ドル円 三角持ち合い放れにつく(週報12月第1週)

12月1日の米中首脳会談で両国が交渉を継続するうちは新たな関税導入及び税率拡大を一時的に見送ることで合意された。

ドル円 三角持ち合い放れにつく(週報12月第1週)

ドル円 三角持ち合い放れにつく

ドル円は11月12日高値114.20円から下落し、11月20日には112.29円まで下げて10月4日高値と11月12日高値によるダブル天井形成からの下落感が強まりかけていたが、11月26日の上昇で11月21日高値を上抜いて二段上げとなり28日深夜高値で114.03円まで上昇して11月12日高値にあと一歩と迫った。この間の上昇により日足チャートはダブル天井の可能性を維持しつつも「高値切り下げ、安値切り上がりによるレンジ縮小型三角持ち合い」の様相となり、持ち合い上放れによる一段高へ進む可能性が浮上した。
11月29日未明のパウエル米連銀議長講演が政策金利の水準が景気を抑制も刺激もしない中立水準に近付いているということを強調するものだったことから利上げ終点が近いと市場は受け止めてドル安となり、ドル円は29日朝へ失速し、29日夜には113.19円まで下げて三角持ち合い上放れはいったん仕切り直しとなった。

11月27日夜のクラリダ米連銀副議長講演、29日未明のパウエル議長講演、30日未明のFOMC議事録公開と米連銀の金融政策スタンスに関する一連のイベントを通過し、市場の関心は11月30日から始まるG20首脳会議での米中首脳会談へ向かった。
トランプ大統領による米中協議進展への期待発言等により30日はNYダウが上昇、ユーロの弱さもあってドル高で推移し、ドル円は12月1日未明高値で113.70円まで戻し、113.50円ちょうどで週を終えた。

【米中首脳会談、協議継続と税率引き上げ等当面棚上げで合意】

12月1日の米中首脳会談で両国が交渉を継続するうちは新たな関税導入及び税率拡大を一時的に見送ることで合意された。会談後にホワイトハウスは首脳会談が大成功だったとし、米国が中国製品2000億ドル相当へ発動済の関税率を10%で据え置き、来年1月1日から予定されていた25%への引き上げを先送りすると発表した。米中は中国の知的財産権侵害や非関税障壁などについての協議を直ちに開始することを望んでいるとし、中国の外務当局高官は米国がこれまでに課された輸入関税についての撤廃を議論していくことで合意したと述べた。
米サンダース報道官は「中国は米国との貿易不均衡を縮小させるため農産品や工業製品の購入を拡大することに同意した」としたが、「構造改革に関して90日後に進展がなければ米国が関税率を25%に引き上げる」と声明で述べた。
トランプ大統領は首脳会談について「素晴らしく生産的な会合で米国と中国の双方に無限の可能性をもたらす」との声明を発表した。中国は米国から相当量の農産品、エネルギー、工業製品などを輸入することで合意したとされ、農産品の輸入は速やかに開始されるとした。

【リスクオンでドル高か、逆にドル安か】

休日中の米中首脳会談合意のため、金融市場全般がこれを楽観的なものと受け止めて30日にやや先行して動いていた株高ドル高の流れを発展させてゆくのか、協議継続でも最終合意へ至らなければ貿易戦争全面化のリスクが残ったとしてやや慎重姿勢となるのかは週明けの米国市場までの反応を見定める必要がある。ひとまず楽観的な反応を示しやすい株式市場がリスクオン心理を優先しアジア市場、欧米市場で上昇基調を鮮明にし、ドル高感が強まるならばドル円も三角持ち合い上放れにより10月4日高値試し、さらに超えればダブル天井破りによる一段高入りで強気なまま年末を迎える可能性が高まるだろう。しかしさほど楽観的な動きに走れずに11月28日深夜高値114.03円を超えない程度にとどまってしまうと三角持ち合いを上抜けられず、逆に下放れへ進んでしまう可能性もあるだろう。

