ドル円2か月で7円超の上昇 基調転換警戒(3月第3週)

米連銀FRBは3月19日から20日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。

ドル円2か月で7円超の上昇 基調転換警戒(3月第3週)

ドル円2か月で7円超の上昇 基調転換警戒

【概況】

ドル円は3月2日高値112.07円と3月5日高値112.12円でダブルトップ型を形成して3月8日安値110.80円まで下落し、その後は111円台前半での持ち合いが続いてきたが、14日朝からの反発で15日昼には111.90円まで上昇した、しかし112円には届かずに111.50円前後まで下落して週を終えた。
3月8日への下落は株安、ユーロ円での円高、米雇用統計での非農業部門就業者数の伸びが悪かったことでリスク回避的な円高がドル・ストレートでのドル高に勝ったことが背景だった。8日以降はユーロ売りやポンド売りが一巡して戻りに入り、ドル・ストレートではドル安となる一方、リスクオン心理優先でドル円においてはドル高円安での推移となった。

3月12日の米消費者物価指数及び13日の米生産者物価指数の伸びがいずれも予想を下回ったことでのドル売りにより14日未明にかけてはドル円も押され気味の推移だったが、13日未明に111.00円を付けたところで下げ止まったことで買い戻され、12日及び13日に同値でつけた111.46円(3月5日深夜からの下げ幅に対する半値戻し)を超えてテクニカルに続伸して111.90円を付けた。しかし112円に乗せる勢いに欠いて15日夜は111.50円前後まで押して週を終えた。

【1月31日からの底上げを継続】

3月8日安値を割り込む下落へ進めば3月2日と5日深夜による112円到達でのダブルトップ形成からの下落感が強まるところだったが、その後の切り返しで直前下げ幅の半値以上へ戻したために1月3日からの上昇基調がまだ継続する可能性も残った印象だ。
1月3日暴落からの出直りが続いているわけだが、1月31日安値108.50円、2月27日安値110.33円、そして3月8日安値110.80円と高値更新後の調整でつけた安値は底上げを継続している。また2月27日及び3月8日安値は26日移動平均の手前で下げ止まっており、同線を支持線とした上昇トレンドが維持されている。
底上げパターンが継続するうちは次の上昇で高値更新へ進む可能性もあるが、3月8日安値を割り込むところからはそのパターンも崩れ、またこれまで支持線となってき

出直り相場の一巡による下げ再開感が強まると思われる。
3月12日は米生産者物価の伸びが予想を下回ったこと、13日も生産者物価の伸びが予想を下回ったことがドル安円高要因となった。また14日は上海総合株安と人民元安ドル高、反騰していたポンドの下げ等がドル高感を強めたこと、NYダウがてドル円の上昇に寄与したが、112円に乗せる勢いには欠いた。

【2015年8月の週足下ヒゲと今年1月3日週の下ヒゲの類似性】

今年1月3日の暴落とその後の反騰は週足でも長い下ヒゲとなった。この長い下ヒゲとよく似た展開が 2015年8月で見られる。 昨年10月4日から今年1月3日まで下落14週で下げ幅は9.72円、週足での下ヒゲは3.63円、その後は現在まで10週のV字反発で上昇幅は7.30円、75%戻した。 2015年類似例では、6月5日天井から下落13週で下げ幅は9.67円、当週の下ヒゲは5.46円、その後は13週で7.56円、78%を戻した。
2015年は12月に2.30円の週足陰線で下落再開となった。今回も週足で2円を超える下落が発生する場合は2015年と類似した展開へ進む可能性もあるものと警戒すべきだろう。

【FOMCで流れ変わるか】

米連銀FRBは3月19日から20日にかけて連邦公開市場委員会(FOMC)を開く。昨年12月の会合では2019年2回、2020年1回の利上げ継続姿勢を示していたが、1月末の前回会合では当面の追加利上げを棚上げする姿勢と保有資産圧縮計画の早期終了検討が示されてドル安のきっかけとなった。その後の議事録では年内利上げの可能性も残っている印象を与えたが、世界全般の経済指標の鈍化傾向や米中通商摩擦、英国のEU離脱問題等を抱える状況では追加利上げ棚上げ姿勢を維持すると思われる。またFOMCメンバーによる利上げ回数や金利水準予想の中央値も引き下げられるのではないかとみられる。

