ドル円見通し FOMC待ちの持ち合いで3週目
【概況】
4月24日高値112.39円から5月13日安値109.02円へ下落後、5月21日高値110.67円まで戻してから一段安となり、6月4日安値で107.82円をつけたが、その後は丸2週間の持ち合いとなっている。5月末にかけての株安は一巡してNYダウは反転上昇したが、6月11日以降は上げ一服で揉み合い。一方で米長期債利回りの低下傾向は続いているものの米10年債利回りは6月7日に2.053%まで低下した後もほぼ横ばいのままであり、株高からの円安圧力も米長期債利回り低下からの円高圧力も共に一服であり、FOMCを前にして決め手に欠ける状況となっている。
ドル円は6月14日安値で108.15円まで下げた後はやや戻しており、17日夜には108.72円をつけたが、持ち合い中の高値である6月11日の108.79円には届かずにいる。18日夜からはFOMCも始まるので上値は抑えられやすい状況とすれば、FOMC声明発表前段階では持ち合いから抜け出せず、持ち合いの下限を試しやすい時間帯と思われる。
6月17日夜に発表された6月のニューヨーク連銀製造業景況指数が予想外に大幅に悪化した。 6月のニューヨーク州製造業景況指数はマイナス8.6となり5月の17.8から大幅に悪化、市場予想の11.0を下回った。低下幅は過去最大で、マイナスとなるのは2016年10月以来2年8カ月ぶり。6カ月先の見通しも25.7となり前月の30.6から低下した。NY連銀は「事業活動は急激に低下した」としている。米中通商摩擦の影響も考えられ、米連銀の利下げ判断に寄与するものと受け止められた。
米通商代表部(USTR)は中国からの輸入品ほぼすべてに追加関税を拡大する制裁関税「第4弾」についての公聴会を17日から開始した。公聴会は6月25日まで平日の7日間行われる。米中協議については、事務方協議も見られず、月末に行われるG20大阪サミットへの習近平主席の出席や米中首脳会談の予定も立っていない。
6月17日夜はNY連銀景況指数悪化の後にユーロが戻したが深夜からは反落している。ドイツ連銀は17日に公表した6月月報で、同国のGDP伸び率が2019年4〜6月期には小幅のマイナスに陥ると予測した。ユーロ圏の景気指標の悪化傾向、英国のEU離脱での「合意無き離脱」の懸念、イタリア財政問題等の悪材料も多く、ユーロは6月7日からは反落基調で推移している。また英ポンドは3月からの下落基調が続き18日未明へこの間の安値を更新している。豪ドルも1月末以降の安値を更新しており、メジャー通貨の加重平均であるドル指数は6月7日から上昇に転じている。
【FOMC待ち、年内数回の利下げ余地が生じるか?】
6月18-19日にFOMCが開催される。NYダウは昨年10月から12月へ暴落的に下げたがその後はV字反騰し、5月末への反落もその後に反発して史上最高値の近辺にある。株価からは利下げが必要な状況とも思えないが、米中通商摩擦の深刻化が徐々に米中両国及び欧州等の経済指標悪化にも影響が出始める中で米連銀が予防的な利下げという論理に傾斜している印象もある。また日銀やECBによるゼロ金利ないしマイナス金利政策の長期化のように米連銀も実質ゼロ金利ないしマイナス金利水準での景気下支えという政策スタンスへ向かい始めている印象もある。リーマンショック対策での異常な金融緩和終了による正常化プロセスとしての利上げは不要であり、それよりもインフレ低迷や通商摩擦リスクへの対処が優先されるべきという事かもしれない。そうしたスタンスはまたトランプ大統領の「利上げは必要なかった」とする姿勢とも一致する。
6月20日未明のFOMC声明文においての文言修正、メンバーによる金利水準予想、利上げないし利下げ予想回数等の提示、成長率やインフレ見通しが下方修正されるかどうか、議長会見で利下げへ傾斜したスタンスが示されるかどうか、見定める必要があるだろう。年内に複数回の利下げ余地ありということになればドル円の急落ということも警戒すべきかもしれない。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
6月4日以降や横ばいの持ち合いであるが、概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルで見れば、6月11日高値を前回のサイクルトップとして下落したが、6月7日夜安値から5日目となる14日夕安値で直近のサイクルボトムをつけて上昇期に入ったと思われる。今回のトップ形成期は11日夜高値を基準として14日夜から18日夜にかけての間と想定されるので、既にサイクルトップをつけて下落に転じやすい時間帯にあると思われる。108.50円を割り込んでも切り返す内は18日夜への上昇余地ありとみるが、18日夜以降は反落警戒とし、108.50円割れから続落の場合は弱気転換注意とし、14日安値割れからは弱気サイクル入りとして19日午後から21日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では17日夜高値から下落気味のために遅行スパンが悪化しつつある。先行スパンを上回っているが転落しやすい位置にある。このため先行スパンからの転落回避中は上昇余地ありとするが、先行スパン転落からは弱気サイクル入りの可能性を優先して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は17日の上昇場面で60ポイントを超えていたが持ち合い相場の範囲内のため70ポイントには到達できずに18日午前は50ポイント割れへ低下している。50ポイント台を回復してくるなら上昇再開余地ありだが、50ポイント以下での推移中は下向きとし、40ポイント割れからは下げが加速しやすいと注意する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、17日高値108.72円を抵抗線、108.40円を支持線とみておく。
