ドル円見通し米雇用統計に困惑するも三羽烏(3月第2週)

ドル円は1月3日暴落からの出直りが続き、3月2日に112.07円、3月5日には112.12円までわずかに高値を切り上げて間の上昇幅は7.30円まで拡大した。

ドル円見通し米雇用統計に困惑するも三羽烏(3月第2週)

ドル円見通し米雇用統計に困惑するも三羽烏

【概況】

ドル円は1月3日暴落からの出直りが続き、3月2日に112.07円、3月5日には112.12円までわずかに高値を切り上げて間の上昇幅は7.30円まで拡大した。1月3日から1月23日への上昇は直前の暴落に対する自律的な反発レベルだったが、それを超えて111円台到達へと二段上げに入ったのは株高によるリスクオン心理の拡大によるものだった。2月末からNYダウの上昇が頭打ちとなる中、米連銀による当面の利上げ棚上げ姿勢というドル売り材料を消化し、米中通商協議の膠着、中国景気の鈍化、欧州の経済指標悪化傾向等を背景にドル高がぶり返したためにドル円は112円に到達した。しかし112円台を維持できずに3月4日からのNYダウ続落、3月5日の中国全人代での成長計画の下方修正、3月7日のECBによる年内利上げ断念と量的緩和再開姿勢への転換、株安による債券買いからの米長期債利回り低下が円高要因となり3月8日には111円割れまで下落した。

【中国株、8日に4%超の急落】

中国は3月5日からの全人代で2019年の年間成長率見通しを6.0%から6.5%の範囲へ引き下げた。
3月8日に発表された中国の2月貿易統計では輸出の伸び率が前年同月比でマイナス20.7%、輸入もマイナス5.2%となった。年末までは米中貿易戦争問題での駆け込み需要があったが先行き不安を背景に輸出入ともに大幅な減速に陥っている。
3月9日に発表された2月の生産者物価指数は前年比0.1%上昇にとどまり市場予想の0.2%を下回ったが、これは2016年9月以来の低水準だった。2月の消費者物価指数は前年比1.5%上昇で市場予想と一致したが、1月の1.7%からは鈍化して2018年1月以来の低水準となり、3%の政府目標を下回っている。
上海総合株価指数は1月3日から大上昇に入り前週まで8週連続の上昇だった。3月4日も続伸し、3月5日の全人代後も3月7日まで勢いを継続していたが8日は前日比4.4%の急落となった。貿易統計悪化がかなり響いたと思われる。この結果、週間足は8週連続陽線の後、長い上ヒゲを付けて9週ぶりの陰線引けとなった。

上海株は2015年6月に大天井を付けて同年8月へ暴落、同年末まで大きく戻したが2015年末から2016年1月に暴落第二段に入り、世界連鎖株安を発生させた。NYダウはその間に凡そ14%下落、日経平均は凡そ26%下落している。

NYダウは3月7日への下落で26日移動平均を割り込み、8日も安値からは戻したものの終値ベースでは5日続落となった。日経平均も3月8日の下落で26日移動平均を割り込んでいる。これらの動きは昨年10月からの世界連鎖株安、昨年1月末からの同様の株安発生時の序盤に近い印象がある。
中国が成長率見通しを引き下げ、米連銀が利上げを棚上げする姿勢を示し、ECBも利上げを断念して成長率及び物価上昇見通しを大きく下方修正させたのは、それだけ足元の景気実態がもろく、先行き不安がぬぐえないからといえる。株安が債券高・長期債利回り低下を招けば、投機通貨売りによりドル・ストレートでのドル高基調が継続しやすくなる一方、クロス円では円全面高となりやすい。

【当面のポイント】

3月5日深夜高値112.12円から8日夜安値110.80円までの下げ幅は1.32円。1月31日以降の上昇途中の小規模調整安レベルを超えてきている。米雇用統計での非農業部門就業者増加数が予想外の低水準だったことで安値を付けた後は111円台を回復して下げ止まったが、戻りは鈍いまま週を終えた。
1月23日から1月31日への下落幅は1.49円であり、3月8日夜への下落幅はまだそれを超えていない。しかし3月8日へ日足は3日連続の陰線であり、1月3日からの上昇も2か月を経過し、7円を超える上昇幅を実現した直後の下げであることを踏まえれば、1月3日からの上昇一巡による下落開始の可能性も十分に警戒すべきところと思われる。

	ドル円見通し米雇用統計に困惑するも三羽烏

これまでも指摘してきたが、長期的な上昇基調の中にあっても、昨年3月26日から5月21日への上昇(6.75円)から5月29日への下落(3.27円)が発生している。また2017年9月8日から11月6日天井へ7.40円の上昇後に11月27日へ3.88円の下落が発生している。今回も上昇基調を継続するとしてもそれらと同様の下落規模の調整安に入っても不思議ない。因みに昨年5月29日への下落並みとすれば108.85円、2017年11月27日への下落並みとすれば108.24円と計測される。また1月3日からの上昇幅に対する半値押しは108.47円である。
米連銀の利上げ棚上げ、ECBの利上げ断念、株安はドル円への大きな圧迫要因となる。大きな調整安入りを回避して出直るには株高、米中協議進展へのより大きな期待によるリスクオン心理の再開が必要だろう。

