ドル円見通し 戻り高値やや切り上げのレンジ拡張型持ち合い続く(6/11)

メキシコへの制裁関税発動が棚上げされたことで米中対立からさらに世界的な通商対立が拡大してゆく懸念のひとつは解消されたが、肝心の米中対立は解決が見えない

ドル円見通し 戻り高値やや切り上げのレンジ拡張型持ち合い続く(6/11)

【概況】

先週末の6月7日は5月米雇用統計での非農業部門就業者数がわずか7.5万人増に止まったことで、米連銀による年内利下げの可能性が高まったとして米長期債利回りが低下。ドル全面安となりドル円も直前高値108.61円から107.88円まで急落したが、6月4日午後及び5日夜の安値107.82円割れには至らなかった。雇用の伸びが大幅鈍化したマイナス面よりも、利下げによる景気浮揚期待からNYダウが5連騰したことによるリスク回避感後退がドル円の下値を支えた格好だった。

週末の取引終了後に、不法移民問題で対立していた米国とメキシコが合意に至り、米国によるメキシコへの制裁関税発動が見送られることとなった。そのため週明けはリスクオン心理が拡大、株高が進んでドル円も夕刻には108.71円まで戻した。しかし、米国とメキシコ間の問題はひとまず棚上げとなったものの、肝心の米中問題では先行きが見えないこと、利下げ期待で株高となれば株安不安による利下げ判断も先送りされるというジレンマもある。ダウは高値から150ドル近く反落して日足は上ヒゲを残し、ドル円も夕刻高値の後は伸びずに108.50円以下までやや下げている。

【米中問題と米連銀FOMC】

メキシコへの制裁関税発動が棚上げされたことで、米中対立からさらに世界的な通商対立が拡大してゆく懸念のひとつは解消されたが、肝心の米中対立は解決が見えない。トランプ米大統領は10日の米CNBCテレビとのインタビューで「今月下旬のG20首脳会議の際に米中首脳会談が実現しなければ、直ちに中国からの輸入品ほぼすべてに追加関税を拡大することになる」旨を語っている。
このインタビューでトランプ大統領は中国の通貨安誘導を批判する一方で、「米連銀の金融政策が人民元安をもたらし中国を有利にしてきた側面もある」「昨年12月の米利上げは極めて破壊的だった」と述べており、米連銀への利下げ圧力を高めている。

米連銀は6月18日から19日にかけてFOMC(連邦公開市場委員会)を開く。6月3日にはブラード・セントルイス連銀総裁が「利下げが近く正当化される」旨を発言し、4日のパウエル議長も講演で利下げ検討姿勢に言及したため、FOMCにおいて利下げの可能性についても議論される見込みと思われる。そこで利下げへの積極姿勢が見られればドル安円高へ進みやすくなるだろうが、時期尚早として積極姿勢を示さないものとなれば市場の期待も後退してドル高がぶり返す可能性もあるところだ。暫くはFOMCへ向けた観測記事にも注意が要る。

【高値をやや切り上げてのレンジ拡張型持ち合い範囲】

6月4日へ一段安した後は、戻り高値は4日深夜108.35円、6日未明108.48円、7日夜108.61円と若干の切り上がりとなってきた。10日夕刻も108.71円まで戻したが、その後は失速気味となっている。一方で安値は6月4日と5日の107.82円、7日夜の107.88円とほぼフラットで推移してきた。このため、60分足チャートでは高値切り上がりで支持線フラットのレンジ拡張型の持ち合いとなっている。
5月30日夜高値から6月4日安値への下落幅は2.10円であり、その半値は108.87円だが、6月10日時点ではこの水準に届いていない。また5月22日の戻り高値から6月4日への下落幅は2.85円であり、その3分の1戻しは108.77円だが、この水準にも届かずにいる。これらの水準をクリアしてくれば、まず5月22日夜からの下げ幅に対する半値戻し109.245円、さらに5月30日夜高値109.92円等まで戻り目標も切り上がってくるかもしれないが、6月4日以降の戻り高値切り上がり角度に収まっている内は109円に届かない程度までの戻りから下落期に転じる可能性が残る。

