ドル円見通し 108円割れを切り返して下げ渋りからややジリ高、米雇用統計待ち(6/7)

月4日午後には107.82円まで続落したが、6月5日夜に再び107.82円まで下げた後は新たな安値更新を回避して概ね108円台前半を中心とした持ち合いが続いている。

ドル円見通し 108円割れを切り返して下げ渋りからややジリ高、米雇用統計待ち(6/7)

【概況】

株安拡大不安からのリスク回避的円高で5月31日に109円を割り込み6月4日午後には107.82円まで続落したが、6月5日夜に再び107.82円まで下げた後は新たな安値更新を回避して概ね108円台前半を中心とした持ち合いが続いている。

NYダウは6月3日へ安値を更新したところから出直り、4日の前日比512.40ドルから5日の207.39ドル高、6日も181.09ドル高と連騰して先週の下落分を解消している。米中通商摩擦及び不法移民問題での米墨対立に関する解決への楽観見通しや、景気鈍化に際しては米連銀が年内利下げに踏み切って下支えするとの期待感が株反騰の背景であり、株安不安一服はドル円においてもリスク回避的な円高感を後退させている。しかし米連銀が年内に利下げする確率が上昇することは米長期債利回りの低下を招き、金利面では円高ドル安へ向かいやすくなるため、ドル円としては強弱両面から板挟みとなり、一段安は回避されてやや戻り高値を切り上げつつも、5月末に一段安した状況は解消されずに下げ渋りの持ち合いレベルを抜け切れないというところだ。

6月6日はECB(欧州中銀)理事会とドラギ総裁会見があった。政策金利は据え置かれ、据え置き期間は2020年6月まで延長されたが、一部で期待されていた利下げ検討への積極姿勢は示されなかったため、ユーロは金融政策発表直後にいったん売られたものの早々に切り返して6月5日夜の高値を上抜いた。その後はやや下げているので5日夜と6日夜の両高値をダブルトップとして下落に転じる可能性もあるが、5月31日以降のユーロ高ドル安基調をひとまず維持した恰好だ。ドル円にとってはユーロ円の上昇からの円安圧力とユーロ高ドル安によるドル安圧力が交錯したが、108円割れから安値試しへは進まずに7日早朝には6日未明高値をわずかに上抜いている。

不法移民問題対策として米国がメキシコに制裁関税を発動することに関する両国協議は6日も継続している。トランプ大統領は外遊中でペンス副大統領を中心に協議されているが、制裁発動の延期も検討されているとの報道もある。また仮に制裁関税が発動されてもメキシコが不法移民の取り締まり強化等へ動けば早々に解除されるのではないかとの楽観見通しもあるようだ。
中国との対立に関してはトランプ大統領がG20での米中首脳会談後に制裁関税第4弾発動の是非を決定すると述べたことで首脳会談での合意形成への期待が再び強まっている。これらのやや楽観的な見通しが株の反騰を支え、ドル円にとっても下支え要因となっている。

【米雇用統計待ち】

WSJ紙は米連銀が6月のFOMCにおいて利下げの可能性についても議論されるのではないかとの見方を報じた。6月3日のブラード・セントルイス連銀総裁の「利下げが近く正当化される」旨の発言と4日のパウエル議長発言から米連銀の年内利下げ確率が上昇しており、NYダウの出直り反騰の大きな要因にもなっている。株安時に米連銀が利下げで支えるとの期待感ということだろうが、利下げを検討するほどに景気の鈍化ないしインフレが進まない停滞状況が現状よりも深刻化することを示唆するものであり、景気拡大を積極的に支援する金融緩和政策ということでなければ予防的な利下げ確率だけでは株式市場を支えてゆくのも無理があるのではないかと思われる。

