ドル円見通し ドル全面高でもドル円は下落(3/8)

英ポンド、豪ドル、カナダドル等も軒並み下落した。これらドルストレートでのドル全面高の一方、クロス円では円が全面高となった。

ドル円見通し ドル全面高でもドル円は下落(3/8)

【概況】

1月3日暴落後の反騰を継続して先週末の3月2日には112.07円を付け、さらに5日深夜には112.12円まで高値を更新したがいずれも112円台を維持しきれずにその後はジリ安が続いている。
7日夜には欧州中銀ECBが定例理事会で年内の利上げを見送り、新たな資金供給による緩和策を発表したことでユーロが大幅下落して他通貨もつれ安となりドルは全面高となった。その後ドル円は若干上昇する場面もあったものの深夜以降に安値を切り下げている。ECBの緩和政策と物価や成長率見込みの下方修正により独10年債利回りが急低下し、米長期債利回りもつれて低下したために金利差面でドル円は押される格好となった。また世界的な景気減速への懸念によりNYダウが4日続落となり、株安によるリスク回避感もドル円の上値を抑えた。
米10年債利回りは前日比0.05%低下の2.64%。NYダウは前日比200.23ドル安。メジャー通貨の加重平均であるドル指数は3日続伸で7日の高値では昨年12月14日高値97.72に迫る97.71へ上昇した。

ユーロドルはECB政策発表からの急落で昨年11月安値を割り込み2018年2月高値以降の安値を更新、3か月続いた持ち合い圏から転落した。英ポンド、豪ドル、カナダドル等も軒並み下落した。これらドルストレートでのドル全面高の一方、クロス円では円が全面高となった。

米労働省が発表した週間の新規失業保険申請は季節調整済みで22万3000件となり前週比3000件減少、市場予想の22万5000件を下回った。
米連銀のブレイナード理事は7日の講演で「昨年の米景気は非常に好調だったが今年の見通しは引き下げた」、「金利の道筋を緩やかに引き下げることが妥当だ」と発言した。米連銀は1月末のFOMCで当面する追加利上げを棚上げする姿勢に転じたが、3月19日から20日に開催される次回FOMCでは2019年及び2020年の利上げ予想や金利水準見通し等が発表される見込みで、いずれも下方修正される可能性が高まったと思われる。

【ECBは緩和姿勢を拡大】

欧州中銀ECBは7日の定例理事会で2019年内の利上げを断念した。これまでは「少なくとも2019年の夏まで政策金利を据え置く」としてきたが、今回は「少なくとも2019年末まで」に変更した。また銀行による民間融資を促進するための新たな資金供給策として、条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)を9月から再開するとした。TLTROは従来型で第三弾となる。2019年の実質GDP成長率見込みについては12月時点の1.7%から1.1%へ下方修正し、消費者物価も同1.6%から1.2%へ下方修正した。
ドラギ総裁は会見で「年内は景気拡大ペースの大幅な鈍化が続く」「景気の勢いの弱まりで物価目標の達成も遅れつつある」と述べた。

ユーロドルは2017年1月底1.0341ドルから2018年2月高値1.2555ドルまで凡そ1年間上昇したが、2018年11月13日安値1.1215ドルまで下落した。その後の3か月半は新たな安値更新を回避して持ち合い型での推移だったが、3月7日夜の急落で底割れした。長期的な下落基調の再開として先行きもドル高を助長すると思われる。

【NYダウが26日移動平均を割り込む】

NYダウが4日続落した。昨年10月からの大暴落を12月26日安値から切り返してV字反騰を続けてきたが、2月25日高値の後は新たな高値更新へ進めずにいた。3月4日に一時は400ドル超の下落となり終値で前日比206.67ドル安となったが、5日に13.02ドル安、6日に133.17ドル安、そして7日が200.23ドル安と崩れ始めている。
注目すべきは3月7日の下落により日足では26日移動平均を割り込んだことだ。昨年10月3日天井からの大暴落や昨年1月26日天井からの暴落はいずれも大上昇後の26日移動平均割れから始まっている。世界的な景気後退懸念が2月25日以降の反落開始の背景となっているが、米中通商協議の進展期待や中国当局による景気刺激策期待で上海株は大上昇を続けているもののNYダウは追従できなくなっている。