以上を踏まえて、当面のポイントを示す。
(1)3月8日の日足レンジにより、111.69円を上値抵抗線、110.80円を下値支持線とみておく。
(2)110.80円割れ回避のうちは111.69円試し、超えれば112円台回復からさらに高値更新へ進む可能性も出てくると思うが、相当程度にリスクオン心理拡大となる情勢変化がなければ112円到達ではまた売られやすいとみる。
(3)110.80円割れからは直前高値から3円超規模の下落に向かうと仮定し、1月29日安値108.50円を目指す下落を想定する。108.50円以下はいったん買い戻しも入りやすいとみるが、110円以下での推移が続くうちはさらに下落規模が拡大する可能性があるとみる。(了)<10日23:00>

【当面の主な予定】

3/11(月)
ユーロ圏財務相会合(ブリュッセル)
トランプ米大統領、2020年度予算教書発表
08:50 (日) 2月 マネーストックM2 前年同月比 (1月 2.4%、予想 2.4%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.4%、予想 0.5%)
16:00 (独) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -3.9%、予想 -3.4%)
16:00 (独) 1月 貿易収支 (12月 139億ユーロ、予想 152億ユーロ)
16:00 (独) 1月 経常収支 (12月 210億ユーロ、予想 179億ユーロ)
21:30 (米) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -1.2%、予想 0.1%)
21:30 (米) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -1.8%、予想 0.2%)
23:00 (米) 12月 企業在庫 前月比 (11月 -0.1%、予想 0.6%)

3/12(火)
英国のEU離脱修正案の議会採決期限
EU財務相理事会(ブリュッセル)
08:50 (日) 1-3月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (前期 4.3)
08:50 (日) 1-3月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (前期 5.5)
09:30 (豪) 2月 NAB企業景況感指数 (1月 7)
18:30 (英) 1月 商品貿易収支 (12月 -121.02億ポンド、予想 -122.00億ポンド)
18:30 (英) 1月 貿易収支 (12月 -32.29億ポンド、予想 -35.00億ポンド)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前月比 (12月 -0.5%、予想 -0.2%)
18:30 (英) 1月 鉱工業生産指数 前年同月比 (12月 -0.9%、予想 -1.3%)
18:30 (英) 1月 製造業生産指数 前月比 (12月 -0.7%、予想 -0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 0.0%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.6%、予想 1.6%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前月比 (1月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.2%、予想 2.2%)

3/13(水)
米大統領選の元トランプ選対幹部に判決(ワシントンの連邦地裁)
08:30 (豪) 3月 ウエストパック消費者信頼感指数 (2月 103.8)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前月比 (1月 -0.6%、予想 0.1%)
08:50 (日) 2月 国内企業物価指数 前年同月比 (1月 0.6%、予想 0.7%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前月比 (12月 -0.1%、予想 -1.5%)
08:50 (日) 1月 機械受注 前年同月比 (12月 0.9%、予想 -2.1%)
13:30 (日) 1月 第三次産業活動指数 前月比 (12月 -0.3%、予想 -0.3%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 -0.9%、予想 1.0%)
19:00 (欧) 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 -4.2%、予想 -2.1%)

21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前月比 (1月 -0.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 生産者物価指数 前年同月比 (1月 2.0%、予想 1.9%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前月比] (1月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 生産者物価コア指数 前年同月比 (1月 2.6%、予想 2.6%)
21:30 (米) 1月 耐久財受注 前月比 (12月 1.2%、予想 -0.5%)
21:30 (米) 1月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (12月 0.1%、予想 0.1%)
23:00 (米) 1月 建設支出 前月比 (12月 -0.6%、予想 0.4%)
26:00 クーレECB理事、講演

3/14(木)
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
11:00 (中) 2月 鉱工業生産 前年同月比 (1月 5.7%、予想 5.5%)
11:00 (中) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 8.2%、予想 8.1%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前月比 (1月 0.5%、予想 0.5%)
16:00 (独) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (1月 1.6%、予想 1.6%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.3万件、予想 22.5万件)
21:30 (米) 2月 輸入物価指数 前月比 (1月 -0.5%、予想 0.3%)
23:00 (米) 1月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (12月 62.1万件、予想 62.5万件)

3/15(金)
中国全国人民代表大会(全人代)閉幕、李克強首相会見
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表 (現行 -0.10%、予想 -0.10%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (1月 1.5%、予想 1.5%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (1月 1.0%、予想 1.0%)
21:30 (米) 3月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (2月 8.8、予想 10.0)
22:15 (米) 2月 鉱工業生産 前月比 (1月 -0.6%、予想 0.4%)
22:15 (米) 2月 設備稼働率 (1月 78.2%、予想 78.5%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報 (2月 93.8、予想 95.6)

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