市場予想では今年の7−9月期に利上げされる可能性があるのではないかとの見方が多いようだが、今年は利上げがないのではないかという見方もかなりある。12月会合の姿勢を1月末の会合で大きく転換したことも踏まえると、FOMCのスタンスも市場動向や国際情勢によって振り回されやすく流動的とも思われる。
FOMCで7−9月期の利上げ確率が上昇して株式市場に動揺が見られなければドル高円安、年末まで利上げはないとの観測が強まるようならドル安円高反応の一方で株高が勢いつけばリスクオン心理優先でドル高円安という可能性もあり得るところだ。また利上げ棚上げがかなり長引く印象を与えても経済指標の悪化感や米中問題及び英国のEU離脱問題等でリスク回避的な株安が発生する場合は勢いのあるドル安円高となりえるところだ。FOMC声明及び議長会見からの初期的な市場反応とともに諸情勢も見定める必要がある。

【米中問題の不安はまだ継続】

中国国営の新華社通信は14日に中国の劉鶴副首相とムニューシン米財務長官らが14日に行った電話会談で貿易協議をめぐる実質的な前進があったと報じた。米中は閣僚級の電話協議を11日から何度か行っているようだが、ムニューシン米財務長官は米中首脳会談は「今月末には行わないだろう」と述べており、トランプ大統領も両国の合意を急がないと繰り返しているため、首脳会談実現の可能性が高まらないうちに両国間でのネガティブ報道があるようなら先行き不安により中国株安と人民元安を招き、ドル円にとってはリスクオフ的な円高ドル安反応を引き起こしやすくなると思われる。1月3日暴落後にドル円が出直りを継続できたのも米中協議が進展しない中で日米通商協議が先送りされていることもある。米中通商協議が先送りされる中で緊張感が増し、その上で日米通商協議も始まるという状況となる場合はやや油断気味のドル円もかなりの緊張を迫られると思う。

【高値更新か、3月8日安値割れかの分岐点】

1月3日安値から2か月強の上昇を継続してきた。日足では1月31日から2月27日、3月8日へと底上げし、1月23日から2月14日、3月5日と高値を切り上げてきた。この切り上げパターンが維持されるうちは上昇基調の継続性も維持されるが、パターンが崩れれば流れも変わるものだ。1月3日からは日足42本の上昇で上昇幅は7.30円だが、2018年3月26日から5月21日への日足41本の上昇で上昇幅が6.75円の後は3.27円安の下落が入った。2017年9月6日から11月6日へ日足で42本の上昇で上昇幅は7.40円だったがその後に3.88円の下落が入った。前者は3.27円安を押し目底として次の上昇へ進んだが、後者は2.90円のリバウンドを入れたが高値更新へ進めずに戻り一巡から暴落的な下げへ進んでいる。今回もそれらと同様に3円以上の下げを入れ、その後の反発具合で上昇再開なのか戻り一巡で下落基調へ進むのかという岐路が待っているのではないかと思われる。

ドル円2か月で7円超の上昇 基調転換警戒

2か月上昇後の大きな下落に入るか、その前にまだ高値を試すのかは3月5日高値を超えるか、3月8日安値を割り込むのかで決まってくるのだろうと思われる。3月5日高値超えなら112.50円、さらに12月暴落開始時の12月13日高値113.70円等を試して行く可能性があるが、3月8日安値割れからは底上げパターンが崩れたとみて109円前後、さらに1月31日安値108.50円を試しにかかる可能性があると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、111.20円を下値支持線、3月15日昼高値111.90円を上値抵抗線とする。
(2)111.20円を上回るか一時的に割り込んでも回復するうちは15日昼高値超えからの上昇で3月5日深夜高値112.12円を目指すとみる。112円到達ではいったん売られやすいとみるが、米FOMCをきっかけとした上昇なら112.12円を超えて112.50円、さらに113円台を目指す流れを想定する。
(3)111.20円割れからは3月14日未明安値111.00円、3月8日安値110.80円を順次試すとみる。110.80円割れからは日足レベルの底上げパターンが崩れるので急落商状となる可能性を踏まえつつ109円台前半への下落を想定する。またその際は先行きで1月31日安値108.50円試しへ向かう流れとみる。(了)<17日23:00>

