ドル円見通し 4月24日からの下げに対する半値戻しに届かず失速、下げ再開か?(週報7月第3週)

6月25日安値106.75円から7月10日高値108.98円まで上昇幅2.23円の円安ドル高だったが、7月10日夜の米連銀パウエル議長の下院議会証言から反落に転じている。

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ドル円見通し 4月24日からの下げに対する半値戻しに届かず失速、下げ再開か?(週報7月第3週)

【概況】

6月25日安値106.75円から7月10日高値108.98円まで上昇幅2.23円の円安ドル高だったが、7月10日夜の米連銀パウエル議長の下院議会証言から反落に転じている。
6月4日から19日までは1円弱の値幅でほぼ横ばいだったが、6月20日未明のFOMCで早期大幅利下げ観測が強まった事をきっかけとしたドル安が6月25日への下落要因だった。その流れが変わったのが6月25日夜のセントルイス連銀ブラード総裁の「利下げするにしても0.50%の引き下げは過剰」との発言、パウエル議長が講演で利下げ時期に言及しなかったために大幅利下げ期待がトーンダウンしたとの市場の受け止めであった。それまでの市場は7月末の次回FOMCで最大0.50%の利下げとなるのではないかというやや過剰な期待をしていたが、その期待が削がれたためにドルが揺れ返しの上昇となった。また6月29日の米中首脳会談で両国の貿易戦争が休戦入りしたことや、7月5日の米雇用統計が好調だったことが利下げ期待の後退として7月10日までのドル高円安を牽引した。

しかし、ドル高への揺れ返しも7月10日のパウエル米連銀議長による下院議会証言から流れが変わる。7月30-31日の次回FOMCにおける0.5%の利下げについては確率が低いままではあるが、ゼロまで低下していた期待もやや持ち直している。また米中貿易協議についても電話協議で日程を詰めていると報じられているが進捗は見られず、依然として両者の溝が深いこともリスク回避的に円買いを助長し始めている。

【7月15日、一時的な反発と失速】

7月10日夜に急落した後、11日安値107.85円から12日午前高値108.60円までいったん戻したものの、週末13日未明安値で107.77円を付けて11日の安値を割り込んだ。
7月15日11時に中国GDP等の発表からいったん108.10円まで戻したが、この戻りは短命で108円台を維持できずに失速しており、16日朝時点では週末安値割れへの余裕が乏しい状況だ。

7月15日に発表された中国の4-6月期GDPは前年同期比で6.2%となり市場予想と一致したが、前期の6.4%から減速し、1992年の統計開始以来の低水準に陥った。米中対立の悪影響も見受けられるものとして悲観的なものだったが、市場予想と一致したことからこれを想定内とし、それ以外の指標が強かったことから一時的にリスクオン型の円安反応となった。
6月の中国鉱工業生産は前年同月比で6.3%増となり市場予想の5.2%増及び5月の5.0%増を上回った。6月の小売売上高は前年同月比9.8%増となり市場予想の8.3%及び前月の8.6%を上回った。GDPが悪かったものの6月の小売等がよかったことは4-6月期の終盤は持ち直しに入っているのではないかという市場の楽観的な受け止めだったようだが、さすがにGDPが悪かったことをなかったことにはできず、市場反応も一時的なものにとどまった格好だ。

7月15日21時半に発表された7月のNY連銀製造業景況指数は4.3となり市場予想の2.0を上回り、前月のマイナス8.6から出直る数字となった。発表直後には若干のドル高反応も見られたが108円には届かなかった。米連銀の利下げ姿勢に影響を与える程の改善ではないとの受け止め方だったようだ。
NYダウは利下げ期待を背景に3日連続で史上最高値を更新したが、15日の前日比は27.13ドル高にとどまった。昨年1月高値及び10月高値と今年4月高値の三点天井型を突破した状況にあるが、高値警戒感もあって慎重な動きのようだ。株高がドル円を下支えしている印象もあるが、株高と同調して積極的に円安へ進もうというところには至らないようだ。