ドル円とNYダウは必ずしも相関するものではないが、株高はリスクオン心理を助長してクロス円での円売り他通貨買いを助長するため、ドル円においても上昇要因となりやすい。逆に株安が深刻化する場合はリスクオフ心理でクロス円の手仕舞い売りにより円高感が強まりドル円も下落しやすい。この1年間ではドル円の2018年3月26日底から10月4日への上昇がNYダウの4月2日から10月3日への上昇と重なり、NYダウの12月26日への暴落がドル円の12月からの暴落的な下げと同調した。1月3日からのドル円の反騰継続もNYダウのV字反騰継続に支えられてきた。
3月8日の米雇用統計内容次第ではダウも持ち直す可能性があるが、雇用統計後に下落基調が強まる場合は株安によるドル円への売り圧力拡大として警戒すべきだと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月5日未明へいったん下げてからの反騰で5日深夜には2日未明高値をわずかに上抜いたため、6日朝時点では5日未明安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとした。また5日未明安値111.64円割れ回避のうちは上昇余地ありとしたが、112円台を維持できずにいたために5日未明安値割れからは2日未明高値と5日深夜高値によるダブルトップからの弱気サイクル入りとした。
6日深夜の下落で5日未明安値を割り込み、7日朝も続落したために7日朝時点ではダブルトップ形成からの弱気サイクル入りとして7日深夜から12日未明にかけての間への下落を想定した。7日夜の反発も戻り高値切り下がりにとどまり8日未明へ安値を切り下げているのでまだ一段安余地ありとみる。ただし前回サイクルボトムから3日を経過しているので111.70円超えを強気転換注意、111.85円超えからは強気サイクル入りと仮定して8日夜から12日深夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では3月5日深夜高値からの反落で遅行スパンが悪化し、6日夜には先行スパンからも転落した。その後も両スパン悪化が続いているので、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパンを上抜くところからは強気サイクル入りと仮定して遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は7日から8日未明にかけての安値切り下がりに対して指数のボトムが切り上がる強気逆行気配がみられるので55ポイント超えからは上昇再開の可能性が高まるとみるが、50ポイント台を維持できずに40ポイント割れするところからはもう一段安の可能性が高まるとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月8日未明安値111.48円を下値支持線、111.70円から111.85円を上値抵抗線とみておく。
(2)111.70円を下回るうちは111.48円割れからの一段安余地ありとし、111.25円から111.00円にかけてのゾーンを試す下落を想定する。111.00円前後では買い戻しが入りやすいとみるが111.70円以下での推移が続くうちは週明けも安値を試しやすいとみる。
(3)111.70円超えを強気転換注意とし、111.85円超えからは強気サイクル入りと仮定して3月5日深夜高値112.12円試しを想定する。111.75円を上回るうちは週明けも高値試しを続けやすいとみるが、112円に届かないか、届いても早々に失速する場合は111.70円割れから下げ再開を疑う。

【当面の主な予定】

3/8(金)
未 定 (中) 2月 貿易収支・米ドル (1月 391.6億ドル、予想 271.5億ドル)
未 定 (中) 2月 貿易収支・人民元 (12月 2711.6億元、予想 1220.0億元)
11:00 (米) パウエルFRB議長、講演
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前月比 (12月 -1.6%、予想 0.5%)
16:00 (独) 1月 製造業新規受注 前年同月比 (12月 -7.0%、予想 -3.1%)
22:30 (米) 2月 雇用統計・非農業部門就業者数 前月比(1月 30.4万人、予想 18.5万人)
22:30 (米) 2月 失業率 (1月 4.0%、予想 3.9%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前月比 (1月 0.1%、予想 0.3%)
22:30 (米) 2月 平均時給 前年同月比 (1月 3.2%、予想 3.3%)

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