ドル円 株高債券安ドル高背景に111円到達(2/14)

2月11日から北京で米中通商問題の次官級協議が始まっており、14日からは閣僚級協議に入る。

ドル円 株高債券安ドル高背景に111円到達(2/14)

【概況】

1月後半は110円に到達できず、1月31日の米FOMCにかけて米連銀の利上げ棚上げ姿勢への転換見込みによるドル安で下落して108.50円の安値を付けたが、その後の切り返しで2月4日深夜に110円に到達した。2月11日の日中まではユーロ安等によるドル高感と米中協議問題等へのリスク回避的な円高感が均衡して109円台後半を中心とした持ち合いだった。しかし、11日夜の高値更新からはドル高感が勝り、リスク回避感も後退し始めて高値追及となり、13日はNYダウ連騰、株高による債券安で米10年債利回りが2.70%へ上昇、欧州経済指標が弱い中でユーロ安が進んでドル高感がさらに強まった。9連騰から12日に下げていたドル指数が1月31日以降の高値を更新、ドル円も111円に到達している。2月4日高値から6日への下げ幅の倍返しが110.77円、31日から4日への上昇幅並みの二段上げとすれば111.18円、31日への下げ幅の倍返しなら111.48円等が上値計算値として意識されるところとしてきたが、これら上値計算値を順次クリアしている印象だ。

【米中協議進展への期待】

米中協議進展への期待が高まり、米政府機関再閉鎖への懸念が後退している。
2月11日から北京で米中通商問題の次官級協議が始まっており、14日からは閣僚級協議に入る。トランプ米大統領は13日に「非常に順調だ」と述べて合意に向けた進展に期待感を示した。12日時点でトランプ大統領は「中身のある合意に近づけば(3月1日の交渉)期限を若干延長することもできる」と述べており、サンダース大統領報道官も13日に交渉期限延長の可能性を排除しないと述べ、訪中している米農務省高官は3月中に米中首脳が会談するとの見通しも示した。またサンダース報道官は首脳会談が開催されるとすれば米南部フロリダ州パームビーチにあるトランプ氏の別荘という具体的な可能性にも言及した。
ムニューシン財務長官とライトハイザー通商代表部(USTR)代表は15日に習近平国家主席と会談する。
米連邦政府機関の暫定再開3週間の期限が2月15日に到来するが、既に上下院が予算合意しておりトランプ大統領の署名待ちとなっている。米CNNテレビは大統領に近い関係筋の話として大統領が署名の意向と報じている。

【ユーロ安等でドルが押し上げられ、ドル円の上昇を後押し】

米労働省が発表した1月の消費者物価指数は前月から横ばいだった。前月が当初のマイナス0.1%から横ばいに修正されたために横ばいが3カ月連続となった。コア指数は0.2%の上昇だった。また前年同月比は1.6%上昇、コア指数では同2.2%上昇した。前年同月比の市予想は全体が1.5%上昇、コアが2.1%上昇だった。市場の反応は限定的だったが、夕刻に発表されていた英国やユーロ圏の経済指標が悪かったことから相対的にドル高要因と受け止められた。

ユーロ圏の12月鉱工業生産は前年同月比でマイナス4.2%となり、市場予想のマイナス3.2%、前月のマイナス3.0%からさらに悪化した。英国の1月消費者物価は前月比マイナス0.8%となり市場予想のマイナス0.7%を下回り、12月の0.2%から低下した。英国の経済指標悪化が目立つが、12日は鉱工業生産がマイナス0.5%(予想+0.2%)、11日には10−12月期のGDPが前期比0.2%(前期は0.6%)と悪化している。ブレクジット問題では主要企業が英国から大陸側へ拠点を移す動きが広がり始めており、合意無き離脱へ向けて実体経済への影響も出始めている。

ユーロドルは1月31日からの下落基調が続いて13日には1.1250ドルを割り込んで11月13日安値1.1215ドル割れへの余裕が乏しくなっている。12日安値からやや戻していた英ポンドも反落しており、1月25日からの下落基調が続いている。一方でドル指数は9連騰後の12日に反落したものの13日には戻り高値を更新している。米連銀の追加利上げ棚上げ姿勢はドル安要因ではあるが、ユーロやポンドがドル以上に弱さを見せているために相対的にドルが押し上げられている印象だ。ユーロ安やポンド安によるドル高効果だけではドル円を大きく押し上げられなかったとしても、株高によるリスクオン心理が加わればドル円においてもドル高円安へとなびきやすい。先週まではやや控えめだったドル円も1週間の持ち合いを通過して高値を更新したために上放れ感、チャート的な強気感が増し始めたために111円到達へこぎつけたということだろう。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは2月4日深夜高値からの横ばい持ち合いから上放れしたため、12日朝時点では持ち合い後半の2月7日夜安値ないしは終点の2月9日朝安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りが考えられるとした。また2月6日安値から4日目となる2月12日夜を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りの可能性も検討されるとした。111円に到達したことによる高値警戒感と先高感が交錯するところと思われるが、110.50円を上回るうちは上昇余地ありとみる。110.50円割れからは、いったん弱気サイクル入りとして14日午後から18日朝にかけての間への下落を想定する。ただし、いったん弱気転換した後に直前の下げ幅の半値以上を解消するところからは次の上昇期に入る可能性があると注意する。

