ドル円見通し FOMC待ちの持ち合い中、一段安なら1月3日安値試しへ(週報6月第3週)

米中対立の長期化・深刻化、米連銀の年内利下げ見通し、ユーロ圏の景況感悪化基調、英国の「合意無きEU離脱」への懸念再燃がドル円への重しとなっている。

ドル円見通し FOMC待ちの持ち合い中、一段安なら1月3日安値試しへ(週報6月第3週)

ドル円見通し FOMC待ちの持ち合い中、一段安なら1月3日安値試しへ

【概況】

4月24日の上昇で3月5日高値をわずかに上抜いたが、その後の下落で両高値の谷間となる3月25日安値を割り込んでダブル天井型を形成した。5月13日安値から5月21日高値まで1.65円の戻りを入れたが5月31日の急落で5月13日安値を割り込み、4月24日からの下落は二段下げ型に発展している。6月4日安値107.82円まで続落した後は108円台前半を中心とした持ち合いにつかまり、先週もこのレンジ内での推移にとどまり、持ち合いは2週間となった。

米長期債利回り低下傾向が続いていることがドル円にとっての売り圧力となる中、6月3日から6月11日までは米国のメキシコに対する制裁関税発動回避による株高がドル円にとっての押し上げ要因だったが、その後は株高も一服したために持ち合い上放れへ進むきっかけを得られなかった。
6月14日はユーロやポンドが急落したためにドル高感がやや強まってドル円も戻したが持ち合いの範囲での小反発というレベルにとどまった。米中対立の長期化・深刻化、米連銀の年内利下げ見通し、ユーロ圏の景況感悪化基調、英国の「合意無きEU離脱」への懸念再燃がドル円への重しとなっている。

【米中対立の影響広がる】

中国の景気鈍化傾向も目立った。6月12日に発表された中国の5月消費者物価は前年同月比2.7%、4月の2.5%からは若干改善したものの、生産者物価は0.6%にとどまって4月の0.9%から鈍化した。6月14日に発表された5月の中国鉱工業生産は前年同月比5.0%増で前月の5.4%から鈍化して2002年2月以来の低水準となった。このうち自動車生産は4.7%減と悪化が目立っており、米中貿易摩擦の影響が拡大している印象が強まった。5月の小売は前年同月比8.6%増だったが、1月から5月までの都市部固定資産投資が前年同期比5.6%増で前月から0.5%悪化している。
トランプ米大統領は米中協議について14日のテレビインタビューで「様子を見たいが、最終的にはディールを行う」と合意希望を示したものの、6月末の大阪G20で米中首脳会談が実現しなくても構わないと述べている。米中協議の事務方協議は現在行われておらず、中国外務省はG20及び米中首脳会談への習主席の予定を示していないため、6月中の米中合意の可能性は薄れて、解決への長期化懸念が強まっている。

5月末から反発してきたユーロとポンドは14日夜に急落した。ユーロ圏財務相会合のセンテノ議長が14日の会合後にイタリアに対する「過剰財政赤字是正手続き」を開始すべきだとした欧州委員会の判断をユーログループとして支持したことを表明したことや、メイ英首相の後任を決める与党・保守党の党首選の第1回投票で強硬離脱派のジョンソン前外相が首位となったために「合意無き離脱」の可能性が高まったことが響いている。
ユーロやポンドの反落はドル円にとってもドル高要因ではあるが、それ以上にユーロ円やポンド円の下落感が強まり、クロス円全般での円高を助長しやすい。

【米長期債利回り低下で株高に反応できず】

昨年来のドル円はNYダウを中心とした株高株安と概ね同調して推移してきた。
NYダウは昨年10月3日天井から12月26日まで暴落的に下げ、その後はV字反騰で4月23日に10月3日高値へあと一歩まで迫ったが、そこで戻り一巡となって下落に入った。5月13日安値から小反発した後の一段安で6月3日に安値を付けている。
ドル円も昨年10月4日天井から下落に転じ、1月3日へ暴落的に下落してからは4月24日まで戻してきた。その後の5月13日への下落、5月末の一段安はNYダウの流れと一致しているが、NYダウが6月3日から6月11日までは直前の下げ幅の半値以上の反騰となったのに対して、ドル円はほぼ6月11日に持ち合い中の高値を付けたものの、ほぼ横ばい程度の持ち合いにとどまり、NYダウ反騰とは対照的な動きとなった。株高に対するかなり慎重な姿勢といえる。

