今週の週間見通し
先週のドル円は、週初から米中通商協議が次官級、閣僚級と相次いで実施され、貿易摩擦解消への期待が高まりました。金曜には米中双方から進展があったとのコメントはあったものの、ムニューシン財務長官からはいまだ詰める点も多いとの言及もあり、今週からはワシントンで継続協議の予定となっています。
先週前半は協議進展思惑、そして米国連邦機関閉鎖回避の思惑からドル買いとなっていましたが、弱い米国の経済指標をきっかけにドル安へと反転、またゾロ目初物を好むインターバンクディーラーが年初来高値となった111.11でドル売りオーダーをそれなりに出したとも思われ、短期的には111円台は売り、110円の大台割れは買いといったとなってきました。
今週は、米中通商協議が継続されますが、ある程度の落としどころが見えてきているのではないかと思わせる半面で、制裁関税猶予を延長するという話があり、これは即ち2月末までにまとまるほど、双方の主張が近づいていないということでもあります。ムニューシン財務長官の発言、進展はあるがまだ詰める点が多いという言葉通りに受け止めてよいでしょうから、時期についてはまだ当分かかると見ていた方がよいように思えます。
株式市場はすでにまとまることを織り込んでの上昇となっていますが、為替市場は多少冷静な様子で、結果を見るまではわからないというところでしょうか。また米国の経済指標も強弱ミックスする状況となってきましたし、欧州の景気減速懸念は強い状況であることから金融政策面では主要国での利上げ思惑がかなり後退しています。CME(シカゴマーカンタイル取引所)のFF(政策金利)先物の利上げ織り込み度では、今年12月の現状維持よりも利下げを見込む向きが増えてきている状態です。
このFF先物は毎月限月制を取っていて2年先まで取引が行われています。そしてCMEが、今後のFOMCの開催日に合わせてFF先物の取引状況から、将来時点での政策金利の
市場参加者による織り込み度をリアルタイムで計算公表しています。この利上げ織り込み度のうち、今年12月FOMC時点でどのような見方がされているかについて、かなり興味深い数字が出てきています。
これまでは、現状維持(2.25〜2.50%)圧倒的多数のコンセンサスとして取引されていましたが、金曜終値時点での取引状況を見ると現状維持以外では、利下げ思惑が多数です。CMEのサイトからそのまま数字を引っ張ると以下のようになっています。
利上げ 3.2%
現状維持 85.3%
利下げ 11.5%
この分布が以前に比べればハト派方向に傾いてきていることは事実で、最近では明らかに利下げ>利上げの状態が恒常的となっていて、金利差の面で為替市場はややドル買いに消極的にならざるを得ないといったところだと思われます。
またフローについて17日の日経新聞朝刊に、本当にそうかと思わせる記事がありました。同記事によると投機筋がドルを買い戻す動きが見られ、先週からそうした声が増えているとのこと。その中にはシカゴの通貨先物のポジションも引き合いに出されていましたが、発表が再開したとはいえ、直近に発表された数字もまだ1月22日分まで。年初の円高からその後の動きを考えると急激に円売りポジションが減っているのは当然として、本当にその後に改めて円売りポジションに動いているのかどうかは憶測にすぎません。
先週の為替水準を考えると円売りに戻してきていることは想像がつきます。ただこれが本流なのかどうか、またどの程度まで戻してきているのか、については私としては本流にまではなっていいないのではないかという感じです。
テクニカルにも見てみましょう。日足チャートをご覧ください。
年初1月3日のフラッシュクラッシュ翌日安値からのサポートラインと、それに平行なラインを先週高値に合わせて引いてありますが、現状はこの上昇チャンネルの動きの中で短期的には上限をトライしたのが先週という見方をしたいと思います。111.11のレートについては書いた通りですが、ゾロ目にこだわらなくても昨年高値と今年安値の61.8%戻しにあたる110.87(赤のターゲット)よりもドル高の水準は目先の高値となりやすい水準です。この後はいったんサポートライン(現在109円台前半を上昇中)には距離はあるものの、110円の大台割れをいったんトライしてそこからどうか、再度上がるにしても調整を挟む段階にあるのではないかと見ています。
また前回まで書いてきた通りですが、輸出業者からすれば期末に向けてどこで売っても問題ない水準ですが、ここまでそれほど目立って大きく輸出予約が出ているという感じもありません。今週は先週のレンジよりもやや下方向に考え、109.65レベル(年初来安値と先週高値の23.6%押し、青のターゲット)をサポートに、111.00レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
2月18日(月)
**:** NY市場休場
**:** 英国離脱相、EUと協議予定
**:** 米中通商協議、ワシントンで継続予定(今週)
2月19日(火)