【当面の主な予定】

3/18(月)
休 場 (メ) ベニートフアレス生誕日
08:50 (日) 2月 通関・貿易統計 季調前 (1月 -1兆4152億円、予想 3102億円)
08:50 (日) 2月 通関・貿易統計 季調済 (1月 -3700億円、予想 860億円)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報 前月比 (速報 -3.7%)
13:30 (日) 1月 鉱工業生産・確報 前年同月比 (速報 0.0%)
19:00 (欧) 1月 貿易収支 季調済 (12月 156億ユーロ、予想 150億ユーロ)
19:00 (欧) 1月 貿易収支 季調前 (12月 170億ユーロ)
23:00 (米) 3月 NAHB住宅市場指数 (2月 62、予想 63)
24:10 (欧) プラートECB専務理事 ルクセンブルクで講演

3/19(火)
   (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
09:30 (豪) 10-12月期 住宅価格指数 前期比 (前期、-1.5%、予想 -2.0%)
09:30 (豪) 10-12月期 住宅価格指数 前年同期比 (前期 -1.9%、予想 -5.0%)
09:30 (豪) 豪準備銀行(RBA行)金融政策会合議事要旨公表
18:30 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 4.0%、予想 4.0%)
19:00 (独) 3月 ZEW景況感・期待指数 (2月 -13.4、予想 -11.0)
18:30 (欧) プラートECB専務理事、討論会参加
23:00 (米) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 0.1%、予想 0.0%)

3/20(水)
英国のEU離脱協定の条件再提示期限(三度目の議会採決期限)
   (英) 英中銀(BOE)金融政策委員会(MPC)1日目
06:45 (NZ) 10-12月期 経常収支 (前期 -61.49億NZドル、予想 -35.50億NZドル)
08:50 (日) 日銀・金融政策決定会合議事要旨
09:00 (豪) ブロック豪中銀総裁、講演
16:00 (独) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 0.4%、予想 0.2%)
18:30 (英) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 -0.8%、予想 0.4%)
18:30 (英) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.8%、予想 1.8%)
18:30 (英) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.9%、予想 1.9%)
18:30 (英) 2月 小売物価指数 前月比 (1月 -0.9%、予想 0.7%)
18:30 (英) 2月 小売物価指数 前年同月比 (1月 2.5%、予想 2.5%)
18:30 (英) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.4%、予想 2.3%)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利発表 (現行 2.25-2.50%、予想 2.25-2.50%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長、定例記者会見

3/21(木)
休 場 (日) 春分の日
休 場 (南) 人権の日 
EU首脳会議(22日まで)
中国習近平国家主席、イタリア訪問(23日まで)
06:45 (NZ) 10-12月期GDP 前期比 (前期 0.3% 予想 0.6%)
06:45 (NZ) 10-12月期GDP 前年同期比 (前期 2.6%、予想 2.5%)
09:30 (豪) 2月 新規雇用者数 (1月 3.91万人、予想 1.50万人)
09:30 (豪) 2月 失業率 (1月 5.0%、予想 5.0%)
17:30 (ス) スイス国立銀行3カ月物銀行間取引金利誘導目標 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
18:30 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 1.0%、予想 -0.4%)
18:30 (英) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 4.2%、予想 3.3%)

21:00 (英) 英中銀(BOE)金利発表 (現行 0.75%、予想 0.75%)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 4350億ポンド、予想 4350億ポンド)
21:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
21:30 (米) 3月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (2月 -4.1、予想 6.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件、予想 22.5万件)
23:00 (米) 2月 景気先行指数 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.1%)
24:00 (欧) 3月 消費者信頼感速報値 (2月 -7.4、予想 -7.1)

3/22(金)
EU首脳会議(最終日)
08:30 (日) 2月 全国CPI前年同月比 (1月 0.2%、予想 0.3%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 0.8%、予想 0.8%)
08:30 (日) 2月 全国CPI・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (1月 0.4%、予想 0.4%)
10:30 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
17:30 (独) 3月 製造業PMI (2月 47.6、予想 48.0)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI (2月 55.3、予想 54.8)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調済 (12月 162億ユーロ)
18:00 (欧) 1月 経常収支・季調前 (12月 330億ユーロ)
18:00 (欧) 3月 製造業PMI (2月 49.3、予想 49.5)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI (2月 52.8、予想 52.7)
23:00 (米) 1月 卸売在庫 前月比 (12月 1.1%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 2月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (1月 494万件、予想 510万件)
27:00 (米) 2月 月次財政収支 (1月 87億ドル、予想 -2300億ドル)

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