ドル円見通し 6月4日以降は戻り高値をわずかに切り上げてきたがまだ持ち合いの範囲(6/12)

株高一服と米長期債利回り低下傾向の継続はドル円の上値を抑える。株安が再燃すると利下げ催促となりドル円が一段安してゆくトリガーとなりかねない。

ドル円見通し 6月4日以降は戻り高値をわずかに切り上げてきたがまだ持ち合いの範囲(6/12)

ドル円見通し 6月4日以降は戻り高値をわずかに切り上げてきたがまだ持ち合いの範囲

【概況】

5月31日に109円を割り込む急落となったのは米国によるメキシコへの制裁関税発動問題だった。リスク回避感が強まる中で6月4日には107.82円まで続落したが、その後はメキシコ問題への楽観見通しや米連銀の年内利下げ期待からNYダウが連騰に入り、ドル円もリスク回避による円高感の後退と利下げ期待によるドル安との板挟みながらも日々の戻り高値をわずかに切り上げながら下げ渋ってきた。
6月7日夜の米雇用統計で非農業部門就業者数がわずか7.5万人増に止まったことで米連銀による年内利下げの可能性がさらに高まったとしてドル円は107.88円まで再び反落したが、6月4日と5日の安値107.82円割れを回避し、メキシコへの制裁関税発動回避決定により10日夕高値108.71円、11日夜高値108.79円と戻り高値を若干ずつ切り上げてきた。しかし、メキシコ問題はひとまず解決したが、肝心の米中対立問題はまだ楽観できないこと、米連銀の利下げ観測を背景とした米長期債利回りの低下、長短金利逆転現象の継続はドル円の上値を抑えるため、当面の安値を出し切っての反騰入りという勢いに欠ける状況にとどまっている。

【米中問題とドル安所望のトランプ発言がドル円の上値を抑える】

中国国務院が特別債による資金調達で地方政府のインフラ投資をてこ入れすると中国国営メディアが報じたことが中国の景気刺激策として株式市場で好感された。上海総合株価指数は11日に前日比2.5%高と大幅上昇した。ダウ先物も日中上昇し、NYダウも当初は180ドルを超える上昇となったが、米中対立問題に関してトランプ大統領が「(協議が難航しているのは)中国が合意を覆したためだ」「良い内容でなければ合意しない」と述べたため、G20開催での米中首脳会談による合意への期待が後退してダウの上昇も続かなかった。米中問題の不透明感はドル円の上値を抑えている。
米10年債利回りの11日は前日比0.01%低下の2.14%。3か月物TB(財務省証券)利回りは0.0131%低下の2.2662%で3か月物TB利回りが10年債利回りを上回る「長短金利逆転(逆イールド)」は13営業日連続となった。逆イールドは景気後退のサインともされ、米連銀に対しては短期金利を引き下げるための利下げ圧力となる。

トランプ米大統領はまたユーロ安を批判した。「ユーロ安が米国を非常に不利な状況に追い込んでいる」「米連銀の政策金利は高すぎる」と述べて米連銀への利下げ要求を強めている。欧州中銀(ECB)が6月6日の理事会で2020年6月末までの金利据え置きを決定したのに対して、米連銀は年内利下げ余地を探る姿勢となり、金融政策の温度差からユーロは対ドルで5月末からの上昇基調を維持しているが、昨年2月からの長期的なユーロ安ドル高基調は継続している。米連銀は6月18日と19日にFOMCを開催するが利下げの可能性も検討されるのではないかとみられる。
株高一服と米長期債利回り低下傾向の継続はドル円の上値を抑える。株安が再燃すると利下げ催促となりドル円が一段安してゆくトリガーとなりかねない。ひとまずは円高一服状態にはあるが、反騰入りという勢いには欠けるという印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月4日午後と5日夜の両安値をダブル底とした強気サイクル入りとして10日から12日にかけての間への上昇を想定してきたが、持ち合いによる往来が続いたために、11日朝時点では直近のサイクルボトムを7日夜安値として12日から14日にかけての間へ上昇期が延長される可能性と、7日夜安値割れからの弱気サイクル入りにより12日夜から14日夜にかけての間への下落へ向かう可能性があるとした。
11日夜の上昇で10日高値をわずかに超えている。その後の反落でも11日午前安値割れには至っていない。このため、11日午前安値108.32円割れ回避のうちは上昇余地ありとするが、11日午前安値割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して7日夜安値試しとし、底割れからは弱気サイクル入りとして12日夜から14日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では持ち合い中のために遅行スパンは実線と交錯を繰り返して方向感に欠けるが、10日午前からは先行スパンを上抜いた状況を維持している。このため先行スパンからの転落回避中は高値を試す余地ありとし、先行スパン転落からは下げ再開と仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は10日夕高値から11日夜への高値切り上げに対して指数のピークが切り下がって弱気逆行型となっている。このため40ポイント台を維持するうちは上昇再開余地ありとするが、40ポイント割れへ下降するところからは下落再開へ進みやすいところとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.30円を下値支持線、11日夜高値108.79円を上値抵抗線とみておく。
(2)108.30円を割り込まない内は上昇余地ありとし、11日夜高値超えからは109円を試すとみるが、109円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし108.50円以上での推移なら13日の日中も高値を試す可能性ありとする。
(3)108.30円割れからは先行スパンからの転落も伴うため下げ再開の可能性を優先して7日安値1107.88円、5日夜安値107.82円試しへ向かうとみる。107.80円前後ではいったん買い戻しも入る可能性があるが、107.80円割れから続落なら6月4日以降の持合い下放れとしてまず107.50円前後、さらに107.25円から107.00円のゾーンを目指す下落を想定する。また108.30円以下での推移なら13日の日中も安値を試しやすいとみる。(了)<9:10執筆>

【当面の主な予定】

6/12(水)
09:30 (豪) 6月 ウエストパック消費者信頼感指数 (5月 101.3)
10:30 (中) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 2.5%、予想 2.7%)
10:30 (中) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.6%)
17:15 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、講演(フランクフルト)
20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 24.00%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 2.0%、予想 1.9%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 2.1%、予想 2.1%)
27:00 (米) 5月 月次財政収支 (4月 1603億ドル、予想 -1855億ドル)

6/13(木)
08:50 (日) 4-6月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (前期 -1.7)
08:50 (日) 4-6月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (前期 -7.3)
10:30 (豪) 5月 新規雇用者数 (4月 2.84万人、予想 1.60万人)
10:30 (豪) 5月 失業率 (4月 5.2%、予想 5.1%)
13:30 (日) 4月 第三次産業活動指数 前月比 (3月 -0.4%、予想 0.4%)
15:00 (独) 5月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
15:00 (独) 5月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.4%、予想 1.4%)
16:30 (ス) スイス国立銀行 3か月物銀行間金利誘導目標 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -0.3%、予想 -0.4%)
18:00 (欧) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -0.6%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 5月 輸入物価指数 前月比 (4月 0.2%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 5月 輸出物価指数 前月比 (4月 0.2%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.8万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 168.2万人)

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