ドル円 年初来安値と高値の半値押し108.65を試すか(週報5月4週)

週末に向けて短期筋のストップも巻き込みながら109.28レベルの安値をつける動きを見せました。

ドル円 年初来安値と高値の半値押し108.65を試すか(週報5月4週)

今週の週間見通し

先週は週半ばにNYダウが大きく下げたことからリスクオフの動きが強まり、ドル円は直前に110.67レベルと週間高値を更新していたこともあって、週末に向けて短期筋のストップも巻き込みながら109.28レベルの安値をつける動きを見せました。

NYダウの動きは日々の動きとしては上下する動きもありますが、週足ベースでは5週連続で終値を下げていて、この2011年以来の現象を気にしている参加者も出ています。テクニカルには25200ドル水準を割り込み3月安値を更新してくる動きにより注意が必要です。またリスクオフの動きで気になるのは資産の避難先として米国債が買われ、そのことが長期金利の低下につながっている点です。

先週木曜のFX羅針盤にチャートを載せましたが、10年債利回りは先週2.3%割れの水準まで低下し、これは2017年10月以来の低水準です。その間、政策金利は1.25%上昇し現在は2.25〜2.50%ですから10年債までの利回りがほぼ政策金利以下という異常事態とも言えます。政策金利も景気減速懸念から年末には利下げを織り込む動きとなっていますが、リスクオフによる株安が続けば債券に資金がシフトし長期債の利回りは一段と低下する可能性もあるわけです。

そうなると、為替市場はリスクオフの動きと低金利の動きがドル安を招きやすくなりますが、それでも債券が買われているうちはまだ良いのです。中国が人民元安を抑えるための外貨準備手当として米国債売却に動くことはしばしばあり、特に継続して人民元安となる時にはほぼ間違いなく米国債を売る動きが見られます。こうした動き自体はオペレーションの一部と捉えて良いのですが、一部では米中貿易摩擦激化と結びつけてはやし立てる向きもあって、心理的に米国債売りに繋がることにでもなればミニトリプル安のきっかけにもなりかねません。このあたりを今は気にする必要は無さそうですが、リスク要因のひとつとして頭の片隅にでも置いておきましょう。

トランプ大統領が土曜に来日、本日は日米首脳会談が開かれます。当初は6月の大阪G20を目途に合意という流れを作ると思われたのですが、昨日トランプ大統領が7月の参院選後まで待つとの発言が聞かれ目先の日米通商協議問題は先送りとなりました。今日は継続されるでしょうが、相場の材料となるのは参院選以降となってきそうです。まだ先のことで不透明な部分も多いのですが、仮に通商問題と消費税増税とが夏から秋にかけて連続でとなると、その時の日本の株価や為替には要注意という印象しかありません。世界的な景気減速懸念拡大の中で、消費増税再延期という可能性も5割程度出てきているように思えます。今後のG20や参院選といった政治イベントの中でヒントは出てくると思います。

今週は月曜がLDN、NYとも休場となるため動きが出てくるのは明日からとなりそうですが、欧州では欧州議会選挙で事前予想通りポピュリズム、反EUを掲げる政党が議席を伸ばしています。これがユーロ売りとなるか、またその場合ユーロ円でも売りとなるか、このあたりが週前半の材料と言えるでしょう。週後半からは日々の経済指標での上下となりそうですが、やはり一番きになるのはやや戻してはいるものの米国株の動きとなりそうです。

テクニカルにはどうか、日足チャートをご覧ください。

大きくは何も変わらず、先週指摘した4月高値と5月高値を結んだレジスタンスを基準とした下降チャンネルの中での動きです。チャンネル上限と4月高値112.40と5月安値109.02の半値戻し110.71(ピンクのターゲット)にほぼ一致した水準が先週の戻り高値110.67となりました。その後またチャンネル内での下げに戻っていますので、次は5月安値109.02レベルを再度トライする展開にあります。

そして5月安値を下抜いた場合、年初来安値104.90と高値112.40の半値押しにあたる108.65(青のターゲット)が次のターゲットとなり、早ければ今週中にも試しに行く水準と言えます。また上値は上記レジスタンスが現状大台110円水準を降下中ですから、このレジスタンスがしっかりと上値を抑えてくると考えられます。