株高ならリスクオン心理でクロス円の上昇=円安となるべきところだが、今回はその間も米長期債利回りの低下が続いたために金利差面でのドル売り円買い圧力が重なったために株高に対する素直な円安反応へ進めなかったというところだろう。
その米長期債利回り低下は米連銀の年内利下げ観測によるものだ。米10年債利回りは6月13日に2.09%まで低下した。14日は米経済指標が強めでユーロやポンドが急落したものの2.08%まで切り下がった。14日の3か月物TBレートは2.1759%で10年債利回りが3か月物TBレートを下回る逆イールドは16日連続となっている。
10年債利回りは2018年1月には3.14%だったが、その後は段階的に低下傾向を続けており2017年9月以来の低水準となっている。日本10年債利回りはほぼ横ばいから若干の低下であり、米10年債利回りの低下による日米金利差の縮小がそのまま円高ドル安圧力となっている。

6月18−19日のFOMCも迫っている。米連銀は昨年末時点では利上げ継続姿勢だったが3月以降は年内の利上げを断念して利下げの可能性を探る姿勢へと変化してきた。米連銀は日銀よりも独立性が高いものの、トランプ大統領の相次ぐ連銀批判も影響していると思われる。トランプ大統領は14日のFOXニュースインタビューでも「パウエル議長は間違いを犯した」と述べ、ABCテレビインタビューでも「議長は私が指名したが彼に全く同意しない」「インフレがない状況で利上げをするのはおかしい」と批判している。
米連銀が今回の会合で利下げを決断する確率はかなり低いものの、短期金利先物市場から逆算される7月会合での利下げ確率は66.8%となっている。FOMC声明及び議長会見で7月会合での利上げ確率が上がるような内容になるのか、しばらく静観する姿勢となるのかによってドル円も現状の持ち合いから上下いずれかへ放れるきっかけを得るのだろうと思われる。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

(1)6月4日以降は108円台前半を中心とした持ち合いであり、6月4日と5日、7日の108円割れは買い戻され、6月14日も安値は108.15円にとどまった。6月11日高値108.79円まで戻り高値が若干切り上がり気味に推移したがその後は新たな高値更新へ進めずにいる。この持ち合いから上下いずれへ抜けるのかにより、次のトレンドが決まってくるのだろうと思われるが、市場全般も同様にこの膠着状態からの離脱に乗ろうと構えているのだろうと思われる。
(2)FOMC声明及び議長会見前段階では、6月11日高値108.79円から109円までを上値抵抗帯とし、108.00円から107.80円までを下値支持帯とみる。
(3)FOMCから上昇反応となる場合、109円超えからは109.50円前後への上昇を想定するが、年内利下げ確率が大幅に低下しないなら短期的な戻りにとどまる可能性があるとみて108.50円割れからの下げ再開を想定する。
(4)FOMCから一段安入りの場合、107.30円から107.00円、次いで106.00円台中盤を目指す流れを想定する。先行きは1月底を目指すと考える。(了)<16日16:50執筆>

【6月17日から22日までの主な予定】

6/17(月)
休 場 (南)
米通商代表部(USTR)、中国への制裁関税計画についての公聴会
ECBフォーラム、ドラギ総裁開会演説(6月19日まで、ポルトガル)
EU外相理事会(ルクセンブルク)
21:30 (米) 6月 ニューヨーク連銀製造業景気指数 (5月 17.8、予想 12.0)
23:00 (米) 6月 NAHB住宅市場指数 (5月 66、予想 67)
26:00 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、発言 