60分足の一目均衡表では11日の上昇で先行スパンを突破したが13日夜の続伸で先行スパン突破状態を維持し、遅行スパンも好転を維持している。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とし、遅行スパン悪化からは弱気サイクル入りの可能性を優先して先行スパン帯を試し下落を想定する。ただし遅行スパンが悪化した後に再び好転するところからは上昇再開の可能性ありとみる。

60分足の相対力指数は11日から12日にかけての高値更新時に弱気逆行した。また12日から14日朝への高値切り上げにおいても弱気逆行が見られる。週明けから丸3日の上昇のため高値警戒感も出やすいところとみて60ポイント割れからは下げやすくなると注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、110.75円を下値支持線、111.20円を上値抵抗線とみておく。
(2)110.75円を上回るうちは高値更新余地ありとみる。111.10円台後半では売られやすいとみるが、111.20円超えからは111.50円前後試しへ向かうとみる。111.50円以上は反動安入り警戒とする。
(3)110.75円割れからは110.50円前後への下落を想定する。110.50円割れからはいったん弱気サイクル入りとして110.20円台への下落を想定するが、市場がリスクオフへ急旋回するような状況がなければ110円台前半は押し目買いから次の上昇へ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

2/14(木)
米中閣僚級協議開始
未 定 (中) 1月 貿易収支・米ドル (12月 570.6億ドル、予想 320.0億ドル)
未 定 (中) 1月 貿易収支・人民元 (12月 3949.9億元、予想 2359.5億元)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前期比 (前期 -0.2%、予想 0.1%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 前年同期比 (前期 1.1%、予想 0.8%)
16:00 (独) 10-12月期GDP速報値 季調前 前年同期比 (前期 1.1%、予想 0.8%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前期比 (速報 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10-12月期GDP改定値 前年同期比 (速報 1.2%、予想 1.2%)

22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 22.5)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前月比 (12月 -0.2%、予想 0.1%)
22:30 (米) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 2.5%、予想 2.1%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前月比 (12月 -0.1%、予想 0.2%)
22:30 (米) 1月 生産者物価コア指数 前年同月比 (12月 2.7%、予想 2.5%)
22:30 (米) 12月 小売売上高 前月比 (11月 0.2%、予想 0.1%)
22:30 (米) 12月 小売売上高・除自動車 前月比 (11月 0.2%、予想 0.0%)
24:00 (米) 11月 企業在庫 前月比 (10月 0.6%、予想 0.3%)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、講演

2/15(金)
米国、3週間のつなぎ予算期限
10:30 (中) 1月 生産者物価指数 前年同月比 (12月 0.9%)
10:30 (中) 1月 消費者物価指数 前年同月比 (12月 1.9%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前月比 (速報 -0.1%)
13:30 (日) 12月 鉱工業生産・確報値 前年同月比 (速報 -1.9%)
18:30 (英) 1月 小売売上高 前月比 (12月 -0.9%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 3.0%、予想 3.4%)
18:30 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前月比 (12月 -1.3%、予想 0.2%)
18:30 (英) 1月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (12月 2.6%、予想 3.1%)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調済 (11月 151億ユーロ、予想 163億ユーロ)
19:00 (欧) 12月 貿易収支・季調前 (11月 190億ユーロ)

22:30 (米) 2月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (1月 3.9、予想 7.5)
22:30 (米) 1月 輸入物価指数 前月比 (12月 -1.0%、予想 -0.1%)
22:30 (米) 1月 輸出物価指数 前月比 (12月 -0.6%、予想 -0.1%)
23:15 (米) 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 0.3%、予想 0.1%)
23:15 (米) 1月 設備稼働率 (12月 78.7%、予想 78.8%)
23:55 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁(FOMC投票権有)、講演
24:00 (米) 2月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (1月 91.2、予想 94.0)

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