ドル円見通し 議会証言・FOMC議事録から失速、6月25日からの戻り一巡か?(7/11)

7月10日の米下院金融サービス委員会におけるパウエル米連銀議長の証言では7月30-31日の次回FOMCで利下げに踏み切る期待が高まった。

ドル円見通し 議会証言・FOMC議事録から失速、6月25日からの戻り一巡か?(7/11)

ドル円見通し 議会証言・FOMC議事録から失速、6月25日からの戻り一巡か?

【概況】

ドル円は7月5日の米6月雇用統計が堅調な内容だったことから買われて7月1日高値を更新し、10日午前には108.98円まで続伸していた。6月25日安値106.75円への下落は米連銀による早期利下げ観測が強まったことによるドル売りが背景だったが、25日のパウエル議長やブラード総裁らの発言で早期利下げ期待がトーンダウンし、6月29日の米中首脳会談での貿易戦争休戦入りでリスク回避感が後退したことがその後の上昇要因であった。
市場は7月10日夜の米連銀パウエル議長による議会証言と11日未明のFOMC議事録要旨公開によって米連銀の利下げ姿勢の強弱を見定めようという状況にあったが、議会証言と議事録公開からは再び早期利下げ期待が強まってドル全面安となり、ドル円は109円に到達できないまま108円台前半へ急落した。

【議長証言と議事録で次回利下げ期待が再燃】

7月10日の米下院金融サービス委員会におけるパウエル米連銀議長の証言では「貿易摩擦をめぐる不透明感と世界経済の減速懸念が引き続き景気見通しの重石になっている」、「(貿易戦争の一時休戦は)不確実性を完全に払拭していない」、「やや緩和的な政策が必要な条件が整ってきた」と述べた。これらの発言により7月30-31日の次回FOMCで利下げに踏み切る期待が高まった。
7月11日未明に公開された6月18-19日のFOMC議事要旨でも、多くの参加者が「景気の重しが継続すれば近いうちの利下げが正当化される」としており、FOMCメンバーが早ければ7月利下げを想定していることが示された。

6月20日未明の前回FOMC声明発表と議長会見で早期利下げ期待が高まり、7月末FOMCでの0.5%利下げの可能性まで市場はやや過剰に期待し始めた。それが6月25日のセントルイス連銀ブラード総裁の「0.5%利下げは大幅過ぎる」との発言、パウエル議長が講演で利下げ時期の言及を避けたことからトーンダウンし、7月5日の米雇用統計で利下げ決定の先送り感も沸いた状況にあった。今回の議長証言と議事録により、市場心理としては6月20日未明時点の利下げ期待感を取り戻したと言える。
ただし、0.5%の利下げについてはまだ可能性は低いと受け止めているようで、NYダウは一時200ドル以上の上昇で最高値を更新したものの終値では76.71ドル高にとどまった。また米10年債利回りも小幅低下に止まった。
公開された議事録要旨のなかには、一部の参加者が「利下げの条件はまだ揃っていない」、「(利下げは)金融不均衡を増大させる」として資産バブルを招く恐れがあると主張していた。株高の中で利下げをどう正当化するのかという問題もあるだろうと思われる。

【6月25日と7月3日の安値を結ぶ支持線を割り込む】

7月11日午前の続落により、6月25日安値と7月3日安値を結ぶこの間の上昇トレンドの支持線を割り込んでいる。7月1日から7月3日への下げ幅は1.00円、6月21日深夜から6月25日への一段安幅が0.98円であり、1円前後の下落からそれらと同様に切り返す可能性もあるが、今回は6月25日から二段上げで上昇してきた後での支持線割れのため、6月25日からの戻りが一巡した可能性も警戒させる。
概ね10か月から1年周期のサイクルにおいて4月24日高値をサイクルトップとして下落期に入ってきた。1年サイクルを構成する3か月前後のサイクルにおいて、3月25日安値から3か月目となる6月25日安値から戻していたが、この戻りが一巡したとなれば、次の安値形成期となる8月末から9月末にかけての間へ下落継続しやすくなることも考えられる。
4月24日からの下落を三段下げ構成でみれば、5月13日までを一段目、6月25日までを二段目とし、7月10日で戻りを一巡させて三段下げの三段目に入るという可能性も考えられる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