09:30 豪中銀理事会(5日)議事要旨公表
18:00 ユーロ圏12月経常収支
18:30 英国1月失業率
19:00 ユーロ圏12月建設支出
19:00 ドイツ2月ZEW景況感指数
19:00 ユーロ圏2月ZEW景況感指数
19:15 デギンドスECB副総裁講演
22:50 (クリーブランド連銀総裁講演)
24:00 プラートECB理事講演
24:00 米国2月NAHB住宅市場指数
2月20日(水)
06:45 NZ10〜12月期PPI
08:50 本邦1月貿易収支
16:00 ドイツ1月PPI
17:00 南ア1月CPI
24:00 ユーロ圏2月消費者信頼感速報値
27:30 セントルイス連銀総裁講演
28:00 FOMC(1月30日)議事録公表
2月21日(木)
09:30 豪州1月失業率
16:00 ドイツ1月CPI改定値
16:45 フランス2月企業景況感
17:00 プラートECB理事講演
17:15 フランス2月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ2月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏2月製造業・サービス業PMI速報値
21:30 ECB理事会(1月24日)議事要旨公表
21:50 アトランタ連銀総裁講演
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:30 米国12月耐久財受注
23:45 米国2月製造業・サービス業PMI速報値
24:00 米国1月景気先行指数
24:00 米国1月中古住宅販売件数
25:00 週間原油在庫統計
26:25 カナダ中銀総裁講演
2月22日(金)
07:30 豪中銀総裁議会証言
08:30 本邦1月CPI
16:00 ドイツ10〜12月期GDP改定値
18:00 ドイツ2月ifo企業景況感
19:00 ユーロ圏1月CPI
24:15 NY連銀総裁講演
24:30 ドラギECB総裁講演
27:30 セントルイス連銀総裁講演
27:30 フィラデルフィア連銀総裁講演
前週の主要レート(週間レンジ)
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
2月11日(月)
東京は休場、中国市場は旧正月明けとなりましたが中国の株価が強かったことを受け、海外の日経先物が上昇、それを見ての円安相場となりました。道中ストップオーダーも引っ掛けながら海外市場では欧州通貨売りドル買いの影響も重なり、ドル円は年初来高値を更新、110.46レベルまで水準を切り上げ高値圏での引けとなりました。
2月12日(火)
ドル円は東京前場に大幅高となった日経平均株価を見てリスクオンの動きが目立ちました。米中通商協議への期待に加え米国連邦機関の再閉鎖回避の見通しもドル買いに弾みをつけ後場には110.65レベルを2度トライしました。その後は実需筋と利食いの売りに押されてNY市場前場には東京早朝の水準まで押しましたが、引けにかけてはダウの大幅高とともに再び高値圏に近づいて引けました。
2月13日(水)
ドル独歩高の一日となりました。ドル円は前場に高寄りした日経平均株価を交換してリスクオンの円売りが継続、その後もじり高の展開が続きました。欧州市場で若干の押しを挟んでからもNY市場では予想よりも強いCPI、また目新しい材料では無いものの米中通商協議閣僚級、連邦機関再閉鎖回避といった思惑を背景にドル円は一時111.06レベルまで上昇し高値圏での引けとなりました。
2月14日(木)
ドル円はNY市場までは111円を挟んで高値圏でのもみあいが続いていましたが、小売売上高を初め米国の経済指標が軒並み予想よりも弱かったことを嫌気して株安、リスクオフの動きからドル円も反落する動きとなりました。その後も米中通商協議の決着には時間がかかりそうなコメントも出たことからドル円は110.47レベルまで水準を切り下げ、安値圏での引けとなりました。
2月15日(金)
東京前場は前日の流れを継続して株安、円高の動きとなりました。後場には買い戻しも見られましたが、欧州市場序盤には110.25レベルへと水準を切り下げての海外市場入り。欧州市場ではムニューシン財務長官とライトハイザーUSTR代表が習近平主席と通商問題で会談、双方から進展があったとの発言を好感し株式市場は大きく反転する動きにつながりました。株高を受けドル円もリスクオンの動きになり、NY市場朝方に強い経済指標も手伝って110.64レベルの高値をつけ、それ以降は110円台半ばでのもみあいのまま一週間を終えました。
ディスクレーマー
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オーダー/ポジション状況
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