ドル円見通し 1月31日から10日間上昇後の反落(2/15)

米週間失業保険申請件数、生産者物価、小売売上高が相次いで発表されたが総じて予想より悪かったことで米景気減速懸念が強まりドルが急落、NYダウも反落

ドル円見通し 1月31日から10日間上昇後の反落(2/15)

【概況】

2月4日深夜に110.15円まで上昇して110円台に到達した後は丸1週間の持ち合いだったが、11日夜に一段高となり、14日昼には111.12円へ続伸した。今回の一段高は先週の持ち合い幅の倍返しなら110.77円、1月31日安値から2月4日深夜への上昇幅並みのN字型二段上げとすれば111.18円等が当面する上値目途と考えられていて、111.12円に上昇したことで概ねこれらに到達したところで夕刻まで足踏みが続いていた。
22時半に米週間失業保険申請件数、生産者物価、小売売上高が相次いで発表されたが総じて予想より悪かったことで米景気減速懸念が強まりドルが急落、NYダウも反落したためにドル円は発表直後から売られて110.50円台まで切り下げた。その後も売り物一巡による反騰へ進めずにいる。

【1月の米小売前月比は2009年9月以来の悪化】

米商務省が発表した昨年12月の小売売上高は季節調整後で前月比1.2%減となった。低下率は2009年9月のマイナス2.4%以来約9年ぶりの低水準。週間新規失業保険申請件数も季節調整済みで前週比4000件増の23万9000件となり市場予想の22万5000件を上回った。
1月の生産者物価指数は全体の前月比が前月に続いてマイナス0.1%となり市場予想の0.1%を下回った他、全体の前年同月比は2.0%で市場予想の2.1%を下回った。コア指数は前月比が0.3%となり市場予想0.2%、前年同月比は2.6%で市場予想の2.5%を上回った。
総じて市場予想を下回るか低調な水準で、発表後にドルが売られ、NYダウも下落した。

1月31日の米連銀FOMCは米景気の先行き不透明感から追加利上げを棚上げする姿勢を示し、保有資産圧縮計画を早期に切り上げる姿勢を示したが、最近の欧州経済指標および米経済指標は成長の鈍化ないし悪化が目立ち始めており、米連銀の慎重姿勢を裏付けるものとなっている。
13日に米連銀のブレイナード理事はCNBCのインタビューで「保有資産の縮小策は年内に終了すべき」、「金融政策は様子見をしつつ入手するデータを注視することが極めて適切」と述べて追加利上げ停止が妥当との姿勢を示した。

【米大統領の非常事態宣言の可能性、米中閣僚級協議動向】

米政府機関の再閉鎖懸念及び米中通商協議が不調に終わる懸念が当面の大きなリスク要因だが、いずれもややリスク回避感を後退させる動きとなっている。
サンダース報道官は米上下院で合意された予算案についてトランプ大統領が署名する意向と述べており、米政府機関閉再鎖懸念はひとまず解消された。しかしトランプ大統領は不法移民対策としてのメキシコ国境の壁建設については必要な予算を確保するために「非常事態宣言を含む大統領権限を行使する」姿勢とも述べており、非常事態宣言がもたらす混乱への懸念が新たなリスク要因となりつつある。
米中通商協議は2月11日から次官級協議が行われ、14日から15日までは閣僚級協議が行われる。米中の合意形成へ向けて3月1日の協議期限をさらに引き延ばす可能性が出てきているとメディアが報じている。15日には習近平国家主席を交えた閣僚級協議もあるため進捗動向に関する報道で金融市場全体が大きく動く可能性もあると注意する。

米大統領による非常事態宣言の可能性や米中協議の決裂懸念、英国のEU離脱問題での混乱等、リスク要因も多い。2月13日まではこれらリスク要因に対する楽観姿勢がやや優勢のなかで株高が続いてきた。またユーロやポンドの弱さが目立ったことで相対的にドル高も進んできた。ドル円も株高に背中を押されて111円台に到達したのだが、110円を超えたところから現状に至るまでの間は、市場心理もかなり慎重で神経質なところを抱えたままで進んできた。リスク回避感が再び後退して株高に後押しされてさらに高値を更新してゆく可能性もあるが、1月3日暴落後のリバウンドがそろそろ一巡して1月31日への下落時並みないしはそれ以上の大きな調整局面に入る可能性も併せ持っているところと思われる。2月14日の日足陰線は高値から安値へ0.50円強の下げ幅だったことで1月末からの上昇一服感も出やすい週末と心得る。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは2月4日深夜高値からの横ばい持ち合いから上放れしたため、12日朝時点では持ち合い後半の2月7日夜安値ないしは終点の2月9日朝安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りが考えられるとしてきた。また2月6日安値から4日目となる2月12日夜を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りの可能性も検討されるとした。
14日深夜の下落で110.50円を割り込み始めたため、14日昼高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は12日深夜安値を基準として15日夜から19日夜にかけての間と仮定する。ただし先週末安値から丸4日を経過しているので110.75円超えからは強気転換注意とし、111円超えからは新たな強気サイクル入りとして19日から21日にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では14日深夜への急落で先行スパンから転落、遅行スパンも悪化した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気回復は先行スパンを上抜くところからとする。

60分足の相対力指数は12日から14日への高値切り上げにおいて弱気逆行が見られたため14日朝時点では60ポイント割れからは下げやすくなると指摘した。30ポイント台序盤まで下降しているが、50ポイント超えへ戻せないうちは続落警戒とみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.75円を上値抵抗とし、下回るうちは安値試しを続けやすいとみる。
(2)110.00円前後を当面の下値目途とするが、1月31日からの二段上げで丸10日間上昇した後の反落とすれば、先週後半の109.50円台まで下押す可能性があると注意する。
(3)110.75円超えからは先行スパンへもぐり込み始めるので上昇再開の可能性が高まるとみて111円試しとし、111円超えからは先行スパン突破及び遅行スパン好転も重なるので上昇再開として111円台中盤試しへ向かうとみる。

【当面の主な予定】

2/15(金)
米国、3週間のつなぎ予算期限
10:30 (中) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 0.9%)
10:30 (中) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 1.9%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.1%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.9%)
18:30 (英) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -0.9%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 3.0%、予想 3.4%)
18:30 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -1.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (12月 2.6%、予想 3.1%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 151億ユーロ、予想 163億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 190億ユーロ)

22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 3.9、予想 7.5)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 -1.0%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -0.6%、予想 -0.1%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.3%、予想 0.1%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 78.7%、予想 78.8%)
23:55 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁(FOMC投票権有)、講演
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (1月 91.2、予想 94.0)

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