ドル円見通し 米中協議決裂懸念継続で円高基調(5/9)

米通商代表部(USTR)は 8日朝に中国からの輸入品2000億ドル相当に課している追加関税を10日午前0時1 分に10%から25%へ引き上げると公示した。

ドル円見通し 米中協議決裂懸念継続で円高基調(5/9)

【概況】

5月5日にトランプ米大統領が2000億ドル規模の中国製品に対する10%の追加関税を5月10日から25%へ引き上げると表明し、さらに現時点では関税を課していない3250億ドル相当の中国製品についても近く25%の関税を発動するとツイートしたことをきっかけに週明けからはリスク回避の円高が進んでいる。先週は111円台前半を中心とした小持ち合いだったが、6日午前に110.27円まで急落して一段安入りとなり、6日の戻りは111円に届かず、8日未明への下落で6日午前安値を割り込み、8日昼には109.90円をつけて3月26日以来の109円台を見た。8日夜には110.26円までわずかに戻したが9日早朝にかけてはジリ安推移であり、情勢変化による買い戻しの動きは見られず精彩を欠いている。

【米国は対中関税拡大発動を公示、9日からの米中協議結果待ち】

米通商代表部(USTR)は 8日朝に中国からの輸入品2000億ドル相当に課している追加関税を10日午前0時1 分に10%から25%へ引き上げると公示した。これに対して中国商務省は「対抗措置 を講じざるを得ない」と表明したため協議決裂懸念が増したが、その後にサンダース米大統領報道官が「中国側からは取引を成立させたいという意思表示を受けている」と述べたことから交渉決裂を決めつけるのは時期尚早としてNYダウが下げ渋り、ドル円も新たな安値更新には至っていないが、重苦しい状況が続いている。
5月9日と10日にはワシントンで米中閣僚級協議がもたれ、中国の劉副首相も出席する。先の北京協議で中国側が態度を硬化させたことで合意への進展が白紙に戻り、トランプ大統領が追加関税発動を決断したという流れのため、土壇場で急転直下の合意に至るのか決裂か、中国側が対抗措置に踏み切り貿易戦争がさらに深刻化するのかどうかを市場も見定めたいところだ。

交渉決裂なら株安債券高・長期債利回り低下とリスク回避のクロス円手仕舞いにより円高が進む。一方では貿易戦争拡大による中国及び世界景気の鈍化懸念で投機通貨・資源通貨等が売られてドルストレートではドル高が進みやすくなると思われる。週明けからはユーロは安値圏での横ばい、ポンドや豪ドル、NZドルは下落基調である。また3月後半に小規模なパニック売りが見られたトルコリラの下落が進み1月3日安値を割り込んで一段安に入っていることも新興国通貨全般への警戒感とドル高感を助長しつつある。メジャー通貨の加重平均であるドル指数はドル円での円高ドル安もあってここ数日はほぼ横ばい。

【60分足一目均衡表、サイクル分析と今週の目安】

【60分足一目均衡表、サイクル分析と今週の目安】

概ね3日から5日周期の短期的な高値安値形成サイクルでは5月6日午前安値を直近のサイクルボトムとして反発したが、7日午前時点では戻りは短命の可能性があるので111円台を回復できない内は110.50円割れから6日午前安値試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとした。8日未明への下落で6日午前安値を割り込んだため8日朝時点では6日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして9日から13日にかけての間への下落を想定した。8日夜へやや戻したもののその後はジリ安推移で安値圏に止まっているため引き続きボトム形成中とし、8日昼安値割れからの一段安警戒とする。強気転換は材料を伴って110.50円超えへ反騰するところからとする。

60分足の一目均衡表では3日夜からの下落で先行スパンから転落し、7日夜の下落で遅行スパンも悪化した。9日朝時点も両スパン悪化状態にある。先行スパンを上抜けない内は一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は8日昼安値時に20ポイント台序盤へ下落してから戻したものの中立点の50ポイントが抵抗となっている。6日午前安値から8日昼安値への一段安に対して指数のボトムは切り上がっているが、相場が現状からもう一段安する際に指数のボトムが切り上がれるかどうかが試されるとみる。50ポイント以下での推移中は一段安警戒とし、50ポイント台回復・維持からは上昇再開の可能性ありとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、5月8日昼安値109.90円を下値支持線、8日夜高値110.26円を上値抵抗線とする。
(2)110.26円を超えないかわずかに超えても維持できない内は一段安警戒とし、8日昼安値割れからは109.50円前後試しへ向かうとみる。その際は3月25日安値109.72円割れとなり、先行きの下落継続感が強まると考える。109.50円以下は目先の反発注意だが、米中協議関連でリスクオン心理が回復しない内は安値から0.50円前後の反発を入れても戻り一巡から更に一段安を繰り返しやすいとみる。
(3)110.26円超えからは110.50円試しとするが、110.50円前後では戻り売りに崩されやすいとみる。材料を伴って110.50円超えとなる場合はリバウンド継続の可能性ありとして110.70円台まで戻りの目安を切り上げるが、直前高値から0.50円以上の下落が発生するところからは下げ再開とみる。

【当面の主な予定】

5/9(木)
10:30 (中) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 2.3%、予想 2.5%)
10:30 (中) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 0.4%、予想 0.6%)
14:00 (日) 4月 消費者態度指数 (3月 40.5、予想 40.3)
21:30 (米) パウエルFRB議長、イベントで開会の辞
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 2.2%、予想 2.3%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前月比 (3月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 生産者物価コア指数 前年同月比 (3月 2.4%、予想 2.5%)
21:30 (米) 3月 貿易収支 (2月 -494億ドル、予想 -502億ドル)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.0万件、予想 22.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 167.1万人、予想 167.0万人)

22:45 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
23:00 (米) 3月 卸売在庫 前月比 (2月 0.2%、予想 0.0%)
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 0.3%、予想 0.2%)
26:15 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、昼食会で講演

5/10(金)
08:30 (日) 3月 全世帯消費支出 前年同月比(2月 1.7%、予想 1.6%)
10:30 (豪) 豪準備銀行(RBA) 四半期金融政策報告
15:00 (独) 3月 貿易収支 (2月 179億ユーロ、予想 189億ユーロ)
15:00 (独) 3月 経常収支 (2月 163億ユーロ、予想 260億ユーロ)
17:30 (英) 1-3月期 GDP速報値 前期比 (前期 0.2%、予想 0.5%)
17:30 (英) 1-3月期 GDP速報値 前年同期比(前期 1.4%、予想 1.8%)
17:30 (英) 3月 貿易収支・物 (2月 -141.12億ポンド、予想 -137.50億ポンド)
17:30 (英) 3月 貿易収支・全体 (2月 -48.60億ポンド、予想 -46.00億ポンド)
17:30 (英) 3月 鉱工業生産指数 前月比(2月 0.6%、予想 0.1%)
17:30 (英) 3月 鉱工業生産指数 前年同月比(2月 0.1%、予想 0.4%)
17:30 (英) 3月 製造業生産指数 前月比(2月 0.9%、予想 0.0%)

21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 消費者物価指数 前年同月比 (3月 1.9%、予想 2.1%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前月比 (3月 0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 4月 消費者物価コア指数 前年同月比 (3月 2.0%、予想 2.1%)
21:30 (米) ブレイナード米FRB理事、会議の冒頭の挨拶
22:08 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
23:00 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、講演
27:00 (米) 4月 月次財政収支 (3月 -1470億ドル、予想 1650億ドル)

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