米中貿易戦争が楽観的な解決へ向かうとしてリスクオン心理中心の展開なら、株高とともに投機通貨買いや新興国通貨買いでドルがかえって下落する可能性もある。元来は米中貿易戦争を中心とした米国保護主義が米国有利な展開となりやすいとしてドル高ユーロ安、ドル高元安を招いてきた。
6月後半からのドル指数上昇は米中閣僚級協議決裂をきっかけとした元安が背景だった。8月15日から9月21日へのドル指数下落は米中次官級協議再開報道による元高がきっかけであった。
米中問題が膠着する中で世界連鎖株安が発生したのは米長期金利上昇がきっかけであり、10月末への長期金利上昇はドル指数上昇と相関し、11月の株反騰が長期金利低下を招きドル指数上昇も一服するという関係にあった。

ユーロは、ポンドが英国離脱問題やイタリア財政赤字問題、ユーロ圏経済指標の鈍化により下落したことで米長期金利低下傾向の中でもドル指数が高値圏を維持する状況でもあった。今回の米中合意がリスクオン心理でユーロやポンド上昇のきっかけになるのか、ユーロ安やポンド安基調に変化がないのかどうかも見定めが必要になる。
もう一つ重要なところとしては人民元。米中合意により元高ドル安となる場合はドル高感にブレーキもかかるかもしれない。いずれにせよ、まず12月3日の市場全体の動向を見定め、しっかりとした流れができればその流れに逆らわないことが肝要だ。

【三角持ち合いの決着つくか】

【三角持ち合いの決着つくか】

10月4日高値114.54円と11月12日高値114.20円を結んだやや右肩下がりの抵抗線が11月28日高値114.03円を抑えた。支持線は10月26日安値111.37円から11月20日安値112.29円へ切り上がっている。
11月28日高値を上抜けばそのまま11月12日高値も超えて三角持ち合いの抵抗線を突破してくると考えられる。その段階で10月4日高値超えへの挑戦権発生となり、高値更新なら三角持ち合い上放れに続いてダブル天井破りとなる。その場合は8月21日安値から10月4日高値までの上昇幅4.77円を10月26日安値に加算したN=116.14円前後を目指してゆく可能性が考えられる。状況的には5月21日高値から6月15日へ高値ラインをやや切り下げて三角持ち合いを形成して上放れした展開に類似してゆくと思われる。
三角持ち合いの抵抗線を上抜いても10月4日高値超えまで進めないうちはその後の反落で10月26日からの支持線を割り込むリスクは残り、11月20日安値を割り込む段階からは状況が一挙に弱気転換してゆく可能性が高まる。昨年11月6日天井後の12月12日への上昇、さらに12月21日や1月8日の高値挑戦に失敗して支持線割れから大崩れしていったところに近い展開になりやすくなると思われる。

以上を踏まえてポイントを示す。
(1)当初、11月29日夜安値113.19円を支持線、28日深夜高値114.03円を抵抗線とみておく。
(2)11月29日夜安値割れ回避のうちは113.75円超えから28日深夜高値1144.03円試しへ向かうとみる。当初は28日深夜高値とのダブルトップ形成からの反落注意とし、ダブルトップ型を形成してからの下落で113.50円を割り込む場合は11月29日安値試し、さらに底割れからはダブルトップ完成と三角持ち合い上放れ失敗型の下落期入りを想定する。

(3)11月28日深夜高値超えから続伸なら11月12日高値114.20円、10月4日高値114.54円試しへ向かうとみる。かりに10月4日高値超えならまず115円から115円台序盤試しを想定するが、それ以上への上昇には週末の米雇用統計等を強気で通過してゆく必要があると思う。
(4)11月29日安値113.19円割れからは上昇基調に乗り切れずに失速し始める流れと景気合いし、まず12月4日から6日夜にかけての間への下落で112.75円から112.50円前後への下落を想定する。このケースでは底値切り下がりの後に戻り高値も切り下げて安値更新を繰り返す流れに入る可能性と、11月20日安値も割り込んで円高が本格化する可能性を警戒する。(了)<22:10執筆>

【当面の主な予定】

12/3(月)
08:50 (日) 7-9月期 法人企業統計調査・全産業設備投資額・前年同期比 (前期 12.8%、予想 8.5%)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数・前月比 (9月 3.3%、予想 -1.5%)
09:30 (豪) 10月 住宅建設許可件数・前年同月比 (9月 -14.1%、予想 -14.0%)
10:45 (中) 11月 財新製造業PMI (10月 50.1、予想 50.1)
17:55 (独) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 51.6、予想 51.6)
18:00 (欧) 11月 製造業PMI・改定値 (速報 51.5、予想 51.5)
18:30 (英) 11月 製造業PMI (10月 51.1、予想 51.7)
24:00 (米) 10月 建設支出・前月比 (9月 0.0%、予想 0.4%)
24:00 (米) 11月 ISM製造業景況指数 (10月 57.7、予想 57.5)
27:00 カプラン・ダラス連銀総裁裁、講演

