ドル円111円台半ばを試しやすい一週間(週報12月第2週)

先週の下落幅は週初の高値から7%を超えましたが、今朝は改めてリスクオフの動きとなり、ダウ先物は夜間取引で先週木曜の安値を下回ってきています。

ドル円111円台半ばを試しやすい一週間(週報12月第2週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週初の米中首脳会談で米中間の貿易摩擦がいったん停戦、制裁関税も90日の猶予と雪解けムードでスタートしましたが、実際に米国寄りの協議が進むのか疑問も多い中でのファーウェイCFO(創業者の娘)逮捕劇で、一気に米中間の緊張が高まり、それに沿って米国株式市場を中心にリスクオフの動きが強まりました。金曜のコラムに書いた通りですが、先週の下落幅は週初の高値から7%を超えましたが、今朝は改めてリスクオフの動きとなり、ダウ先物は夜間取引で先週木曜の安値を下回ってきています。

現在のドル円を取り囲む材料はいくつかあり、ひとつめは米国金利です。これは12月のFOMCにおける政策金利の引き上げと、長期金利の低下による長短金利差がフラットニングしてきていることの2点があります。ふたつめは米中間の貿易摩擦の行方であり、先週末に制裁関税猶予となった直後に中国のファーウェイCFO逮捕劇となっています。そして外部要因として、11日実施予定の英国議会におけるブレグジット案採決があります。週末にメイ首相が採決延期をほのめかしていることもあって、今週中に採決が行われるのかどうかが不透明となっています。通ればポンド高・ドル安、否決されればポンド安・ドル高の影響が出ますが、動く方向はわかっても結果がわからないどころか日程までわからない状況では材料にはしにくいところです。

またホワイトハウスでは大統領首席補佐官が年内に辞任するとの報道もあり、引き続きドルにとっての懸念材料の方が多い様子です。

長短金利差に関しては、ここ1年ほどでかなりイールドカーブがフラット化しつつありますが、週初の段階では1年から5年まではほぼフラット、需給の関係もあって先週から5年債の利回りは1〜3年債の利回りよりも低い逆イールド(右肩下がり)の状況となっています。まだ10年債よりも長い期間では利回りは高いものの、12月の利上げ以降は更なるフラットニングが予想されます。

こうした動きを懸念して、金曜にはセントルイス連銀総裁がイールドカーブがフラット化しつつあることからFRBの12月利上げが1月以降に先送りされる可能性に言及しました。さすがにそれは無いだろうと思うものの、12月のFOMCにおいて最近のパウエル議長以上にハト派な発言が出てくる可能性もありますし、2019年の利上げ見通しが大きく変化する可能性もあり12月19日のFOMC結果が注目されます。

ハト派よりの会見になると考える市場参加者が多い中で、その通りとなった場合に株価が上昇する方向(リスクオンでドル高)についていくのか、単純に引き締め減速としてドル安ととらえるのか、クリスマスを控え市場参加者が減る中で注意が必要です。来週もう一度考えてみますが、現状の為替市場はドル売りとして捉えている様子です。

そして、ファーウェイの事件で米中間の貿易摩擦が政治的な摩擦にまで発展し始めているのですが、実際にファーウェイは違反を犯しているわけですから、米国としては切り札を切ったわけで、中国としては90日以内の米国寄りの合意に何らかの誠意を示すのではないかと考えられます。その場合はいったん摩擦が緩和されるという先週初のような動きとなる可能性もありますが、トランプ大統領がそう簡単に納得するとも思えませんし、引き続き米国の保護主義が世界的な景気鈍化につながるリスクと金融市場へのリスクオフについては気になります。

テクニカルにはどうでしょうか。日足チャートをご覧ください。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の週間見通し

先週示したサポートとレジスタンスのもみあいを先週後半の下げで、現状は下抜きつつある段階です。そうなると8月安値と10月高値との押しを考えることとなりますが、半値押しが112.16、61.8%押しが111.60(それぞれ赤のターゲット)となっていて、すぐにでも半値押しの水準は試すことができる距離です。

今週は英国議会の採決が行われるかどうかがドル全体に影響を与えますが、その前に米国の株価次第では61.8%押し水準も視野に入れておくべきでしょう。今週はいったんはドル安方向への流れを強めると考え、111.60レベルをサポートに113.00レベルをレジスタンスとする週を見ておこうと思います。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優12先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

