ドル円見通し 109円割れ回避からのジリ高続く(5/17)

米経済指標が総じて強かったことは、市場が期待している米連銀による利下げへの姿勢転換の可能性をやや後退させ、年内にもう1回の利上げが行われる可能性を

ドル円見通し 109円割れ回避からのジリ高続く(5/17)

ドル円見通し 109円割れ回避からのジリ高続く

【概況】

5月13日に米国が中国製品すべてへ制裁関税を拡大するとし、中国側も報復措置に出た中でドル円は13日深夜安値109.02円へ一段安した。しかしその後は株安を警戒してのトランプ大統領による米中合意への楽観的発言や自動車輸入関税引き上げ判断の先送り等をきっかけとして過度の悲観が緩み109円割れをひとまず回避した。15日夜には米経済指標が弱かったこともあり109.15円まで下げたが、そこでも109円割れを回避して下げ渋った。
16日夜の米経済指標が総じて予想を上回る良好な数字となったことでドルは全面高となり、NYダウも3日続伸、米長期債利回りも持ち直したためにドル円は16日深夜には109.96円まで上昇したが、110円乗せ及び13日夜に急落する前の10日高値110.04円には届かずに終わった。

米商務省が発表した4月の住宅着工件数は前月比5.7%増の123万5000戸となり市場予想の120万5000戸を上回った。また先行指標となる着工許可件数も同0.6%増の129万6000戸となり市場予想の129万戸を上回った。
米労働省が発表した週間の新規失業保険申請は前週比1万6000件減の21万2000件となり市場予想の22万件を下回る良好さだった。フィラデルフィア連銀の5月製造業景況指数も16.6へ上昇、市場予想の9.0及び前月の8.5を大幅に上回った。
米経済指標が総じて強かったことは、市場が期待している米連銀による利下げへの姿勢転換の可能性をやや後退させ、年内にもう1回の利上げが行われる可能性をやや高めたと思われる。
NYダウは5月13日に617.38ドル安と大幅下落した後は戻しに入り、14日に207.06ドル高、15日に115.97ドル高と連騰し、16日も214.66ドル高で3連騰となった。

米中問題はまだ混沌としており、株安継続を警戒した米大統領による楽観見通し発言の裏側では中国ファーウェイを米国市場から締め出す大統領令が署名されるなど対立は深刻な状況が続いている。ロス米商務長官は16日にファーウェイとの取引を原則禁止する措置を17日から発動すると述べている。
しかしそうした中でも上海株やダウが上昇し、米経済指標が強めなら13日への下落はやや悲観し過ぎたとして反騰期待も沸いてくる。6月の大阪G20での米中首脳会談と合意形成、さらに今月宣言された関税拡大の取りやめという流れも市場は期待し始める。しかし着実に対立構造は深まっており、トランプ大統領発言等もリップサービスを超える具体的な中身が伴っているとは言えない。ドル円は109円割れで下げ渋っているものの戻りが慎重なのは、そのあたりを意識しているからと思われる。

【ダブル天井型への懸念とレンジ拡張型持ち合いに踏みとどまる可能性】

下げ渋り程度ではなく上昇が本格的に再開する場合の目安としては日足で前日比0.60円以上の上昇となる陽線ないしは3日連続の陽線で合計1.50円を超える上昇が必要と思われる。例えば3月25日からの反騰時では3月26日に0.67円の上昇幅となる陽線、1月31日からの反騰時では2月1日に0.60円の上昇幅となる陽線、昨年8月21日底からの反騰は3連続陽線だったが3本目が8月23日の上昇幅0.71円の陽線、昨年5月29日底からの反騰時も6月1日に上昇幅0.72円の陽線を立てている。

3月5日高値から4月24日高値へ高値ラインは切り上がったが切り上がり幅がわずかだったためにダブル天井型の印象が強まった。両高値の谷間にあった3月25日安値を割り込んでいるためダブル天井が完成したように思われる。しかし、わずかでも高値ラインを切り上げたので、3月25日安値から5月13日へ安値を切り下げてもその後の反騰で揺れ返し上昇を続ければ、高値切り上げ・安値切り下がりの後にまた高値を切り上げして行くようなレンジ拡張型の逆三角持ち合いを形成する可能性も浮上する。

揺れ返しの上昇で4月24日高値に迫るには5月6日に111円割れへと崩れた状況を解消する必要があり、そこまで戻せないうちは3分の1から半値近くの戻りを入れたところから二段目の下落期に入り安値を更新してゆく下落基調へと進む可能性が残る。
米中問題については双方の関税対象及び税率の拡大、その一方での協議継続姿勢や合意への楽観見通し、自動車関税引き上げの判断先送りとファーウェイの締め出し等、強弱入り混じりであり、トランプ大統領らによる当局者発言も強硬姿勢と柔軟姿勢の二枚舌の様相でもある。大きな反騰へ進む可能性もある一方でもう一段安へと崩れるリスクも抱えた状況として臨機応変な対応が望まれるところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月13日夜に9日深夜安値を底割れしたために新たな弱気サイクルに入ったとして14日夜から16日深夜にかけての間への下落を想定してきた。また新たな強気サイクル入りは10日の戻り高値110.04円を超えるところからとし、超えないうちは一段安警戒としてきた。
16日深夜への上昇で109.96円を付けて10日高値に迫ったが、高値更新には至っていない。しかし13日深夜安値からの上昇も丸3日を経過しているので、13日深夜安値を直近のサイクルボトムとし、15日夜安値をダブル底とした強気サイクル入りと仮定する。トップ形成期は17日の日中から21日にかけての間とするが、10日高値から4日半となる16日深夜高値ですでにサイクルトップを付けた可能性もあるので、109.65円割れを弱気転換注意、109.45円割れからは弱気サイクル入りと仮定して20日夜から22日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では16日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化を弱気転換注意、先行スパン転落からは弱気サイクル入りと仮定して遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は16日深夜高値時に70ポイント超えへ上昇したがその後は失速している。高値切り上げに対する指数のトップ切り下がりとなる弱気逆行は見られないが、70ポイントを超えたので弱気逆行無しでも50ポイント割れからは下落期入りとなりやすいと考える。50ポイントを上回るうちは次の70ポイント超えから高値更新へ進むと仮定するが、その際に弱気逆行が見られればピークアウトからの下落再開を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109.65円、次いで109.45円を下値支持線、10日高値110.04円を上値抵抗線とする。
(2)109.65円を上回るうちは上昇余地ありとし、110.04円超えからは110.20円台への上昇を想定する。材料を伴って上昇の場合は110.50円台まで上値目途を引き上げる。
(3)109.65円割れを弱気転換注意とし、109.45円割れからは弱気サイクル入りと仮定して13日深夜安値109.02円割れを目指す下落期入りと考える。また109.45円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。(了)

【当面の予定】

5/17(金)
13:30 (日) 3月 第三次産業活動指数 前月比 (2月 -0.6%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 3月 建設支出 前月比 (2月 3.0%)
18:00 (欧) 3月 建設支出 前年同月比 (2月 5.2%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
18:00 (欧) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 1.7%、予想 1.7%)
23:00 (米) 4月 景気先行指指数 前月比 (3月 0.4%、予想 0.2%)
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (4月 97.2、予想 97.5)
24:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、会合参加

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