12/4(火)
08:50 (日) 11月 マネタリーベース・前年同月比 (10月 5.9%)
09:30 (豪) 7-9月期 経常収支 (前期 -135億豪ドル、予想 −102億豪ドル)
12:30 (豪) 豪準備銀行(RBA)政策金利発表 (現行 1.50%、予想 1.50%)
18:15 (英) カーニー英中銀(BOE)総裁 発言
18:30 (南) 7-9月期 GDP・前期比年率 (前期 -0.7%、予想 2.0%)
18:30 (南) 7-9月期 GDP・前年同期比 (前期 0.4%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数・前月比 (9月 0.5%、予想 0.5%)
19:00 (欧) 10月 生産者物価指数・前年同月比 (9月 4.5%、予想 4.5%)

12/5(水)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP・前期比 (前期 0.9%、予想 0.6%)
09:30 (豪) 7-9月期 GDP・前年同期比 (前期 3.4%、予想 3.3%)
10:45 (中) 11月 財新サービス業PMI (10月 50.8、予想 50.8)
17:55 (独) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 53.3、予想 53.3)
18:00 (欧) 11月 サービス業PMI・改定値 (速報 53.1、予想 53.1)
18:30 (英) 11月 サービス業PMI (10月 52.2、予想 52.5)
19:00 (欧) 10月 小売売上高・前月比 (9月 0.0%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 10月 小売売上高・前年同月比 (9月 0.8%、予想 1.9%)
22:15 (米) 11月 ADP民間雇用者数・前月比 (10月 22.7万人、予想 19.5万人)
22:30 (米) 7-9月期 非農業部門労働生産性改定値・前期比 (速報 2.2%、予想 2.3%)
24:00 (加) カナダ銀行(BOC)政策金利 (現行 1.75%、予想 1.75%)
24:00 (米) 11月 ISM非製造業景況指数 (10月 60.3、予想 59.0)
24:15 パウエルFRB議長、上下両院合同経済委員会で経済見通しについて証言
28:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

12/6(木)
OPEC総会(ウィーン)
09:30 (豪) 10月 貿易収支 (9月 30.17億豪ドル、予想 30.00億豪ドル)
09:30 (豪) 10月 小売売上高・前月比 (9月 0.2%、予想 0.3%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注・前月比 (9月 0.3%、予想 -0.5%)
16:00 (独) 10月 製造業新規受注・前年同月比 (9月 -2.2%、予想 -3.1%)
22:30 (米) 10月 貿易収支 (9月 -540億ドル、予想 -550億ドル)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 23.4万件、予想 22.5万件)
24:00 (米) 10月 製造業新規受注・前月比 (9月 0.7%、予想 -2.0%)
26:15 ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演

12/7(金)
08:30 ウィリアムズNY連銀総裁、討論会参加
08:30 (日) 10月 全世帯消費支出・前年同月比 (9月 -1.6%、予想 1.1%)
14:00 (日) 10月 景気先行指数(CI)速報値 (9月 104.3、予想 104.9)
16:00 (独) 10月 鉱工業生産・前月比 (9月 0.2%、予想 0.3%)
16:00 (独) 10月 鉱工業生産・前年同月比 (9月 0.8%、予想 2.0%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP確定値・前期比 (改定値 0.2%、予想 0.2%)
19:00 (欧) 7-9月期 GDP確定値・前年同期比 (改定値 1.7%、予想 1.7%)
22:30 (米) 11月 非農業部門就業者者数・前月比 (10月 25.0万人、予想 20.0万人)
22:30 (米) 11月 失業率 (10月 3.7%、予想 3.7%)
22:30 (米) 11月 平均時給・前月比 (10月 0.2%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 平均時給・前年同月比 (10月 3.1%、予想 3.2%)
24:00 (米) 12月 ミシガン大学消費者信頼感指数 (11月 97.5、予想 97.0)
26:00 ブレイナードFRB理事、講演
29:00 (米) 10月 消費者信用残・前月比 (9月 109億ドル、予想 150億ドル)

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