12月10日(月)
06:45 NZ7〜9月期製造業売上高
08:50 本邦7〜9月期GDP改定値
08:50 本邦10月国際収支
16:00 ドイツ10月貿易収支
16:00 トルコ7〜9月期GDP
18:30 英国10月GDP
18:30 英国10月貿易収支

12月11日(火)
09:30 豪州11月NAB企業景況感
09:30 豪州7〜9月期住宅価格指数
16:00 トルコ10月経常収支
17:30 デギンドスECB副総裁講演
18:30 英国11月失業率
19:00 ドイツ12月ZEW景況感指数
19:00 ユーロ圏12月ZEW景況感指数
22:30 米国11月PPI
**:** 英議会ブレグジット案採決(延期の可能性あり)
**:** 伊・EU首脳会談
28:15 NZ中銀総裁議会証言

12月12日(水)
08:30 豪州12月WBC消費者信頼感
17:00 南ア11月CPI
17:15 スペイン中銀総裁講演
19:00 ユーロ圏10月鉱工業生産
20:00 南ア10月小売売上高
22:30 米国11月CPI
24:30 週間原油在庫統計
**:** イタリア修正予算案提出

12月13日(木)
16:00 ドイツ11月CPI
16:45 フランス11月CPI
17:30 スイス中銀政策金利発表
18:00 ノルウェー中銀政策金利発表
18:30 南ア11月PPI
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:45 ECB理事会
22:30 ドラギECB総裁会見
22:30 米国新規失業保険申請件数
**:** EU首脳会議(〜14日)

12月14日(金)
08:50 日銀短観
11:00 中国11月鉱工業生産、小売売上高
17:15 デギンドスECB副総裁講演
17:15 フランス12月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 オーストリア中銀総裁講演
18:30 ラウテンシュレーガーECB理事講演
22:30 米国11月鉱工業生産、小売売上高
23:45 米国12月製造業・サービス業PMI速報値
24:00 米国10月企業在庫

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

12月3日(月)
朝方こそ米中首脳会談での制裁関税猶予を材料としたリスクオンの動きから113円台後半へと上昇したものの、114円台を前に実需の売りが出たことや、実際に90日という短い期間で協議が進むことに対する疑問もあり、じり安の展開となりました。欧州市場序盤には113.38レベルと金曜安値圏に沈んだものの下値も底堅く、株価が全般に強い動きとなっていたことから引けにかけては朝方の高値圏に近づいての引けとなりました。

12月4日(火)
ドル円は東京前場から株価とともに下げるリスクオフの動きが強まりました。もともとは週初の株式市場で米中首脳会談後の思惑的なリスクオンの動きが強すぎたことが原因ですが、5日がブッシュ元大統領の追悼で米国株式市場が休場となることから、ポジション調整の売りが売りを呼ぶ展開となり、株式市場もドル円も大きく下げることとなりました。海外市場でもリスクオフ旋風が続き、NYダウが場中に800ドルを超える下げとなるとドル円も112.58レベルまで売り込まれ、引けにかけてはやや戻しての引けとなりました。

12月5日(水)
ドル円は日経平均が前日の夜間取引での下げから上昇へと転じた動きとともにリスクオフの巻き返しによる買い戻しが目立ちました。NY市場はブッシュ元大統領の追悼で株式市場が臨時休場となったこともあり、取引自体は低調なままでしたが引け間際には113.24レベルまで回復し高値圏でのクローズとなりました。


12月6日(木)
ドル円はNY引け後にファーウェイCFOが逮捕されたことを受け、NYダウを中心に株価が急落しリスクオフによる円買いが先行しました。下がったところでは実需買いも見られ、欧州市場序盤にはいったん売られる前の水準にまで戻す場面も見られましたが、その後は再びドル売りの動き。NY市場に入ってからは米国貿易赤字が悪化したことも重なって、ユーロドルがリードする形でドルが全面安、ドル円はNYの昼前には112.23レベルまで水準を切り下げました。引けにかけては急速にダウが下げ幅を縮める動きとともにドルも買い戻され、NY市場朝方の水準へと戻して引けました。

12月7日(金)
前日NY後場以降の流れを受けドル円は底堅い地合いとなっていましたが、米国雇用統計前ということもあって基本的に動意薄のまま海外市場入り。NY市場では雇用統計が予想よりも弱かったことからドル売りが見られたものの、単月の数字が12月の利上げに影響することも無いため、東京朝方の水準へと押した後は週末前の静かな引けとなりました。

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