(2)108.50円割れを切り返す内は上昇余地ありとし、108.72円超えの場合は11日高値108.79円、さらに109円手前を目指す可能性ありとするが、108.79円以上は反落警戒とし、その後の108.50円割れからは持ち合い下限を試す下落期入りと考える。
(3)108.40円割れからは持ち合い下限試しへ向かうと仮定し、まず14日安値108.15円試しとし、割り込む場合は6月4日及び5日の安値107.82円に迫るとみる。ただしFOMC前のため、108円割れはいったん買い戻しも入りやすいとみる。持ち合い放れはFOMC後からと考える。(了)<9:40執筆>
【当面の主な予定】
6/18(火)
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
トランプ米大統領、再選出馬を正式表明(フロリダ州オーランド)
10:30 (豪) 1-3月期住宅価格指数 前期比 (前期 -2.4%、予想 -2.6%)
10:30 (豪) 1-3月期住宅価格指数 前年同期比 (前期 -5.1%、予想 -6.9%)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調済 (3月 179億ユーロ、予想 170億ユーロ)
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調前 (3月 225億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数 改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数 改定値 前年同月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
18:00 (独) 6月 ZEW景況感・期待指数 (5月 -2.1、予想 -5.8))
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 年率換算件数 (4月 123.5万件、予想 124.0万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 年率換算件数 (4月 129.6万件、予想 129.3万件)
23:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、講演
6/19(水)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
07:45 (NZ) 1-3月期 四半期経常収支 (前期 -32.56億NZドル、予想 1.60億NZドル)
08:50 (日) 5月 通関・貿易統計 季調前 (4月 604億円、予想 −1兆2070億円)
08:50 (日) 5月 通関・貿易統計 季調済 (4月 -1109億円、予想 -8069億円)
17:00 (欧) 4月 経常収支 季調済 (3月 247億ユーロ)
17:00 (欧) 4月 経常収支 季調前 (3月 350億ユーロ)
17:30 (英) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.6%、予想 0.3%)
17:30 (英) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 2.1%、予想 2.0%)
17:30 (英) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 1.8%、予想 1.7%)
17:30 (英) 5月 小売物価指数 前月比 (4月 1.1%、予想 0.2%)
17:30 (英) 5月 小売物価指数 前年同月比 (4月 3.0%、予想 2.9%)
17:30 (英) 5月 生産者物価コア指数 前年同月比 (4月 2.2%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 -0.3%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 6.3%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、2日目、政策金利発表 (現行 2.25-2.50%、予想 2.25-2.50%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2019.06.18
ドル円、米FOMCを前に様子見ムード継続。米NY連銀製造業景気数は2016年10月以来の低水準(6/18朝)
17日の海外市場でドル円は上昇後に反落する展開。
-
みんなのFX トレイダーズ証券
みんなのFXはスワップもスプレッドも高水準!口座開設とお取引で最大1,010,000円キャッシュバックキャンペーン中!
取引は1,000通貨からOK、手数料も無料!eKYCで最短1時間後に取引可能
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。