6/18(火)
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
トランプ米大統領、再選出馬を正式表明(フロリダ州オーランド)
10:30 (豪) 1-3月期住宅価格指数 前期比 (前期 -2.4%、予想 -2.6%))
10:30 (豪) 1-3月期住宅価格指数 前年同期比 (前期 -5.1%、予想 -6.9%))
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)、金融政策会合議事要旨公表
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調済 (3月 179億ユーロ、予想 163億ユーロ))
18:00 (欧) 4月 貿易収支・季調前 (3月 225億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数 改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価コア指数 改定値 前年同月比 (速報 0.8%、予想 0.8%)
18:00 (独) 6月 ZEW景況感・期待指数 (5月 -2.1、予想 -5.8))
21:30 (米) 5月 住宅着工件数 年率換算件数 (4月 123.5万件、予想 123.7万件)
21:30 (米) 5月 建設許可件数 年率換算件数 (4月 129.6万件、予想 129.0万件)
23:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、講演

6/19(水)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
07:45 (NZ) 1-3月期 四半期経常収支 (前期 -32.56億NZドル、予想 1.60億NZドル)
08:50 (日) 5月 通関・貿易統計 季調前 (4月 604億円、予想 −1兆2070億円))
08:50 (日) 5月 通関・貿易統計 季調済 (4月 -1109億円、予想 -8069億円)
17:00 (欧) 4月 経常収支 季調済 (3月 247億ユーロ)
17:00 (欧) 4月 経常収支 季調前 (3月 350億ユーロ)
17:30 (英) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.6%、予想 0.3%)
17:30 (英) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 2.1%、予想 2.0%)
17:30 (英) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 1.8%、予想 1.7%)
17:30 (英) 5月 小売物価指数 前月比 (4月 1.1%、予想 0.2%)
17:30 (英) 5月 小売物価指数 前年同月比 (4月 3.0%、予想 2.9%)
17:30 (英) 5月 生産者物価コア指数 前年同月比 (4月 2.2%、予想 2.0%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前月比 (3月 -0.3%)
18:00 (欧) 4月 建設支出 前年同月比 (3月 6.3%)

27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、2日目、政策金利発表 (現行 2.25-2.50%、予想 2.25-2.50%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

6/20(木)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
EU首脳会議(6月21日まで)
07:45 (NZ) 1-3月期GDP 前期比 (前期 0.6%、予想 0.6%)
07:45 (NZ) 1-3月期GDP 前年同期比 (前期 2.3%、予想 2.4%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
17:30 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前月比 (4月 -0.2%、予想 -0.5%)
17:30 (英) 5月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (4月 4.9%、予想 2.4%)
17:30 (英) 5月 小売売上高 前月比 (4月 0.0%、予想 -0.5%)
17:30 (英) 5月 小売売上高 前年同月比 (4月 5.2%、予想 2.7%)

20:00 (英) イングランド銀行(BOE)政策金利発表 (現行 0.75%、予想 0.75%)
20:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 4350億ポンド)
20:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
21:30 (米) 1-3月期 四半期経常収支 (前期 -1344億ドル、予想 -1250億ドル)
21:30 (米) 6月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (5月 16.6、予想 10.5)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 169.5万人、予想 168.0万人)
23:00 (米) 5月 景気先行指数 前月比 (4月 0.2%、予想 0.1%)
23:00 (欧) 6月 消費者信頼感 速報 (5月 -6.5、予想 -6.5)

6/21(金)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.7%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.7%)
08:30 (日) 5月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (4月 0.6%、予想 0.5%)
16:30 (独) 6月 製造業PMI 速報値 (5月 44.3、予想 44.6)
16:30 (独) 6月 サービス業PMI 速報値 (5月 55.4、予想 55.3)
17:00 (欧) 6月 製造業PMI 速報値 (5月 47.7、予想 48.0)
17:00 (欧) 6月 サービス業PMI 速報値 (5月 52.9、予想 53.0)
22:45 (米) 6月 製造業PMI 速報値 (5月 50.5、予想 50.5)
22:45 (米) 6月 サービス業PMI 速報値 (5月 50.9、予想 51.0)
23:00 (米) 5月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (4月 519万件、予想 525万件)
25:00 (米)ブレイナードFRB理事、メスター・クリーブランド連銀総裁、イベント参加
28:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、ポッドキャスト主催

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