ドル円 今週はもみあい(週報5月第3週)

金曜NYの引けにかけて110円の大台に乗せる動きとなったことから、米中間の協議の行方は気になるものの、一方的にリスクオフにも傾けられないといった流れで引けています。

ドル円 今週はもみあい(週報5月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は米中間の貿易摩擦の高まりを嫌気して週前半に何度か109円台前半をトライしたものの抜け切れず、また買い戻しが出る局面では110円をトライしきれずの状態が続きましたが、金曜NYの引けにかけて110円の大台に乗せる動きとなったことから、米中間の協議の行方は気になるものの、一方的にリスクオフにも傾けられないといった流れで引けています。

米中協議は継続されるものの米国側の制裁関税、さらにはファーウェイ禁輸措置と中国が協議に戻りにくい流れを敢えて作っているようにも見えます。実際に中国側からは協議再開に消極的な意見も見られ、果たして両国が協議のテーブルに戻るのかどうかは予断を許しません。そして、このまま行くと7月には中国のほぼ全製品に対して制裁関税が課されることとなり、中国の景気減速懸念に加えて米国の消費者への影響もかなり広がる懸念があります。

昨年もそうでしたが、結果を見るまでは楽観的にも悲観的にもなれない状況が今後も続きそうです。そして、中国と米国だけの問題では済まされない面も大きく、どちらかといえば悪材料面に注目が集まりやすく、常にリスクオフと背中合わせにあると言ってよいでしょう。

金曜の引け後に発表されたシカゴの通貨先物のポジションでは、円売りのポジションが7日まではあまり減っていませんでしたが、14日時点ではピークの4月末から4割近く落ち、円売りは継続しているものの安全圏に戻ってきたと考えられます。ここからは今後の材料次第で円売りにも円買いにも動きやすい段階に入ってきたと言えるでしょう。

米中間の協議はまだまだ先が見えませんが、平行して行われている日米通商協議では米国が自動車関税を半年延期とし、また今週末にはトランプ大統領が来日し日米首脳会談が行われます。その場で、日米間の協議は更に進み最終的には6月の大阪サミットまでに、形になる可能性が高そうです。そうした点では、日米間の協議は為替条項等が懸念されるものの、現時点では大きな材料とならないでしょう。

他にも今週は経済指標、パウエル議長をはじめ地区連銀総裁の講演が連日ありますが、これまでのスタンスから変化するような発言が出るとも思えず、あまり材料視はされないように思えます。


次に、テクニカルな観点です。日足チャートをご覧ください。

まず、長期的な上昇チャンネル(オレンジ)を下抜けて以降は、4月高値と5月高値を結んだレジスタンスによる下降チャンネル(青の太線)の中での動きに転じてきたと考えられます。現在チャンネルのレジスタンスラインは110.65レベルを下降中で、また4月高値112.40と5月安値109.02の38.2%戻しが110.31、半値戻しが110.71(どちらもピンクのターゲット)と後者は、レジスタンスとも一致しています。今週は買い戻しが出たとしても、110円台半ばから後半を戻り高値としやすいと考えられます。
一方で、サポート側はまだ余裕がありますが、更なる米中間の貿易摩擦激化といった悪材料が出て来ない限り、テクニカルなターゲットが108.65(年初来安値と高値の半値押し、青のターゲット)であったとしても、先週安値をトライするような動きには今週はつながらないでしょうし、上述の通りで円売りポジションも軽くなって来ています。

そうしたことを考えると、今週は基本的に上値は重たいもののもみあいの週となりやすいといえ、110.60レベルをレジスタンスに109.40レベルをサポートとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月20日(月)
**:** シンガポール市場休場
08:50 本邦1〜3月期GDP速報値
15:00 ドイツ3月PPI
17:00 ユーロ圏3月経常収支
22:30 (フィラデルフィア連銀総裁講演)

