【概況】
株安不安後退とドル高再開によりドル円は5月13日深夜安値109.02円から出直りに入り、14日、17日、20日と戻り高値を切り上げて22日未明には110.67円まで戻してきた。しかしその後は伸び悩み、22日夜へジリ安となった。中国の防犯監視システム大手ハイクビジョンへの取引制限に関する報道から米中不安が再燃して株安となり、リスク回避的にドル円も下落した。23日未明にはFOMC議事録公開もあったが特段のサプライズはなく22日未明高値からのジリ安基調のまま23日午前に入っている。
ドル円は4月24日高値112.39円から5月13日深夜安値109.02円まで3.37円の下げ幅だったが、その背景は米中対立の深刻化によるものだった。この間の下げ幅は3.37円であり、その半値戻しは110.70円だったが、半値戻しへあと一歩と迫ったが超えられず、ハイクビジョン問題で行き詰まった印象だ。
【米中貿易戦争、中国大手企業への取引制限拡大の流れ】
米ニューヨーク・タイムズ電子版は22日に米政府が中国の防犯・監視システム最大手杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)との取引制限を検討していると報道した。ハイクビジョンへの取引規制の動きは中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)制裁に続く、個別企業への制裁的規制の拡大を印象付けた。米国は中国からの輸入品全てに制裁関税を拡大して中国も対抗措置を発表したが、関税だけでなく中国企業との取引制限拡大へと踏み込んでいる。日本の携帯電話各社が相次いでファーウェイ製品の販売抑制に動くなど他国への波及もみられる。
米大統領令による中国企業への規制のため、米国企業及び同盟国企業は大統領令に抵触しないように取引自粛へ舵を切り始めている。中国に対する圧力がより高まり、譲歩を引き出そうという動きでもあるが、昨年6月以降、中国は合意を模索しつつも一貫して対抗してきたために簡単には妥協へ進まないのではないかと思われる。米中貿易戦争が同盟国も巻き込んでくると世界景気全般が萎縮してゆく懸念が広がる。また米国の対中国強硬姿勢は日米通商協議での対日圧力感も伴うため、クロス円全般に円高へ傾斜しやすくなると思われる。
【FOMC議事録はサプライズ無し】
5月23日未明に公表された米連銀FOMC議事録には特段のサプライズはなかった。米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した4月30日、5月1日開催分のFOMC議事要旨では金融政策に対する忍耐強い姿勢は当面維持可能との見方で参加者が一致していた。インフレ低迷については大半の参加者が一時的なものと認識しており、利下げの必要性に言及する意見は出ていなかった。当該FOMC後のパウエル議長会見内容に添うものだった。
NY連銀のウィリアムズ総裁は講演でも、「インフレ率は今年中に反転して来年には物価目標の2%に戻るだろう」「現時点で近い将来に必要になるとは考えていない」と述べている。一時は年内に利下げされる可能性もあるのではないかとの期待を市場に抱かせていたが、市場の利下げ期待確率は低下している。米中対立によるリスク回避感から投機通貨や資源通貨が売られやすい中で、米連銀の利下げ確率が低下することはドル・ストレートでのドル高へ傾斜しやすくなる。しかし米連銀が当面政策金利を据え置く状況ならドル円にとっては中立的であり、ユーロやポンド、豪ドル等の下落感がクロス円で強まればドル円においても円高が勝りやすくなるのではないかと思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月13日深夜安値から4日目となる5月17日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして次の高値形成期となる22日から24日にかけての間への上昇を想定してきた。22日未明高値からはやや下げていたために22日朝時点では110.20円以上を維持するか、一時的に割り込んでも切り返す内は高値更新余地ありとしたが、110.20円割れから続落の場合は弱気サイクル入りを疑うとした。
5月23日朝への続落により110.20円割り込んできており、17日夜安値からも3日を経過しているので22日未明高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。
ボトム形成期は22日夜から24日夜にかけての間と想定されるので既にボトムをつけての反騰注意期にあるが、110.50円超えへ進めない内は23日夜、24日へ続落する可能性があるとみる。110.50円超えからは強気転換注意として22日未明高値試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして25日未明から29日未明にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では22日未明高値からの下落継続により遅行スパンが悪化し、先行スパンから転落し始めている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。110.50円超えからは先行スパンを上抜き返すため上昇再開の可能性ありとして遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は22日未明への上昇で80ポイントに迫ってから失速して50ポイント割れの状況が続いている。50ポイント以下での推移中は30ポイント割れへと下降する可能性があるとみるが、50ポイント超えから続伸の場合は上昇再開の可能性を優先する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.00円を支持線、110.50円抵抗線とみておく。
(2)110.50円を下回るうちは110円割れから109.70円台への下落を想定する。また110.20円以下での推移が続く内は一段安警戒として24日も安値を試しやすいとみる。株安が進んでリスク回避的な動きが強まる場合は5月17日夜安値109.50円試しまで下値目処を引き下げる。
(3)110.50円手前では戻り売りにつかまりやすいとみるが、110.50円超えからは上昇再開の可能性を優先して22日未明高値110.67円試しとみる。さらに高値更新からは新たな強気サイクル入りとして111円台序盤を目指す流れと考える。
【当面の主な予定】
5/23(木)
欧州議会選挙 〜 5/26 、
インド総選挙
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行(SARB)政策金利 (現行 6.75%、予想 6.75%)
15:00 (独) 1-3月期GDP改定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
15:00 (独) 1-3月期GDP改定値 前年同期比 (速報 0.7%、予想 0.7%)
15:00 (独) 1-3月期GDP改定値 季調前 前年同期比 (速報 0.6%、予想 0.6%)
16:30 (独) 5月 製造業PMI (4月 44.4、予想 44.8)
16:30 (独) 5月 サービス業PMI (4月 55.7、予想 55.5)
17:00 (欧) 5月 製造業PMI (4月 47.9、予想 48.1)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI (4月 52.8、予想 53.0)
17:00 (独) 5月 IFO景況指数 (4月 99.2、予想 99.1)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.2万件、予想 21.5万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 166.0万人、予想 167.0万人)
22:45 (米) 5月 製造業PMI (4月 52.6、予想 52.5)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI (4月 53.0、予想 53.2)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (3月 69.2万件、予想 67.5万件)
23:00 (米) 4月 新築住宅販売件数 前月比 (3月 4.5%、予想 -2.8%)
26:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、デイリー・サンフランシスコ連銀総裁、
ボスティック・アトランタ連銀総裁、バーキン・リッチモンド連銀総裁、パネル討論会
5/24(金)
07:45 (NZ) 4月 貿易収支 (3月 9.22億NZドル、予想 3.00億NZドル)
08:30 (日) 4月 全国消費者物価指数 前年同月比 (3月 0.5%、予想 0.9%)
08:30 (日) 4月 全国消費者物価指数 生鮮食料品除く 前年同月比 (3月 0.8%、予想 0.9%)
08:30 (日) 4月 全国消費者物価指数 生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (3月 0.4%、予想 0.5%)
17:30 (英) 4月 小売売上高 前月比 (3月 1.1%、予想 -0.1%)
17:30 (英) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 6.7%、予想 4.7%)
17:30 (英) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 1.2%、予想 -0.5%)
17:30 (英) 4月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (3月 6.2%、予想 4.1%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 2.7%、予想 -2.0%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 0.4%、予想 0.2%)
5/25(土)
トランプ米大統領来日 〜 5/28
オーダー/ポジション状況
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