来週の為替相場見通し 『G20を前にした思惑から神経質に上下する展開か』(6/22朝)

世界経済の減速懸念、英国情勢の不安定化、イタリア財政悪化問題、米独関係悪化懸念、イランを巡る地政学的リスクなど、不安材料は山積みです。

来週の為替相場見通し 『G20を前にした思惑から神経質に上下する展開か』(6/22朝)

来週の為替相場見通し 『G20を前にした思惑から神経質に上下する展開か』

今週のレビュー(6/17−6/21)

今週のドル円相場は、@米6月ニューヨーク連銀製造業景気指数(結果▲8.6、予想11.0)の急低下や、Aハト派な米FOMCを受けたドル独歩安の流れ、B日銀の追加緩和見送りを受けた失望感、C米6月フィラデルフィア連銀製造業景気指数(結果0.3、予想11.0)の冴えない結果、D米国とイランを巡る地政学的リスクの高まり等を背景に、週末にかけて、約5ヶ月半ぶり安値となる107.05まで急落しました。米政府がイランへの報復攻撃を撤回したとの報道で一時持ち直す場面も見られましたが、107円台後半では戻り売り意欲も根強く、米商務省による中国のスーパーコンピューター製造企業5社への禁輸措置が報じられると再び反落。結局107.30台での越週となっております。

注目された米FOMCでは、@FF金利が2.25%ー2.50%に据え置かれたものの、セントルイス連銀ブラード総裁が「据え置き」に対して反対票を投じるサプライズが見られました(利下げを求める反対票は2015年末の利上げ開始以降で初めて)。また、A声明文では、「patient(辛抱強い)」の文言が削除された他、景気認識においても、「solid(堅調な)」との記述が「moderate(緩やかな)」に下方修正されました。BFOMCメンバーによる政策金利見通し(ドット・プロット)では、17人の政策当局者のうち、8人が年内利下げを予想した他(内、7人が年2回=50bpの利下げを予想)、C2019年および2020年の物価見通しの下方修正も見られました(2019年1.8%→1.5%、2020年2.0%→1.9%)。更に、DパウエルFRB議長は記者会見で、「世界経済の先行きにリスクが見られる」「多くの委員は利下げが適切だと認識」などハト派寄りの見解を示しました。上記@からDを市場は「ハト派的」と受け止め、年内3回の利下げを織り込む形で、ドル売りに拍車をかけました。この間、米10年債利回りは一時1.974%まで急低下するなど、2016年11月以来、約2年7ヶ月ぶり低水準を記録しております。

今週のユーロドル相場は、@ドラギECB総裁による「物価上昇率がインフレ目標に戻らなければ、利下げや資産購入など追加金融緩和を実施する可能性がある」とのハト派的な発言や、Aユーロ圏5月消費者物価指数(結果0.1%、予想0.2%)の予想比下振れ、Bドイツ6月ZEW景況感指数(結果▲21.1、予想▲5.6)の急低下、CドイツIFO経済研究所による2020年のドイツ経済成長率見通しの下方修正(1.8%→1.7%)を嫌気する形で、一時1.1181まで下落する場面も見られましたが、Dトランプ米大統領による「ユーロ安」を批判するツイートを受けて反発に転じると、Eハト派的な米FOMCを受けたドル売りや、Fドイツ6月製造業PMI(結果45.4、予想44.5)の良好な結果が支援材料となり、週末にかけては、3/22以来、約3ヶ月ぶり高値となる1.1378まで急伸するなど力強い動きが見られました。

来週の見通し(6/24−6/28)

ドル円相場は、@ダブルトップからの下放れ(チャートの青線)、A強い売りシグナルを表す一目均衡表・三役逆転、B41営業日連続でのボリンジャーバンドのミッドバンド割れなど、テクニカル的に見て「下落リスク」が強く意識されます。オシレータ系インジケーターのRSIなどにやや過熱感(売られ過ぎ感)が見られるものの、トレンドが明確に発生している状況下、安易な逆張り(ロング・エントリー)は危険と判断いたします。ファンダメンタルズ的に見ても、世界経済の減速懸念、英国情勢の不安定化、イタリア財政悪化問題、米独関係悪化懸念、イランを巡る地政学的リスクなど、不安材料は山積みです。

また、欧米を始め世界中の中央銀行がハト派色を鮮明に打ち出す一方、日銀が「事実上のゼロ回答(追加緩和の可能性を滲ませつつも、副作用を警戒して具体的な手段に踏み込めない)」を続けていることも、「日銀の金融政策手詰まり感→追加緩和限界論の台頭→日本とその他各国との金融政策格差の縮小」との連想から、ドル円の上値を抑制する一因となっております。

以上を踏まえ、当方では引き続き、「ドル安・円高」をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は6/28ー6/29にかけて大阪で開催されるG20サミットに注目が集まりそうです。米中貿易摩擦の解消を想起させ得る発言・ヘッドラインが見られれば、「リスク回避ムードの後退→円売り」の経路や、「米長期金利の持ち直し→ドル買い」の経路で、ドル円が一時的に反発するシナリオも想定されます。中長期的な「ドル安・円高」を想定しつつも、来週は週末に控えるG20を前にした思惑などから、安値圏でやや神経質に上下する展開を予想いたします。(ドル円の予想レンジ:106.00−108.50)

ユーロドル相場は、一目均衡表雲下限(1.1216)をサポートに下げ渋ると、週後半にかけて、一目均衡表基準線(1.1242)、90日移動平均線(1.1254)、一目均衡表転換線(1.1280)、一目均衡表雲上限(1.1280)を突破しました。週末には、心理的節目となる200日移動平均線(1.1352)の上抜けにも成功するなど、ユーロドルはテクニカル的にみて「上昇リスク」が強く意識されます。とはいえ、オシレータ系指標に過熱感(買われ過ぎ感)が出始めていることから、更なる続伸は容易では無いと考えられます。

@ECBによる根強い追加緩和観測、A米欧貿易摩擦を巡る警戒感、B米独関係の悪化懸念、C欧州経済を巡る先行き不透明感、Dユーロ圏の物価指標の伸び悩み、Eイタリアの財政悪化問題、F英国のハードブレグジット懸念など、ファンダメンタルズな不安材料を考慮すれば、ユーロドルの上値余地は乏しいと予想されます。6/24に予定されているドイツ6月Ifo景況指数や、6/27のドイツ6月消費者物価指数、6/28のユーロ圏6月消費者物価指数が冴えない結果となれば、「ユーロ圏経済の先行き不安・物価の低迷→ECBによる追加緩和観測高進→ユーロ売り」の波及経路で、ユーロドルが再び下落に転じるシナリオも想定されます。ハト派な米FOMCを受けたドル売りの流れはひとまず落ち着くと見られ、来週はユーロドル相場の反落リスクに警戒が必要でしょう。(ユーロドルの予想レンジ:1.1200−1.1450)

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ドル円日足

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