レンジ拡張型の持ち合いも既に丸5日を経過しているので、そろそろ持ち合いを上下いずれかへ放れやすい時間帯に入る。次の108円割れからは下放れ警戒として107.82円試しとし、さらに続落するところからは一段安開始として、持ち合い幅の倍返しで107円前後を目指す可能性も高まると注意する。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月4日午後と5日夜の両安値をダブル底とした強気サイクル入りとして10日から12日にかけての間への上昇を想定してきた。持ち合いによる往来が続いているので、サイクルの採り方もいくつか可能性がある。直近のサイクルボトムを7日夜安値とすれば、12日から14日にかけての間へ上昇期が延長され、7日夜安値割れからは12日夜から14日夜にかけての間へと安値形成期が延びる可能性もある。このため、10日夕高値超えからは上昇継続と仮定して11日夜から12日の日中、さらに13日へ上昇継続しやすくなると考え、持ち合い中安値の6月5日夜安値割れからは新たな弱気サイクル入りによる下落期入りとして12日夜から14日夜にかけての間への下落継続と仮定する。

60分足の一目均衡表では持ち合い中のために遅行スパンは実線と交錯しやすく方向感に欠ける。また先行スパン突破と転落も繰り返されている。このため10日夕高値超えからは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパン転落からは下げ再開注意として遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は40ポイント台へ低下しているので10日高値でピークをつけた可能性がある。40ポイント以下へさらに低下の場合は下げ再開の可能性を優先して30ポイント割れを目指すとみる。反発の場合は60ポイント台では再び戻り売りにつかまりやすくなるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.20円を下値支持線、10日高値108.71円を上値抵抗線とみておく。
(2)108.20円を割り込まないか、一時的に割り込んでも切り返す内は上昇余地ありとし、10日高値超えからは109円を試すとみるが、109円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし108.50円以上での推移なら12日の日中も高値を試す可能性ありとする。
(3)108.20円割れからは下げ再開の可能性を優先して7日安値107.88円、5日夜安値107.82円試しへ向かうとみる。両安値をわずかに割り込んでも108.20円以上へ切り返す場合は、レンジ拡張型持ち合いの継続によるリバンドと推定、108.50円以上を目指す流れとみる。安値更新から続落の場合は持合い下放れとしてまず107.50円前後、さらに107.25円から107.00円のゾーンを目指す下落を想定する。また108円以下での推移なら12日の日中も安値を試しやすいとみる。

【当面の主な予定】

6/11(火)
10:30 (豪) 5月 NAB企業景況感指数 (4月 3)
17:30 (英) 5月 失業保険申請件数 (4月 2.47万件、予想 2.29万件)
17:30 (英) 5月 失業率 (4月 3.0%)
17:30 (英) 4月 失業率・ILO方式 (3月 3.8%、予想 3.8%)
21:30 (米) 5月 生産者物価指数 前月比 (4月 0.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 2.2%、予想 2.0%)
21:30 (米) 5月 生産者物価コア指数 前月比 (4月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 生産者物価コア指数 前年同月比 (4月 2.4%、予想 2.3%)

6/12(水)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前月比 (4月 0.3%、予想 0.0%)
08:50 (日) 5月 国内企業物価指数 前年同月比 (4月 1.2%、予想 0.7%)
08:50 (日) 4月 機械受注 前月比 (3月 3.8%、予想 -0.2%)
08:50 (日) 4月 機械受注 前年同月比 (3月 -0.7%、予想 -4.5%)
09:30 (豪) 6月 ウエストパック消費者信頼感指数 (5月 101.3)
10:30 (中) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 2.5%、予想 2.7%)
10:30 (中) 5月 生産者物価指数 前年同月比 (4月 0.9%、予想 0.6%)
17:15 (欧) ドラギ欧州中銀(ECB)総裁、講演(フランクフルト)

20:00 (ト) トルコ中銀、政策金利 (現行 24.00%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前月比 (4月 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 5月 消費者物価指数 前年同月比 (4月 2.0%、予想 1.9%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前月比 (4月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 5月 消費者物価コア指数 前年同月比 (4月 2.1%、予想 2.1%)
27:00 (米) 5月 月次財政収支 (4月 1603億ドル)

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