ドル円見通し 下げ一服、108円台回復するも戻りは鈍い(6/5)

パウエル米連銀議長が講演で利下げの可能性を示唆したことは米長期債利回り低下とドル安要因だった

ドル円見通し 下げ一服、108円台回復するも戻りは鈍い(6/5)

【概況】

米中対立の深刻化を懸念した株安と米長期債利回り大幅低下を背景に、5月31日に109円を割り込む一段安となり、6月3日午前安値108.07円からやや下げ渋ったものの4日午後には107.82円まで続落した。4日深夜にはNYダウが大幅反騰する中で株安不安が後退したことから108.35円まで戻したが、米連銀のパウエル議長講演で米連銀の利下げ確率が上昇したとして上値も抑えられ、3日夜の戻り高値108.44円には届かずにいる。
パウエル米連銀議長が講演で利下げの可能性を示唆したことは米長期債利回り低下とドル安要因だったが、一方では米国によるメキシコへの制裁関税を巡って事前に合意に達する可能性が高まったとして通商摩擦懸念により売られてきたNYダウが大幅反騰したことがドル円におけるリスク回避感を後退させたことが下支えとなった。

NYダウは前日比512.40ドル高と大幅上昇した。1日の上昇幅としては1月4日(746.94ドル高)以来で、前日に一段安していたナスダック総合株価指数も194.10ポイント高と大幅反騰した。米連銀の利下げ可能性が高まったことと、米・メキシコ間の制裁関税を巡る交渉進展期待が前日までの過度な悲観を後退させたためと思われる。
パウエルFRB議長はシカゴでの講演で「米中貿易摩擦などの動向を注視している」「成長を持続するために適切に行動する」と表明した。6月3日にはセントルイス連銀ブラード総裁が「近く」利下げに踏み切るとの見通しを示唆したことに続く発言のため、市場の利下げ予想確率は上昇した。議長発言から米長期債はいったん買われて利回りが低下したが、株高によるリスクオン心理が勝ったために長期債は下落、利回りは逆に上昇して終了した。

【米墨及び米中対立問題】

不法移民流入に関する米国からメキシコへの制裁関税発動問題では、メキシコのロペスオブラドール大統領が「制裁関税発動の期限の6月10日よりも前に両国が合意に至る」と述べ、同国のエブラルド外相もツイッターで「近く合意に達する」と発言したことが米国株式市場反騰のきっかけとなった。
この問題についてトランプ大統領は「(制裁関税を)発動する可能性の方が高いと思う」と述べる一方で「メキシコは対策を講じ、やるべきことをやるだろう」とも述べている。硬軟両様の解釈が可能だが、最終的には合意に至る可能性が高まっているのではないかと市場は受け止めたようだ。
ただロペスオブラドール大統領は5日早朝時点には大阪で開催されるG20首脳会議を欠席すると発表し、「あそこでは(トランプ大統領と)直接対立したくない」と述べている。4日の株式市場の急騰反応はやや楽観的過ぎるのかもしれない。

米中対立問題では、米財務省高官が6月8日からのG20財務相・中央銀行総裁会議でムニューシン米財務長官が中国代表団と会う見通しと述べたことが米中間の協議継続姿勢を印象付け、株式市場にはプラスとなった。しかしG20首脳会議での米中首脳会談予定が決まっているわけではなく、関税合戦から個別企業取引規制へと対立の深刻化が見られる状況は変わらない。株式市場が楽観を維持できるような追加材料が出ずにダウの反騰が続かない様だと6月4日の反騰も一過性に終わる可能性がある。このあたりを踏まえてドル円の反発も限定的な動きにとどまったという印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月31日の一段安により、5月30日夜高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとして6月3日から5日にかけての間への下落を想定してきたが、4日午後へ一段安した後に戻し、前回ボトムから4日を経過したので4日午後安値を直近のサイクルボトムとする。今回の高値形成期は6月4日夜から6日深夜にかけての間と想定されるので、すでにサイクルトップを付けてて下落に転じやすい時間帯に入っている。6月4日午後安値割れに至らないうちは4日深夜高値超えから109円を目指す反騰の可能性ありとみるが、108円割れからは弱気転換注意として4日午後安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして7日午後から11日午後にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では5月31日の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落し、その後も両スパン悪化が続いてきたが、4日深夜への反発で遅行スパンが好転し、先行スパンへ潜り込み始めている。先行スパン帯が抵抗帯となっているが、先行スパンを突破してくると上昇に弾みも付きやすい。しかし先行スパン突破へ進めずに再び遅行スパンが悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は6月3日から4日への一段安において指数のボトムが切り上がる強気逆行となり、50ポイントを超えた。このためひとまず戻りを試しやすい状況にあるが、戻りが鈍いため60ポイント超えから続伸入りできないうちは40ポイント割れからの下げ再開が警戒される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、6月4日午後安値107.82円を下値支持線、6月3日深夜高値108.44円を上値抵抗線とする。
(2)108円を割り込んでも切り返すうちは戻りを試す可能性ありとし、3日深夜高値超えの場合は108.75円から109円手前にかけてのゾーンを試すとみる。ただし108.50円以上は戻り売りにつかまりやすいところとみてその後の108.25円割れからは下げ再開注意、108円割れからは下げ再開の可能性を優先する。
(3)107.82円割れからは底割れによる新たな弱気サイクル入りとして週末にかけての下落継続を想定する。当初は107.50円前後の攻防とみるが、株安再燃の場合及びドル全面安の場合は107.00円前後まで下値目途を切り下げる。

【当面の主な予定】

6/5(水)
休 場 断食明け大祭 シンガポール、マレーシア、インドネシア、トルコ
中国習主席、ロシア訪問(6月7日まで)
欧州委員会、イタリア財政状況についての報告書公表
デンマーク総選挙
10:30 (豪) 1-3月期GDP 前期比 (前期 0.2%、予想 0.5%)
10:30 (豪) 1-3月期GDP 前年同期比 (前期 2.3%、予想 1.8%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 54.5、予想 54.0)
16:55 (独) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 55.0、予想 55.0)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 52.5、予想 52.5)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI (4月 50.4、予想 50.6)

18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.3%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 2.9%、予想 3.2%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.0%、予想 -0.4%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 1.9%、予想 1.5%)
21:15 (米) 5月 ADP 非農業部門民間就業者数 前月比 (4月 27.5万人、予想 18.0万人)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 50.9、予想 50.9)
22:45 (米) 5月 総合PMI改定値 (速報 50.9) 
22:45 (米) クラリダFRB副議長、会合挨拶
24:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 55.5、予想 55.5)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

6/6(木)
休 場 戦没者慰霊日 韓国
休 場 断食明け大祭 マレーシア、インドネシア、トルコ
トランプ米大統領、訪仏
国際金融協会(IIF)春季総会、東京(6月7日まで)

10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 49.49億豪ドル、予想 50.00億豪ドル)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 0.6%、予想 0.0%)
15:00 (独) 4月 製造業新規受注 前年同月比 (3月 -6.0%、予想 -5.9%)
17:25 (日) 黒田東彦日銀総裁、講演
18:00 (欧) 1-3月期GDP確定値 前期比 (改定値 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 1-3月期GDP確定値 前年同期比 (改定値 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁、東京で講演

20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 1-3月期 四半期非農業部門労働生産性・改定値 前期比 (速報 3.6%、予想 3.5%)
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -500億ドル、予想 -506億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.5万件、予想 21.5万人)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 165.7万人、予想 166.2万人)
21:40 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、討論会参加
26:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演

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