ドル円見通し 中国の対米関税拡大から一段安、株安円高深刻化か(5/14)

5月13日の日本時間21時過ぎに中国は米国からの600億ドル相当の輸入品に対する追加関税を最大25%に引き上げると発表した。

ドル円見通し 中国の対米関税拡大から一段安、株安円高深刻化か(5/14)

【概況】

5月13日の日本時間21時過ぎに中国は米国からの600億ドル相当の輸入品に対する追加関税を最大25%に引き上げると発表した。米国からの輸入品5140品目が対象で6月1日から適用する。この報道をきっかけにドル円は急落して23時台には109.02円の安値を付けた。その後は下げ渋っているものの109円台序盤にとどまっている。

米中閣僚級協議が5月9日と10日にワシントンで開催されたが合意に至らず、米国は中国への制裁関税率を10日から引き上げ、10日には中国からの輸入品全てを制裁関税対象とする方針を示していたが、中国も対抗措置をとった。米国はそのあと、10日に宣言していた追加関税につき、従来までの対象外だった3000億ドル相当の中国製品3805品目に最大25%の関税を上乗せするとし、7月以降に発動するとした。

米中貿易戦争深刻化によりNYダウは前日比617.38ドル安と大幅下落した。一時は720ドル安となり1月3日以来4か月半ぶりの急落幅となった。株安により安全資産として長期債が買われ、米10年債利回りは5.2ベーシスポイント低下して2.4033%となった。一時は2.389%まで低下して3月28日以来の低水準となったが、終値ベースでも3カ月物財務省短期証券TBレートを下回る逆イールドとなった。
為替市場では円とユーロが買われたためにメジャー通貨の加重平均であるドル指数は3日続落となったが、豪ドルやNZドルが下げ、人民元も大幅下落し、新興国通貨安や資源通貨安への懸念が強まった。

【昨年12月に近い動き】

ドル円は5月2日未明のFOMCや5月3日夜の米雇用統計等を111円台前半の水準で通過していたが、5月5日にトランプ米大統領が中国への制裁関税を追加発動すると宣言したことで米中貿易戦争深刻化懸念となって6日には110円台序盤へ一段安し、9日から10日の米中閣僚級協議を見守りながらも悲観先行で売られて9日深夜には109.47円まで下げた。週末は新たな安値更新を回避していたものの、中国の対抗措置と米国のさらなる制裁関税対象拡大により一段安を余儀なくされた状況だ。
NYダウや日経平均の下落規模は昨年10月から12月への世界連鎖株安時に近い角度で始まっている。ドル円の4月24日高値からの下落角度も昨年12月の急落時に近い印象がある。

米中双方ともに協議は継続されるとしているが、今のところ具体的な協議再開日程等は示されていない。トランプ大統領は6月20日の大阪G20で習近平主席と会談する意向を示しているが、それまでには1か月以上もある。米国側は中国製品ほぼすべてを関税引き上げ対象としたため、これ以上の制裁強化としては税率をさらに引き上げるしか手がなく、報復合戦としては限界に達したとも思われる。しかし問題はその現実的な影響であり、米中双方の実体経済への影響が出始めることがこれまで以上に懸念される。

米中貿易戦争深刻化による景気後退感が強まる場合には米連銀が利下げに動く可能性も高まる。米ボストン連銀のローゼングレン総裁は13日のインタビューで「米連銀には利下げを含む対応手段がある」と述べている。同総裁は現時点で引き下げが必要だとは思わないとも述べたが、株安が進めば市場も利下げ時期が早まるとみて債券高・長期債利回り低下を進め、米長期債利回り低下によるドル売り円買いも進みやすくなると思われる。

