8月の49.6以来2年11カ月ぶりの低水準で、市場予想の52.0を下回った。
米労働省が発表した週間新規失業保険申請は季節調整済みで21万5000件となり前週比800件増加、市場予想の21万4000件を上回った。

米中対立が一段とエスカレートしたためにNYダウは前日比280.85ドル安と下落した。FOMC声明発表直後の失望売りが一巡して一時は300ドルを超える反発だったため、高値からは500ドル以上の急落だった。
米10年債利回りは前日比0.12%低下の1.90%となり、2016年11月以来の低水準となった。3か月物TB利回りは2.0846%で長短金利逆転の逆イールド現象は49営業日となった。

【米中貿易戦争エスカレートと米連銀への利下げ催促】

8月1日深夜、トランプ米大統領は中国からの輸入品ほぼすべてに制裁関税を拡大する「第4弾」について「9月1日から残りの3000億ドル相当3805品目に10%の追加関税を課す」とツイートした。習近平国家主席の対応を名指しで批判し、税率を25%超まで段階的に引き上げるとした。7月30日から31日にかけては北京で米中閣僚級協議が開催され、9月にも再開されると報道されていたが具体的な成果は見られなかった。
トランプ大統領は6月29日の米中首脳会談で貿易戦争の一時休戦に合意し、その後の協議進展を期待していたが、これまでの電話協議や北京での閣僚級協議では進展が見られなかったとして休戦を破棄した。大統領は「中国は米農産物を大量に購入することに最近同意したがそうはしなかった」と批判している。
トランプ大統領はFOMC直後に利下げ幅が小さすぎると批判を強めていたが、米中対立を煽ることでFOMCを追加利下げに追い込もうとしているのかもしれない。既に長期金利はトランプ大統領発言により大幅に低下している。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月24日深夜安値をサイクルボトムとして29日から31日にかけての間への上昇を想定していたが、30日午前高値からの反落により31日午前時点では30日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、FOMCから反騰入りして7月30日高値を超えれば新たな強気サイクル入りとしていた。
FOMC後の上昇で高値更新へ進んだために1日朝時点では7月30日夜安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとした。またトップ形成期は8月2日午前から6日午前にかけての間としたが、イベント後の急騰のために反動安も大きい可能性があるとし、108.70円割れからは弱気転換注意とした。
1日夜の急落で30日安値を割り込み暴落商状となったため、1日午前高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして2日夜から6日夜にかけての間への下落を想定する。変動幅も大きいため108円までを戻り抵抗とし、上抜けないうちは一段安警戒とする。

60分足の一目均衡表では1日夜の暴落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。新たな安値更新を回避して推移すれば遅行スパンは好転しやすくなるが、安値更新の場合は好転機会が1日遅れてゆく。遅行スパン好転の場合は先行スパン下限試しとするが、そこは戻り売り圧力も強いと思われる。

60分足の相対力指数は1日午前の上昇で80ポイントに到達しておりかなりの買われ過ぎ状態だったが、その後の急落で20ポイント割れまで急降下した。今度は急落し過ぎへの警戒感もあるが、相場がさらに一段安した際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が発生するか、50ポイント超えへ一挙に切り返すような展開にならないと安値試しを続けやすい状況と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107円を下値支線、108円を上値抵抗線とみる。
(2)107.50円から107.75円にかけてのゾーンでは戻り売り圧力も大きいと思われる。107.75円超えの場合は108円試しとするが、108円を超えないうちは107.50円割れから下げ再開とみる。
(3)107円割れからは6月25日安値106.75円試しとし、さらに続落の場合は106円前後まで下値目途を引き下げる。また107.50円以下での推移なら週明けも安値を試しやすいとみる。
(4)8月1日の日足は前日比1.41円幅の大陰線であり、6月25日から8月1日への二段戻しが一巡し、概ね3か月周期のサイクルで下落期に入った可能性が高まったと思われる。6月25日安値割れからは3か月周期のサイクルにおける次の安値形成期となる8月末から9月末にかけての間への下落継続と、今年1月底及び昨年3月底のある104円台への下落も想定される。

※ 8月1日未明のFOMCが失望で反騰、トランプ大統領の対中制裁発動で暴落と目まぐるしい。今晩は米雇用統計があるため、内容次第では揺れ返しの反騰、さらなる暴落、いずれの可能性も抱えているので波乱注意の週末と心得る。

【当面の主な予定】

8/2(金)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前期比 (前期 0.4%)
10:30 (豪) 4-6月期 生産者物価指数 前年同期比 (前期 1.9%)
10:30 (豪) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.1%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 -0.1%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 1.6%、予想 0.8%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 -0.3%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 1.3%、予想 1.3%)

21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -555億ドル、予想 -546億ドル)
21:30 (米) 7月 雇用統計 非農業部門就業者者数 前月比 (6月 22.4万人、予想 16.4万人)
21:30 (米) 7月 雇用統計 失業率 (6月 3.7%、予想 3.7%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前月比 (6月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 雇用統計 平均時給 前年同月比 (6月 3.1%、予想 3.1%)
23:00 (米) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 -0.7%、予想 0.5%)
23:00 (米) 7月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報値 (速報 98.4、予想 98.5)

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