5月21日(火)
08:00 パウエルFRB議長講演
08:50 本邦4月貿易収支
10:30 豪中銀理事会(7日)議事要旨公表
11:15 豪中銀総裁講演
17:30 英中銀総裁講演
23:00 ユーロ圏5月消費者信頼感速報値
23:00 米国4月中古住宅販売件数
23:45 シカゴ連銀総裁講演
25:00 ボストン連銀総裁講演


5月22日(水)
07:45 NZ1〜3月期小売売上高
14:00 セントルイス連銀総裁講演
16:30 ドラギECB総裁講演
17:00 南ア4月CPI
17:30 英国4月CPI、PPI
18:30 プラートECB理事講演
23:00 NY連銀総裁講演
23:10 (アトランタ連銀総裁講演)
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC(1日)議事録公表

5月23日(木)
15:00 ドイツ1〜3月期GDP改定値
15:45 フランス5月企業景況感
16:15 フランス5月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ5月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏5月製造業・サービス業PMI速報値
**:** 南ア中銀政策金利発表
20:30 ECB理事会(4月10日)議事要旨公表
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国5月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 米国4月新築住宅販売件数
25:00 オーストリア中銀総裁講演
26:00 (アトランタ、サンフランシスコ、ダラス、リッチモンド各連銀総裁討論)
**:** 欧州議会選挙(〜26日)

5月24日(金)
07:45 NZ4月貿易収支
08:30 本邦4月CPI
17:30 英国4月小売売上高
21:30 米国4月耐久財受注


5月25日(土)
**:** トランプ大統領来日(〜28日)


5月26日(日)
**:** ベルギー総選挙
**:** ドイツ地方選
**:** スペイン地方選

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

5月13日(月)
ドル円を始め各金融市場は一段とリスクオフ姿勢が強まりました。NY市場が始まるまでは上値は重かったものの落ち着いた値動きをしていましたが、中国も対米報復関税を導入、長引きそうな米中通商協議を懸念しダウが大幅安でスタートしました。ダウは下げ足を速め一時700ドルを超える下落となり、ドル円も109.02レベルまで安値を広げました。その後引けにかけてはやや戻しました。


5月14日(火)
ドル円は朝方こそ上値の重たい展開となっていたものの、東京市場が始まりトランプ大統領が米中協議の進展について言及したため一転買い戻しの動きとなりました。欧州市場序盤には109.78レベルまで上値を伸ばしましたが、前日高値は超えられずその後はもみあいのまま引けました。

5月15日(水)
ドル円は東京時間には全く動意なし、海外市場以降は株価に沿った動きとなりました。欧州市場に入り前日からのイタリア財政問題も重なって株式市場が下げに転じる動きに沿ってドル円も円高の動きとなり、NY市場の朝方には109.15レベルの安値をつけました。しかし、トランプ大統領がEUの自動車関税を半年延期すると発言したことから、株価が上昇に転じほぼ行って来いの動きとなる中、ドル円も東京前場の水準へと戻した後にやや押して引けました。


5月16日(木)
東京市場のドル円は、米国がファーウェイに禁輸措置を取ったことを嫌気して株安から円高とはなったものの、下がったところでは買いも見え思いの外底堅い展開を続けました。欧州市場に入りユーロ売りがドル円にも波及しドルの買い戻しが出る中、NY市場では強めの経済指標に引っ張られ週間高値を更新したことからテクニカルなドル買いも目立ちました。一時109.97レベルの高値をつけたものの大台トライはできず、引けにかけてはやや押して引けました。

5月17日(金)
東京市場のドル円は、仲値までは買いが先行し110円台に乗せたものの、大台超えでは輸出をはじめとするドル売りオーダーにぶつかり反落。中国から米中通商協議に対して改めて中断の可能性が指摘され株式市場の下げとともにドル円も下落、NY市場の朝方には109.50レベルの安値をつけました。NY市場ではトランプ大統領が日欧の自動車関税を半年延期すると述べたこと、また強い経済指標も下支えとなり、引けにかけては東京朝方の高値を上抜け110.19レベルの高値をつけ若干押して引けました。

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