ドル円見通し111円が重い、日米通商協議も意識(2/28)

27日午後にはインドとパキスタンの軍事衝突報道もあり、リスク回避的な円買いで夕刻には110.33円まで続落して2月15日安値110.25円に迫ったが、

ドル円見通し111円が重い、日米通商協議も意識(2/28)

【概況】

2月26日未明高値で111.23円をつけて2月14日高値111.12円をわずかに超えたが反落した。26日夜の米連銀パウエル議長の上院議会証言における当面の利上げ棚上げ姿勢の再確認がドル安を助長した事、米中協議への過度な楽観が後退し始めたこと、ポンドやユーロの上昇及び人民元高によりドル安感が強まったことが背景だった。
27日午後にはインドとパキスタンの軍事衝突報道もあり、リスク回避的な円買いで夕刻には110.33円まで続落して2月15日安値110.25円に迫ったが、安値更新を回避してリバウンドに入った。26日深夜は110.75円割れから下げが加速したが、27日夜は逆に110.75円超えから買いの連鎖となり、米長期債利回り上昇もあって111.07円まで戻すも111円台は重く、28日早朝は111円台を維持できずに失速している。
27日夜の急伸については、印パ緊張による円高がやや過剰だったとして買い戻されたこともあるが、米10年債利回りが2.69%へ上昇、30年債利回りも3.07%へ上昇したことも一因だった。大量の社債発行予定による債券需給緩和感による債券売り・利回り上昇と思われる。

【米中に加えて日米通商協議に対する警戒感】

27日未明から反落したのはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表の議会証言からの様だ。
ライトハイザー代表は米議会の公聴会証言で「米中通商協議合意までにまだ多くの解決すべき課題が残っている」と述べてこの問題に対する市場の楽観見通しを後退させた。同代表は「中国による追加の米国製品購入だけでは十分でなく、米は中国に著しい構造的変化を求めている」、「通貨の切り下げ競争を防ぐことを目標とした履行を強制させられる為替合意に向けて交渉を進めている」と述べた。
日本との通商協議についても3月に訪日して正式に開始したいとし、日本が主導した環太平洋連携協定(TPP)により米国の輸出環境が悪化する懸念があるとし、対日交渉は「緊急性が高い」と述べた。また「米自動車業界が訴えている通り日本を含むアジア各国には為替の問題がある」とも述べて為替問題を取り上げる姿勢を示した。米自動車産業界等は対日交渉に関して貿易に有利な通貨安誘導を封じる「為替条項」や、車の輸出台数を規制する「数量制限」を求めている。

米中協議でも通貨条項が覚書に盛り込まれる流れとなっているが、日本も大きな標的となっていることを再認識させた。こうした為替条項問題を意識すると、ドル円も111円に乗せても維持しきれず、更に一段高へ走るには心理的にも荷が重くなる。ドル円がそうした壁を超えて大幅上昇してゆくにはドル自身の強気材料によりドル全面高が発生する必要があるが、そうならない内はドル円の戻りもそろそろ限界に来ているのではないかとの懸念も強まり始めると思われる。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2月26日未明への上昇で14日高値を上抜いたものの失速したために27日朝時点では26日未明高値をサイクルトップとした弱気サイクル入りとし、安値形成期は28日朝から3月4日朝にかけての間と想定した。また110.75円を下回る内はボトム形成への下落継続警戒とし、110.75円超えからは強気転換注意とした。
27日夜に110.75円を超えて111円台にいったん到達するところまで戻したため、27日夕安値を直近のサイクルボトムとする。戻りは短命の可能性もあるので既に28日未明高値でサイクルトップをつけてしまった可能性もあると注意するが、ドル高材料を伴っての27日未明高値超えからは28日夜から3月4日かけての間への上昇と111円台中盤試しを想定する。

60分足の一目均衡表では27日夜の反騰で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いたが、その後は反落しているため、先行スパンに再び潜り込みやすい位置にある。先行スパンへ潜り込んでも早々に切り返す内は上昇余地ありとするが、潜り込んで続落の場合は弱気転換注意とし、遅行スパン悪化ないしは先行スパンから転落する場合は下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は28日未明への上昇で70ポイントを超えてから失速している。26日未明高値及び14日高値形成時も70ポイント超えからの失速で当面の高値をつけているので今回も反落開始警戒とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.75円下値支持線、28日未明高値111.07円を上値抵抗線とする。
(2)110.75円を上回る内は111.07円超えから一段高入りする可能性が残る。高値更新なら111.30円から111.50円台への上昇を想定するが、111.30円以上は反落警戒圏とみる。
(3)110.75円割れからは下げ再開の可能性を優先して27日夕安値110.33円試しへ向かうとみる。110.33円割れの場合は26日未明高値からの下落が二段下げ型となるため、26日未明から27日夕への下げ波動並として110.17円、さらに円高が加速する材料を伴って下落の場合は戻り幅の倍返しで109.59円等へ下値目処が切り下がる可能性もあるとみる。

【当面の主な予定】

2/28(木)
10:00 (中) 2月 国家統計局製造業PMI (1月 49.5、予想 49.4))
14:00 (日) 1月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (12月 2.1%、予想 10.0%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 -0.8%、予想 0.4%)
22:00 (独) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.5%)
22:00 (米) クラリダFRB副議長、全米企業エコノミスト協会での講演
※米GDP統計は政府機関閉鎖時の影響で速報値と改定値が統合で発表
22:30 (米) 10-12月期GDP 前期比年率 (前期 3.4%、予想 2.2%) 
22:30 (米) 10-12月期個人消費 前期比 (前期 3.5%、予想 3.0%)
22:30 (米) 10-12月期コアPCE 前期比 (前期 1.6%、予想 1.6%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 ( 前週 21.6万件、予想 22.0万件)
22:50 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、討論会参加

23:45 (米) 2月 シカゴPMI (1月 56.7、予想 57.5)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演
27:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演

3/1(金)
06:45 (NZ) 1月 住宅建設許可件数 前月比 (12月 5.1%)
08:30 (日) 1月 失業率 (12月 2.4%、予想 2.4%)
08:30 (日) 2月 東京都区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (1月 1.1%、予想 1.0%))
09:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
10:45 (中) 2月 財新製造業PMI (1月 48.3、予想 48.5)
17:55 (独) 2月 製造業PMI改定値 (速報 47.6、予想 47.6)
17:55 (独) 2月 失業率 (1月 5.0%、予想 5.0%)
18:00 (欧) 2月 製造業PMI改定値 (速報 49.2、予想 49.2)
18:30 (英) 2月 製造業PMI (1月 52.8、予想 52.0)

19:00 (欧) 1月 失業率 (12月 7.9%、予想 7.9%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価指数速報値 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.5%)
19:00 (欧) 2月 消費者物価コア指数速報値 前年同月比 (1月 1.1%、予想 1.1%)
※米個人消費統計は政府閉鎖で延期された12月分と1月分を併せて発表
22:30 (米) 1月 個人所得 前月比     
22:30 (米) 1月 個人消費 前月比 
22:30 (米) 1月 PCEデフレーター 前年同月比 
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前月比
22:30 (米) 1月 PCEコア・デフレーター 前年同月比
24:00 (米) 2月 ISM製造業景況指数 (1月 56.6、予想 56.0)
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数確報 (速報 95.5、予想 95.6)
27:15 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

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