ドル円見通し 111円台へ戻す。米中株動向注視(3/12)

週末からドル高が弛んでいる。月末からのポンド安とユーロ安が一服、英国の離脱問題での楽観論再燃からポンドが上昇、ユーロも連れて戻している。

ドル円見通し 111円台へ戻す。米中株動向注視(3/12)

ドル円見通し 111円台へ戻す。米中株動向注視

【概況】

ドル円は3月2日高値112.07円と3月5日高値112.12円でダブルトップ型を形成して下落に転じ、3月8日は上海株安等によるリスク回避感から111円を割り込み、8日夜の米雇用統計で非農業部門就業者数の伸びがわずか2万人増に止まったことで110.80円まで安値を切り下げた。しかし米雇用統計全体としては良好だったためにドル売り消化後はやや戻して週を終えた。
週明け11日午前には110.86円まで下げたものの週末の安値更新を回避、上海株が持ち直してNYダウも6日ぶりに反発したこともあって111円台前半へ戻している。
3月4日からのNYダウ下落、3月5日の中国全人代での成長計画の下方修正、3月7日のECBによる年内利上げ断念と量的緩和再開姿勢への転換及び成長率見通し等の下方修正、株安による債券買いからの欧米長期債利回り低下、8日の上海総合株価指数急落と日経平均の大幅下落が先週の円高要因だったが、ひとまず落ち着いている印象だ。

米商務省が発表した1月の小売売上高は前月比0.2%増となり市場予想の0.1%減を上回った。 自動車を除くと0.9%増となり市場予想の0.2%増を上回った。これらはドル高要因だったが市場反応は限定的だった。
全般状況的にはドル・ストレートでのドル高一服、クロス円での円高一服というところだ。

【ドル指数反落とポンド高】

週末からドル高が弛んでいる。月末からのポンド安とユーロ安が一服、英国の離脱問題での楽観論再燃からポンドが上昇、ユーロも連れて戻している。このため2月末から上昇してきたドル指数も8日に反落して11日も続落している。
パウエル米連銀議長は11日の米CBSテレビインタビューで景気情勢を忍耐強く見極めると強調したため、当面の利上げ棚上げ姿勢が再認識されたことはドル安要因だった。ドル指数の下落はドル円にとっては売り圧力だが、クロス円での円安がやや勝っているためドル円も8日安値からの緩やかな反発を継続している。
メイ首相がEU首脳と協議すると報じられたことで11日はポンドが大幅高していたが、12日朝時点の報道ではメイ英首相とユンケル欧州委員長が11日夜に英国離脱案の見直しで合意に達したと報じられ、12日朝にポンドが続伸している。

英国のEU離脱修正案の議会採決は12日に予定されている。否決なら13日以降に「合意なき離脱」か、月末の離脱を延期する意向とするのかの採決へ進む。土壇場での採決先送りの可能性もあるようだ。事態への楽観か悲観かでポンドも大きく動きやすいが、今のところはポンド円やユーロ円の上昇で全般的な円安感となっている。

【米中問題】

3月8日に4%以上の暴落的な下げとなった上海総合指数終値は11日に1.92%高と反発した。中国人民銀行の易綱総裁が金融緩和姿勢を示したことを好感したようだ。8週連続の大上昇から一転して急落したために世界連鎖株安への不安も涌いたがひとまず落ち着いた印象だ。しかし難問も山積みされている。中国商務省の王受文次官は米中通商協議について「昼夜を問わず」協議を継続していると述べたが、サンダース米大統領報道官は11日の記者会見で米中首脳会談について「まだ日程は設定されていない」と述べており、3月中の首脳会談実現についてはかならずしも楽観出来ない印象を与えた。WSJ紙は米朝首脳会談が物別れに終わったことを踏まえて中国が首脳会談に慎重になっているとし、破談を避けたい中国が3月下旬の訪米計画中止を申し出たとも報じている。

中国自動車工業協会が11日に発表した2月の新車販売台数は前年同月比13.8%減となり8か月連続の前年同月比マイナスとなった。1月は春節の影響もあって15.8%減だったが、2か月併せても前年同期比14.9%減である。
3月9日に発表された2月の中国CPIは前年比1.5%で前月の1.7%から鈍化し、政府目標の3%を下まわる状況が続いている。2月のPPIは0.1%で前月と同じ低調なままだった。3月8日発表された2月貿易統計でも輸出が20.7%減、輸入が5.2%減と大幅に悪化しており中国景気の減速懸念は強まっている。米中協議が双方にプラスなものとして打開しないことに下げ一服感も見られる米中株式市場も悲観的な展開になりかねない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月2日高値と3月5日深夜高値をダブルトップとした弱気サイクル入りとして7日深夜から12日未明にかけての間への下落を想定してきたが、3月5日未明安値から4日目となる3月8日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて反発に入っている。5日深夜高値を基準として今回のトップ形成期は8日深夜から12日深夜にかけての間と想定されるので既にトップアウト注意期にあるが、111円台を維持するか一時的に割り込んでも回復する内は12日夜にかけての上昇余地ありとする。111円割れから続落の場合は弱気サイクル入りと仮定して次のボトム形成期となる13日夜から15日夜にかけての間への下落を想定する。

ドル円見通し 111円台へ戻す。米中株動向注視

60分足の一目均衡表では12日午前への上昇で先行スパンから上抜けつつあるので、遅行スパン好転中は高値試し優先とみる。111円割れからは両スパン揃って悪化するため下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は60ポイントに到達してきているが、まだ相場の高値更新に対して指数のピークが切り下がる弱気逆行はみられないので上昇余地ありとみる。45ポイント割れへ下げてその後も50ポイント以下での推移に入る場合は下げ再開注意とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、111円を下値支持線、111.50円を抵抗線とみておく。
(2)111円台を維持する内は111.50円前後への上昇を想定する。5日深夜からの下げに対する半値戻しが111.46円のため111.50円前後は戻り売りにつかまりやすいとみる。また株高等から111.50円を超える場合は111.70円台へ上値目処を引き上げるが、111.50円から111.70円台にかけては断続的な戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)111円割れから続落に入る場合は下げ再開とみて8日安値110.80円試しとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして13日夜以降への下落継続を想定する。その場合は110.25円から110.00円にかけてのゾーンを目指すとみる。(了)<9:35>

【当面の主な予定】

3/12(火)
英国のEU離脱修正案の議会採決期限
EU財務相理事会(ブリュッセル)
18:30 (英) 1月 商品貿易収支 (12月 -121.02億ポンド、予想 -122.00億ポンド)
18:30 (英) 1月 貿易収支 (12月 -32.29億ポンド、予想 -35.00億ポンド)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 -0.5%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -0.9%、予想 -1.3%)
18:30 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 -0.7%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.6%、予想 1.6%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.2%、予想 2.2%)

3/13(水)
米大統領選の元トランプ選対幹部に判決(ワシントンの連邦地裁)
08:30 (豪) 3月 ウエストパック消費者信頼感指数 (2月 103.8)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 -0.6%、予想 0.1%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 0.6%、予想 0.7%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前月比 (12月 -0.1%、予想 -1.5%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前年同月比 (12月 0.9%、予想 -2.1%)
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 -0.3%、予想 -0.3%)

19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.9%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.2%、予想 -2.1%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 2.0%、予想 1.9%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比] (1月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.6%、予想 2.6%)
21:30 (米) 1月 耐久財受注 前月比 (12月 1.2%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 1月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (12月 0.1%、予想 0.1%)
23:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 -0.6%、予想 0.4%)
26:00 クーレECB理事、講演

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