ドル円見通し 議長証言からの急落分の半値を解消、株高・長期債利回り上昇で持ち直す(7/12)

ドル円は株高によるリスクオン心理での円安と米長期債利回り上昇による押し上げ効果で反発するという状況になった。

ドル円見通し 議長証言からの急落分の半値を解消、株高・長期債利回り上昇で持ち直す(7/12)

【概況】

7月10日夜のパウエル米連銀議長の下院議会証言及び11日未明のFOMC議事録により米連銀の早期利下げ期待が再燃したために10日高値108.98円から11日昼安値107.85円までドル円は急落した。この間の下げ幅は1.13円だったが、11日夜は持ち直して108.50円台へ切り返している。急落分の半値強を戻した状況だ。
7月11日夜にはパウエル議長が前日の下院証言に続いて上院で議会証言を行ったが、内容的には前日と変わらず、世界経済の減速や貿易摩擦をめぐるリスクにより早ければ7月末のFOMCで利下げに踏み切る可能性を改めて示唆した。材料的には前日に織り込んでいたため新たな動きには至らなかったが、利下げ期待が盛り上がる中でNYダウが前日に続いて史上最高値を更新して2万7000ドル台を突破した。株高による投資マネーのシフトにより米長期国債が売られ、米10年債利回りは前日比0.08%上昇の2.14%へ上昇、約1か月ぶりの高水準となった。

また6月の米消費者物価が予想を上回ったこともあり、ドルは持ち直しに入った。このためドル円は株高によるリスクオン心理での円安と米長期債利回り上昇による押し上げ効果で反発するという状況になった。

【利下げ期待→株高→債券安・長期債利回り上昇の矛盾】

7月11日は米連銀当局者の発言も相次いだ。ブレイナード理事はペンシルベニア州の講演で景気下振れリスクと低調なインフレを考慮すれば「予想される金融政策の方向が下がることは支持される」と述べて利下げ支持姿勢を示した。一方でアトランタ連銀のボスティック総裁(FOMCの投票権無し)は現在の金融政策は「良い位置にある」と述べ、利下げの必要はないと現状維持姿勢を示した。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は「どちらかと言えば年初よりも徐々に追加的な金融緩和の条件や根拠が強まっている」と述べてやや早期利下げ支持の姿勢を示した。

6月18-19日の前回FOMCではメンバーの政策金利変更予想については現状維持が8名、1回ないし2回の利下げ支持が8名だった。世界的な株安や景気後退が深刻化している中で対処療法的な利下げや量的緩和を拡大するのは景気持ち直しのための強烈なカンフル剤として有効だ。しかし、NYダウが史上最高値を更新するような状況下で先行き不安があるからといって利下げ期に入るという政策判断には、株高バブルを招くという批判が出易い。また11日の米国市場で見られたような株高が債券売りを招いて長期債利回りが上昇してしまうということも発生する。パウエル議長は米連銀の独立性を強調しているがトランプ大統領による利下げ要求も強いため、舵取りは難しいところだ。

【6月25日、7月3日、7月11日と底上げ】

7月11日の急落により、6月25日安値と7月3日安値を結んだ上昇トレンドの支持線を割り込んだ。この段階では上昇一巡による下げ再開感が強まったが、11日安値では7月3日安値割れを回避し、戻しとなったため、6月25日からの底上げパターンは維持された。また7月11日の日足は長い下ヒゲ=たくり足となっており、7月10日高値を当面の天井とした下落期入りという判断には待ったがかかったところと思う。逆に108.50円以上での推移が続く場合は7月10日高値試しとなり、高値更新からは6月25日を起点とした上昇波動が三段上げ型に発展する可能性も出てくると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月8日午後安値をサイクルボトムとして強気サイクル入りしていたが、10日夜からの反落により11日朝時点では7月10日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして11日の日中から15日にかけての間への下落を想定した。また前回ボトムの7月3日から3日目に入るので108.50円以上へ切り返す場合は強気サイクル入りの可能性を考えるとした。

12日未明の上昇で108.50円を超えてきているため、11日昼安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとする。トップ形成期は15日の日中から17日にかけての間と想定するが、トップ形成は短縮されるケースも多いので108.20円割れからは下げ再開注意とし、11日安値107.85円割れからは新たな弱気サイクル入りとして16日から18日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では11日夜の反騰で遅行スパンが好転し、先行スパンを上抜きつつある。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパンから転落する場合は下げ再開注意として遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は7月6日未明高値から三角持合い型を形成して下放れし、11日昼安値時には20ポイント割れまで急落したが、その後はV字反騰している。このため50ポイント台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は上昇継続余地ありとし、40ポイント割れからは下げ再開と考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.20円を下値支持線、108.70円を上値抵抗線とする。
(2)108.20円を上回るうちは108.70円超えから10日高値108.98円試しを想定する。利下げ観測を背景としているので109円前後では売り圧力も大きいと思われるため当初は10日高値とのダブルトップ形成から崩れやすいとみる。ただし109円乗せから続伸の場合は6月25日からの上昇継続として4月からの下落に対する半値戻し109.57円を目指してゆく流れとなる可能性を検討する。
(3)108.20円割れからは60分足の先行スパン転落となるため下げ再開の可能性を優先して11日安値107.85円試しとし、底割れからは一段安入りによりまず7月3日安値107.53円試し、さらに6月25日安値106.75円試しへと進んでゆくとみる。

【当面の主な予定】

7/12(金)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル建て (5月 416.5億ドル、予想 446.5億ドル)
未 定 (中) 6月 貿易収支・人民元建て (5月 2791.2億元、予想 2785億元)
06:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 2.3%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.8%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 1.6%)

18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.5%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -0.4%、予想 -1.6%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 1.8%、予想 1.6%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 2.3%、予想 2.2%)

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