7月11日午前の続落により、6月25日安値と7月3日安値を結ぶこの間の上昇トレンドの支持線を割り込んでいる。7月1日から7月3日への下げ幅は1.00円、6月21日深夜から6月25日への一段安幅が0.98円であり、1円前後の下落からそれらと同様に切り返す可能性もあるが、今回は6月25日から二段上げで上昇してきた後での支持線割れのため、6月25日からの戻りが一巡した可能性も警戒させる。
概ね10か月から1年周期のサイクルにおいて4月24日高値をサイクルトップとして下落期に入ってきた。1年サイクルを構成する3か月前後のサイクルにおいて、3月25日安値から3か月目となる6月25日安値から戻していたが、この戻りが一巡したとなれば、次の安値形成期となる8月末から9月末にかけての間へ下落継続しやすくなることも考えられる。
4月24日からの下落を三段下げ構成でみれば、5月13日までを一段目、6月25日までを二段目とし、7月10日で戻りを一巡させて三段下げの三段目に入るという可能性も考えられる。

60分足の一目均衡表では7月10日夜の急落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転の場合は強気転換注意とするが先行スパンが戻り抵抗となりやすいとみる。

60分足の相対力指数は7月6日未明高値から10日午前高値への上昇期に指数のピークが切り下がり、三角持合い型を形成していたが、10日夜の下落で三角持合い下放れとなった。30ポイント割れまで低下しているが、まだ強気逆行型が形成される状況には至っていないため、一段安警戒の姿と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108円を下値支持線、108.50円を上値抵抗線とする。
(2)108.50円を下回るうちは108円試しを想定する。108円割れを切り返せるかどうかが試されるが、108円割れをスルーで続落する場合は7月3日安値107.53円前後まで下値目処を引き下げる。
(3)108円前後からの反発では108.50円前後が抵抗となりやすいと思われるので、108.50円を一時的に超えても維持できない場合は108.20円割れから下げ再開とみる。新たな強気材料を伴って108.50円を超えて続伸の場合は強気転換注意として7月10日高値108.98円を試しにかかる流れを想定する。(了)<9:45>

【当面の主な予定】

7/11(木)
13:30 (日) 5月 第三次産業活動指数 前月比 ’(4月 0.8%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 6月 消費者物価指数 改定値 前月比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 6月 消費者物価指数 改定値 前年同月比 (速報 1.6%、予想 1.6%)
18:30 (英) 英中銀、金融安定報告書公表
20:30 (欧) ECB理事会議事要旨(6月5-6日分)

21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前月比] (5月 0.1%、予想 0.0%)
21:30 (米) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 1.8%、予想 1.6%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前月比 (5月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 2.0%、予想 2.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.1万件、予想 22.3万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.6万人)
24:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
25:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
25:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
26:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:00 (米) 6月 月次財政収支 (5月 2078億ドル、予想 -64億ドル)

7/12(金)
未 定 (中) 6月 貿易収支・米ドル建て (5月 416.5億ドル、予想 452.5億ドル)
未 定 (中) 6月 貿易収支・人民元建て (5月 2791.2億元、予想 2760億元)
06:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 2.3%)
13:30 (日) 5月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.8%)
13:30 (日) 5月 設備稼働率 前月比 (4月 1.6%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前月比 (4月 -0.5%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 5月 鉱工業生産 前年同月比 (4月 -0.4%、予想 -1.6%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前月比 (5月 0.1%、予想 0.1%)
21:30 (米) 6月 生産者物価指数 前年同月比 (5月 1.8%、予想 1.7%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前月比 (5月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 2.3%、予想 2.1%)

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