ドル円見通し 108円を割り込む 下値支持線は1月3日安値試しまで低下(6/4)

3日夜には108.44円まで戻す等下げ渋りも見られたが、深夜からの下落で108円を割り込み107.85円まで安値を切り下げた。

ドル円見通し 108円を割り込む 下値支持線は1月3日安値試しまで低下(6/4)

【概況】

米中対立の深刻化を背景とした株安と米長期債利回り大幅低下を背景に、5月31日には109円を割り込む一段安入りとなった。6月3日午前には108.07円まで下げたが108円割れをいったん回避して3日夜には108.44円まで戻す等下げ渋りも見られたが、深夜からの下落で108円を割り込み107.85円まで安値を切り下げた。
5月31日はトランプ大統領によるメキシコへの制裁関税導入発言からNYダウが354.84ドル安と大幅続落した。このことからリスク回避的な円高が加速したが、週明け6月3日はNYダウが下げ渋ったもののナスダック総合株価指数が大幅下落。さらに米経済指標が予想より弱く、米連銀の利下げの可能性も高まったとしてユーロドルでもユーロ高ドル安となるなどドル全面安の様相となった。

6月3日のNYダウは4.74ドル高と小幅上昇で終わったが、一時は100ドル超のプラスとなっていたところを維持できず、ザラバでは4月23日以降の安値を更新した。またハイテク株中心のナスダック総合指数は120.13ポイント安と大幅下落。

米中対立の激化が関税報復合戦にとどまらずに個別企業への取引規制へ拡大していること、不法移民問題を背景にメキシコへの制裁関税が発動されることで世界的な貿易摩擦の拡大と景気減速懸念が強まっている。それ以外でもグーグルやフェイスブック、アマゾン等への独禁法に関連した調査開始報道が相次いだことでハイテク株が全面安となった。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月31日に米司法省が反トラスト法(独禁法)違反に関してグーグルを調査する準備を進めていると報じたが、同紙は6月3日にも米連邦取引委員会(FTC)がフェイスブックを反トラスト法違反で調査する権限を確保したと報じた。また米紙ワシントン・ポスト(同)も6月1日にFTCがアマゾン・ドット・コムを調査すると報じた。先週末からのこれら報道が米ナスダックの大幅下落を招いている。

株安や米連銀の利下げ可能性を背景に米長期債利回りの低下も続いている。米10年債利回りは前週末比0.06%低下の2.07%となり2017年9月以来約1年9か月ぶりの低水準となった。2年債利回りは同0.09%低下の1.84%まで下降した。3か月TB(財務省証券)利回りは2.3346%であり、10年債利回りがTB利回りを下回る「長短金利逆転(逆イールド)」状態はこれで7営業日連続となった。

セントルイス連銀のブラード総裁はシカゴの講演で、通商摩擦による世界経済の減速が米国に波及するリスクが高まっていると指摘し、利下げが近く必要になる可能性があるとの姿勢を示した。
5月の米ISM製造業景況指数は52.1となり市場予想の53.0を下回り、4月の52.8から低下した。株安、景気鈍化懸念が米連銀による利下げ確率を高めていることがリスク回避面と金利差面での円高ドル安を加速させている印象だ。

【株安と長期債利回り低下による円高に加えてドルストレートでのドル安感も再燃】

メジャー通貨の加重平均であるドル指数は5月23日に2018年2月底以降の最高値を更新したが、5月31日から6月3日へと続落したために当面のピークを付けてドル安感が強まり始めた印象となっている。
長期債利回りは米国のみならずドイツ等欧州各国でも低下し、欧州の経済指標も弱いことやイタリア財政問題やブレクジット問題等を抱えている状況でユーロドルは5月23日に2018年2月高値以降の最安値を更新した。しかし31日からの2連騰によりユーロ反騰色が強まりつつある。米長期債利回りの低下ペースがドイツ債利回り低下ペースを超えて利回り差縮小感を強めていることも背景にある。

