今週の週間見通し
先週のドル円は108円台前半を中心として、108円割れは買い、108円台半ばは売りという動きを繰り返しました。週末に対メキシコ関税は無期限で延期というニュースは入ってきたものの、金曜の引けまではメキシコ関税の行方と弱い米国経済指標に注目が集まりました。水曜のADPも金曜のNFPも最近にしては珍しく予想を大きく下回る弱い数字となりましたが、米国の雇用状況自体が完全雇用に近く、単月の弱い数字だけでは流れが決まるというほどのものでもありません。
またメキシコ関税は不法移民対策での合意を受け回避されたものの、これまでのトランプ大統領のパターンから考えると対策の実効性が少ないと見れば改めて関税延期取りやめと発言するであろうことは容易に想像がつきます。また週末のG20では世界的な景気の下方リスクにも言及され、特に米中間の通商協議が合意に至らない現状ではとてもリスクオンに動くことはできません。
米国株は月初の安値からかなり反発してきてはいますが、短期的には金利低下が株高に繋がっていると見ることが出来、裏を返せば米国債買いの動きが続いているため、リスクオフとリスクオンとが混在している状況にあると言えます。そして金価格は先週のFX羅針盤でのコラムにも書いた通り、高値圏にあり全体として見るとリスクオフの懸念から市場参加者は抜けだしていないと見るべきでしょう。
今週はFX羅針盤で時折紹介している米国10年債の利回り、週足チャートから見ていきます。
先週は2.053%まで低下したことで、ターゲットとして示していた2016年と2018年の61.8%押しの水準にまで到達しました。テクニカルにはいったん落ち着きどころと考えることもできますが、2017年の2.034%まで至近距離にあり、また同水準を下回るとテクニカルには一段の金利低下(債券買い)へと繋がる可能性があり、当面目が離せない状況になっています。
またFRB関係者の一部が将来的な利下げに言及するようになってきたことで、12月FOMC時点における利下げ織り込み度もかなり上昇してきています。CMEが発表するFF先物の取引状況によると12月FOMC時点では98%が利下げを見込んでいて、更に83%は2回(50bp)以上の利下げを見込んでいます。最初の利下げ織り込み度が50%を超えるのは既に来月7月FOMC時点にまで前倒しされているというのが現時点での状況です。
こうしたことを考えるとこの利下げ思惑が株式市場にとっては買い材料、為替市場にとってはドル売り材料とされる流れは当面続きそうですが、最大の懸念材料である米中通商協議の進展如何では株式市場とて安心はできず、米国債のみが買われる事態も可能性としては考えておかなくてはならないと思っています。
今週は一連のイベントも通過したこと、また短期的には108円台前半が居心地が良い水準となっているため、どちらかに大きく動く材料が出てくるとも思えません。
テクニカルな観点から見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
4月高値からの下降チャンネル内での動きは続けているものの、5月安値を下回っても大きな下げには繋がらず先週は107.80/85水準のドル買いオーダーで止められた格好となっています。年初来安値と高値の61.8%押しが107.76となっていることも、いったんターゲットへの達成感があった言えるでしょう。
しかし、金曜の雇用統計前の高値も今朝の早朝高値も108.60水準となっていて、108円台半ばから109円にかけてはドル売りオーダーも並んでいる様子がうかがえます。5月末に下抜けた5月13日安値109.02レベルは当面の戻りの限界点と見てよく、下降チャンネルの上限も今週金曜には同水準へと下げってきていることがわかります。
今週もテクニカルには108円台前半を中心としたもみあいを継続しやすいため、108.80レベルをレジスタンスに107.80レベルをサポートとする流れを見ておきます。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
6月10日(月)
**:** シドニー、フランクフルト市場休場
08:50 本邦1〜3月期GDP改定値
08:50 本邦4月貿易収支(国際収支)
**:** 中国5月貿易収支
17:30 英国4月GDP
17:30 英国4月貿易収支
17:30 英国4月鉱工業生産
6月11日(火)
07:45 NZ1〜3月期製造業売上高
10:30 豪州5月NAB企業景況感
17:30 英国5月失業率
21:30 米国5月PPI
6月12日(水)
09:30 豪州6月WBC消費者信頼感
10:30 中国5月CPI
17:15 ドラギECB総裁講演
20:00 トルコ中銀政策金利発表
20:00 南ア4月小売売上高
21:30 米国5月CPI
23:30 週間原油在庫統計
6月13日(木)
10:30 豪州5月失業率
15:00 ドイツ5月CPI
16:30 スイス中銀政策金利発表
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産
19:00 南ア4〜6月期企業信頼感
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国5月輸入物価指数
6月14日(金)
11:00 中国5月小売売上高
15:45 フランス5月CPI
16:00 トルコ4月経常収支
21:30 米国5月小売売上高
21:55 カーニー英中銀総裁講演
22:15 米国5月設備稼働率
23:00 米国6月ミシガン大消費者信頼感速報値
23:00 米国4月企業在庫
前週の主要レート(週間レンジ)
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月3日(月)
ドル円は東京前場こそ前日の流れを受け売りが先行しましたが、108円をトライしきれず株価の反発も手伝って後場以降NY市場までは買い戻しの動きが目立ちました。しかし108円台半ばに売りオーダーが下がってきていること、ユーロドルが大きく買い戻されたことから再びドル売りの動きとなり107.88レベルまで下落、引けにかけては108円台に戻しての引けとなりました。
6月4日(火)
東京時間のドル円は上値の重たい展開が続き、前日安値をわずかに更新し107.85レベルをつけました。同水準は何度か試したもののドル買いオーダーも入っていたことから徐々に底固くなり、海外市場に移ってからは強い株式市場に引っ張られる形で短期筋の買い戻しを誘い、中国やメキシコから米国との協議が前進する可能性があるという発言も出て、NY市場では108.36レベルまで戻しました。しかし、上がったところでは売りたい向きも多い様子で引けにかけては下押しの動きが見られました。
6月5日(水)
ドル円はNY市場までは底堅い動きを続けました。東京後場に一時的に107円台に入り込んだ際もドル買いオーダーによって反発、NY市場朝方には108.39レベルをつけましたがADP全国雇用者数が予想より大幅に悪く、ストップも巻き込みながら107.82レベルと週間安値を更新しました。しかし、107円台にはまだまだ買いが見られたこと、その後対メキシコの関税は必要がない可能性といった発言も出て108.49レベルまで買い戻され高値引けとなりました。
6月6日(木)
ドル円はNY市場後場まで上値は重たいものの108円台前半で動意薄の展開が続きました。引き続き108円割れの買いと108円台半ばとの売りが上下ともに抑えることとなりました。NY後場に入り対メキシコ関税先送り検討とのニュースが流れたものの108.56レベルまで。米国雇用統計を控えていること、また実際に関税が先送りされる事実を見るまでは何が起きてもおかしくは無いと考える参加者が多い様子でした
6月7日(金)
ドル円は米国雇用統計を前に動意薄ではあったものの、株式市場が底堅く推移していたことからじり高の展開を辿り、NY市場の朝方には108.62レベルと週間高値を更新しての数字待ちとなりました。しかし、雇用統計はNFPを中心に軒並み内容が悪くドル円は急落、107.88レベルの安値をつけました。その後は利下げ思惑から米国株が大幅上昇し、ドル円も108円台前半を回復しての引けとなりました。
ディスクレーマー
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