6月7日夜には米労働省の雇用統計の発表がある。市場の事前予想では非農業部門雇用者数は18万人増と見込まれ、前月の26.3万人増からは伸びが鈍化するとみられているが、5日に発表されたADP民間部門の就業者増加数が予想外に低調だったことから労働省統計でも予想を下回る可能性がある。低調な内容の場合は米連銀の利下げ判断に寄与するとしてドル安が進む可能性があるが、強い数字の場合は利下げ確率が低下してドル高円安のトリガーとなる可能性もある。ドル円の現状は一段安状態での持ち合いであり、109円超えへ反騰すれば4月24日天井からの下落一巡による揺れ返し上昇に入って110円回復を目指す可能性が出てくるだろうが、雇用統計後にこの間の安値を更新すれば一段安入りによる悲観売りが強まり、107円、106円、さらに1月3日安値を目指す深刻化円高となりかねないと注意するところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月5日夜安値で4日午後安値をわずかに割り込んだが、その後は6日未明、7日早朝と戻り高値をわずかに切り上げているため、4日午後と5日夜の両安値をダブルボトムとした強気サイクル入りと仮定する。新たな安値更新回避のうちは7日夜から12日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、5日夜安値を割り込むところからは弱気サイクル入りとして10日夜から12日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では6月3日以降が108円台前半を中心とした持ち合いのために遅行スパンは実線と交錯して方向感に乏しい。6日夜安値では先行スパンから一時的に転落したが早々に切り返し、7日朝時点では先行スパンを上抜けた状況を維持しているので目先はやや上向きと思われる。108.50円以上を維持して続伸し始めるところからは遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、5日夜安値割れからは持ち合い下放れによる一段安入りとして遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は7日早朝への上昇で60ポイントをいったん超え、その後も50ポイント以上で推移しているのでまだ上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下向きとし、5日夜安値割れからは20ポイント台へ低下して行きやすくなるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.80円を下値支持線、108.56円を上値抵抗線とする。
(2)108円を割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、108.56円超えの場合は108.75円から109円手前にかけてのゾーンを試すとみる。米雇用統計発表前の上昇は発表前に押し返されやすいとみるが、雇用統計から急伸する場合は109円台前半まで上値目途を引き上げる。また8日未明へ続伸して終了なら週明けも高値試しから開始しやすいとみる。
(3)雇用統計発表前は108円割れは買い戻されやすいとみる。雇用統計後の下落で107.80円を割り込むところからは一段安入りとしてまず107.50円前後試し、さらに急落商状の場合は107円試しへ下値目途を引き下げる。また8日未明へ続落したまま終了の場合は週明けも安値試しから始まりやすいとみる。

【当面の予定】

6/7(金)
休 場 端午節 中国、香港、台湾
休 場 断食明け大祭 インドネシア
メイ英首相が保守党党首辞任
金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ(GPFI)

12:50 (日) 黒田日銀総裁、GPFIフォーラムで挨拶
13:00 (米) デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、シンガポールで講演
14:00 (日) 4月 景気先行指数(CI)速報値 (3月 95.9、予想 96.0)
14:00 (日) 4月 景気一致指数(CI)速報値 (3月 99.4、予想 100.2)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 0.5%、予想 -0.5%)
15:00 (独) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 -0.9%、予想 -0.4%)
15:00 (独) 4月 貿易収支 (3月 227億ユーロ、予想 195億ユーロ)
15:00 (独) 4月 経常収支 (3月 302億ユーロ)

21:30 (米) 5月 非農業部門就業者数 前月比 (4月 26.3万人、予想 18.0万人)
21:30 (米) 5月 失業率 (4月 3.6%、予想 3.6%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前月比 (4月 0.2%、予想 0.3%)
21:30 (米) 5月 平均時給 前年同月比 (4月 3.2%、予想 3.2%)
25:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
28:00 (米) 4月 消費者信用残高 前月比 (3月 102.8億ドル、予想 130.0億ドル)

6/8(土)
G20財務相・中央銀行総裁会議開幕(福岡市、6月9日まで)

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