ドル円にとっては株安や日米金利差での円高という側面に加え、ユーロ高ドル安等によるドルストレートでのドル安への反転感も円高加速要因となってきていると思われる。株安が世界連鎖的になり、欧州株安が進めばリスク回避的な投機通貨手仕舞い売りによりユーロやポンドも下落を再開させる可能性もあるが、その際はクロス円での円高感が一段と増すと思われるので、ドルストレートでのドル高をクロス円の円高が勝ってドル円での円高ドル安もさらに進むという構図になるのではないかと考える。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月30日夜にサイクルトップを付けて下落期に入った。5月29日午前安値を前回のサイクルボトムとすれば今回のボトム形成期は6月3日から5日にかけての間と想定される。6月3日午後安値の後はやや下げ渋ってから一段安しているため、3日午後安値を直近のサイクルボトムとしてすでに連続的な弱気サイクル入りとなっている可能性も検討される。このため3日深夜高値108.44円を超えないうちは連続的な弱気サイクル入りの可能性も踏まえて一段安警戒とし、3日深夜高値超えの場合はいったん強気サイクル入りとして4日夜から6日深夜にかけての間へ上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では31日の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落し、その後も両スパン悪化が続いているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からは戻り高値試し優先とするが、新たな安値更新を回避して戻せば遅行スパンは好転しやすくなるものの、安値更新が続くと好転の機会も1日以上先送りされてゆく。また遅行スパン好転の場合も分厚い先行スパンが戻り抵抗帯となってくると思われる。

60分足の相対力指数は週末に20ポイントまで低下した後は新たなボトムの切り下げは見られないが、50ポイント台を回復してさらに上昇できないうちは一段安注意とし、再び20ポイント前後を試す可能性ありとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.50円を下値支持線、6月3日深夜高値108.44円を上値抵抗線とする。
(2)108.44円を超えないうちは107.50円試しへの一段安警戒とする。107.50円割れからは1月3日の暴落時における日足の長い下ヒゲをつぶしに入るため、先行きの下値目途は106円台前半、さらに1月3日安値104.82円まで段階的に切り下がってゆく可能性があると警戒する。
また5月31日の日足が高安レンジで1.36円の値幅だったように、1日で1円以上の急落となる陰線再発の可能性もまだ継続していると注意する。
(3)108.44円超えからはいったん短期的な強気サイクル入りとして108.65円から109円手前を目指すとみるが、108.65円以上は反落注意圏と考える。

【当面の主な予定】

6/4(火)
休 場 断食明け大祭 トルコ、インドネシア
10:30 (豪) 1-3月期 経常収支 (前期 -72億豪ドル、予想 -25億豪ドル)
10:30 (豪) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
13:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 1.25%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 7.7%、予想 7.7%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数・HICP速報値 前年同月比 (4月 1.7%、予想 1.3%)
18:00 (欧) 5月 消費者物価指数・HICPコア指数速報値 前年同月比 (4月 1.3%、予想 0.9%)
18:30 (南) 1-3月期GDP 前期比年率 (前期 1.4%、予想 -1.6%)
18:30 (南) 1-3月期GDP 前年同期比 (前期 1.1%、予想 0.7%)
21:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合挨拶
22:45 (米) エバンズ米シカゴ地区連銀総裁、会合挨拶
22:55 (米) パウエルFRB議長、会合挨拶
23:00 (米) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 1.9%、予想 -0.9%)

6/5(水)
休 場 断食明け大祭 シンガポール、マレーシア、インドネシア、トルコ
中国習主席、ロシア訪問(6月7日まで)
欧州委員会、イタリア財政状況についての報告書公表
デンマーク総選挙
10:30 (豪) 1-3月期GDP 前期比 (前期 0.2%、予想 0.4%)
10:30 (豪) 1-3月期GDP 前年同期比 (前期 2.3%、予想 1.8%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 54.5、予想 54.2)
16:55 (独) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 55.0、予想 55.0)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 52.5、予想 52.5)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI (4月 50.4、予想 50.6)

18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 2.9%、予想 3.1%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.0%、予想 -0.5%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 1.9%、予想 1.5%)
21:15 (米) 5月 ADP 非農業部門民間就業者数 前月比 (4月 27.5万人、予想 18.3万人)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 50.9、予想 50.9)
22:45 (米) 5月 総合PMI改定値 (速報 50.9) 
22:45 (米) クラリダFRB副議長、会合挨拶
24:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 55.5、予想 55.5)
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

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