【3月5日と4月24日のダブル天井感強まる】

4月24日からの下落については、3月5日から高値を切り上げてからの下落だったために、高値更新後に安値を切り下げるレンジ拡張型の逆三角持ち合いの可能性もあったが、13日の一段安により3月5日と4月24日の両高値によるダブル天井形成からの下落期入りという印象が強まったと思われる。
また1月3日の日足及び週足が長大下ヒゲとなってV字反騰した状況が、2015年6月5日天井後の8月24日安値週の長大下ヒゲからの反騰時と前後状況が類似しているとし、GW明けの下落により2015年の年末から下落再開し始めた時に類似している印象もあるとしたが、その可能性も高まり始めたと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月9日深夜安値でボトムを付けて下げ渋っていたが、13日夜に底割れしたために新たな弱気サイクルに入ったと思われる。9日深夜安値を基準として次の安値形成期を14日夜から16日深夜にかけての間と想定する。新たな強気サイクル入りは10日の戻り高値110.04円を超えるところからとし、越えないうちは一段安警戒とする。

60分足の一目均衡表では9日深夜からの下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯していたが、13日夜の一段安により再び悪化した。5月6日以降は先行スパンから転落した状況も続いている。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパンそろって好転するところからとする。

60分足の相対力指数は13日夜に20ポイント台前半まで低下した。9日深夜安値から13日夜安値への一段安では指数のボトムがほぼフラットだが、9日から10日深夜にかけて指数のボトムが切り上がった状況から低下しているので弱気逆行という印象には至らず。50ポイント超えへ上昇できないうちは一段安警戒とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、109円を支持線、109.50円を抵抗線とみておく。
(2)109.40円台では戻り売りにつかまりやすいとみる。市場の悲観を後退させる材料を伴って109.50円を超えてくる場合は110円手前試しとするが、そこも戻り売りにつかまりやすいと注意する。
(3)109円割れからは1月31日安値108.50円試し、さらに割り込む場合は108円前後試しへ向かうとみる。108.50円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、109.50円以下での推移中は15日の日中も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

5/14(火)
10:30 (豪) 4月 NAB企業景況感指数 (3月 7)
14:00 (日) 4月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI (3月 44.8、予想 45.5)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 1.0%、予想 1.0%)
15:00 (独) 4月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 2.0%、予想 2.0%)
16:15 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、チューリッヒで講演
17:30 (英) 4月 失業保険申請件数 (3月 2.83万件)
17:30 (英) 3月 失業率・ILO方式 (2月 3.9%、予想 3.9%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 -0.2%、予想 -0.3%)
18:00 (欧) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -0.3%、予想 -0.8%)
18:00 (独) 5月 ZEW景況感期待指数 (4月 3.1、予想 5.0)

21:30 (米) 4月 輸入物価指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.7%)
21:30 (米) 4月 輸出物価指数 前月比 (3月 0.7%、予想 0.5%)
25:45 (米) ジョージ・カンザスシティ連銀総裁、講演

5/15(水)
08:50 (日) 4月 マネーストックM2 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.3%)
09:30 (豪) 5月 ウエストパック消費者信頼感指数 (4月 100.7)
11:00 (中) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 8.7%、予想 8.6%)
11:00 (中) 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 8.5%、予想 6.5%)
15:00 (独) 1-3月期GDP速報値 前期比 (前期 0.0%、予想 0.4%)
15:00 (独) 1-3月期GDP速報値 前年同期比 (前期 0.6%、予想 0.7%)
15:00 (独) 1-3月期GDP速報値・季調前 前年同期比 (前期 0.9%、予想 0.7%)
18:00 (欧) 1-3月期GDP改定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
18:00 (欧) 1-3月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.2%、予想 1.2%)

21:30 (米) 4月 小売売上高 前月比 (3月 1.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 小売売上高・除自動車 前月比 (3月 1.2%、予想 0.7%)
21:30 (米) 5月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (4月 10.1、予想 8.0)
22:15 (米) 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -0.1%、予想 0.0%)
22:15 (米) 4月 設備稼働率 (3月 78.8%、予想 78.8%)
23:00 (米) 5月 NAHB住宅市場指数 (4月 63、予想 64)
23:00 (米) 3月 企業在庫 前月比 (2月 0.3%、予想 0.0%)
25:00 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演

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