【当面の中勢ポイント】

(1)中期的には、概ね1年周期の底打ちサイクルにおいて4月高値から下落期入りしてきたが、1年サイクルを構成する3か月前後のサイクルでは3月25日安値から3か月目の6月25日をボトムとして戻しに入っていた。この3か月サイクルの戻りが7月10日高値で一巡して下落期入りしている可能性がある。
7月10日まで戻り幅は2.23円で、4月高値から6月25日への下げ幅5.64円に対して半値戻しに届かなかったが、その後の反落による下げ幅は15日午前時点で1.21円であり、戻り幅の半値を削っている。また日足の一目均衡表では遅行スパンがいったん実線を超えたものの再び悪化し、9日転換線を割り込んで26日基準線も割り込み始めている。これらは3か月サイクルレベルの戻りが一巡して下落再開に入っている可能性を示唆すると思われる。

(2)6月25日安値を割り込まないうちは米連銀の利下げスタンスや経済指標によっては7月10日高値を上抜き返す可能性が多少残る。その場合は4月からの下げに対する半値戻し109.57円から110円手前が上値目処となり、その後は戻り売りから下げ再開へ進みやすいと考える。
(3)108円を超えられないか一時的に超えても維持できないうちは一段安警戒とし、7月3日安値107.53円割れからは6月25日安値106.75円試しへ向かうとみるが、先行きは6月25日安値を割り込む一段安入りを想定する。その場合は概ね3か月周期の底打ちサイクルにおける次の安値形成期となる8月末から9月末にかけての間への下落と1月3日安値104.82円及び昨年3月26日安値104.63円のある104円台後半を目指すと想定する。(了)<9:00執筆>

【当面の中勢ポイント】

ドル円日足

【当面の主な予定】

7/16(火)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
17:30 (英) 6月 失業保険申請件数 (5月 2.32万件、予想 2.28万件)
17:30 (英) 6月 失業率 (5月 3.1%)
17:30 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 3.8%、予想 3.8%)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調済 (4月 153億ユーロ、予想 178億ユーロ))
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調前 (4月 157億ユーロ)
18:00 (独) 7月 ZEW景況指数(期待) (6月 -21.1、予想 -22.3)
21:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、発言
21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 -0.3%、予想 -0.7%)
21:30 (米) 6月 輸出物価指数 前月比 (5月 -0.2%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 6月 小売売上高 前月比 (5月 0.5%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 小売売上高・除自動車 前月比 (5月 0.5%、予想 0.1%)

22:15 (米) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.4%、予想 0.1%)
22:15 (米) 6月 設備稼働率 (5月 78.1%、予想 78.1%)
23:00 (米) 7月 NAHB住宅市場指数 (6月 64、予想 64)
23:00 (米) 5月 企業在庫 前月比 (4月 0.5%、予想 0.4%)
23:00 (世) ラガルドIMF専務理事、講演
25:20 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会
26:00 (米) パウエルFRB議長、仏中銀主催夕食会
28:30 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演

7/17(水)
先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)(仏シャンティイ、7月18日まで)
17:30 (英) 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.3%、予想 0.0%)
17:30 (英) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 2.0%、予想 2.0%)
17:30 (英) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 1.8%)
17:30 (英) 6月 小売物価指数 前月比 (5月 0.3%、予想 0.1%)
17:30 (英) 6月 小売物価指数 前年同月比 (5月 3.0%、予想 2.9%)
17:30 (英) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 2.0%、予想 1.7%)

18:00 (欧) 5月 建設支出 前月比 (4月 -0.8%)
18:00 (欧) 5月 建設支出 前年同月比 (4月 3.9%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価指数 改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 6月 消費者物価コア指数 改定値 前年同月比 (速報 1.1%、予想 1.1%)
21:30 (米) 6月 住宅着工件数・年率換算件数 (5月 126.9万件、予想 126.0万件)
21:30 (米) 6月 建設許可件数・年率換算件数 (5月 129.4万件、予想 130.0万件)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
モラー元米特別検察官がロシア疑惑めぐり公聴会で証言

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