今週も基本的に上値は重たい流れを考え109.90レベルをレジスタンスに108.65レベルをサポートとする流れを見ておきます。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月27日(月)
**:** LDN、NY市場休場
**:** 日米首脳会談
12:00 黒田日銀総裁講演


5月28日(火)
15:00 ドイツ6月GFK消費者信頼感
15:45 フランス5月消費者信頼感
16:30 フランス中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏5月消費者信頼感
22:00 米国3月住宅価格指数
23:00 米国5月消費者信頼感
**:** 臨時EUサミット

5月29日(水)
08:00 NZ中銀総裁会見
09:00 黒田日銀総裁挨拶
10:00 NZ5月企業信頼感
15:45 フランス5月CPI速報値
15:45 フランス4月PPI
15:45 フランス1〜3月期GDP改定値
16:55 ドイツ5月失業率
23:00 カナダ中銀政策金利発表
23:00 リッチモンド連銀製造業景況指数
23:30 週間原油在庫統計


5月30日(木)
07:45 NZ住宅建設許可件数
18:30 南ア4月PPI
21:30 米国1〜3月期GDP改定値
21:30 米国新規失業保険申請件数
23:00 米国4月住宅販売保留件数指数

5月31日(金)
08:30 本邦4月失業率・有効求人倍率
08:30 本邦5月東京区部CPI
10:00 中国5月製造業PMI
15:00 ドイツ4月小売売上高
16:00 トルコ1〜3月期GDP
21:00 ドイツ5月CPI速報値
21:00 南ア4月貿易収支
21:30 カナダ1〜3月期GDP
21:30 米国4月個人所得・消費支出
22:45 米国5月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国5月ミシガン大消費者信頼感確報値

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月20日(月)
ドル円は朝方に発表された本邦GDPが強かったことから株高・円安が先行しましたが、数字の中を見ると輸入減が押し上げていたことがわかり、その後はダウ先が夜間取引で下げたこともあり、株価とともにじり安の展開を辿りました。また110円台の売りをこなして110.32レベルまで上がったことも日計りの投げを誘い、NY市場の朝方には109.81レベルの安値をつけました。引けにかけてはダウの買い戻しも見られ、110円の大台に乗せて引けました。


5月21日(火)
ドル円は株価の上昇とともに円安の動きが先行、東京昼頃には110.26レベルまで上昇したものの株価の下げとともに早朝の水準へ押しました。しかし、110円の大台を試す動きとはならず、日経先物が上昇に転じる動きとともに再びドル買いが強まり、NY市場ではファーウェイ制裁猶予のニュースも重なって米国株が上昇する動きとともにストップオーダーも巻き込みながら110.67レベルまで上昇後、やや押して引けました。

5月22日(水)
ドル円は前日に目先の高値をつけた印象も強く株価がじり安となる中で歩調を揃えて終日水準を切り下げる動きが続きました。前日はファーウェイへの制裁延期をやや好材料としたものの、禁輸措置対象の中国企業が今後も広がりを見せる懸念が強くリスクオフの流れに戻り始めた動きとなりました。FOMC議事録は想定内で目立った反応は見られませんでしたが、110.24レベルまで押し安値圏での引けとなりました。


5月23日(木)
ドル円は東京市場では110円台前半の狭いレンジでのもみあいとなっていましたが、株価同様に上値の重たさは残ったままで海外市場入り。欧州時間からダウ先物が大きく水準を下げる中でリスクオフの円買いが目立ちましたが、米国債に買いが入り長期金利が2017年10月以来の2.3%割れとなったことからドル全般に売りが広がりました。NY市場後場には109.46レベルまで水準を切り下げ若干戻して引けました。

5月24日(金)
ドル円は前日終値を中心とした狭いレンジでのもみあいをNY市場まで続けました。その間、株式市場は前日の下げに対して買い戻しが見られましたが、為替市場は反応せず上値の重たい印象でした。NY市場に入り株価が下げに転じたことからリスクオフとなり昼前には109.28レベルまで水準を下げ、そのまま安値圏での引けとなりました。

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