ドル円見通し下げ一服で戻すも勢い欠く(11月第4週)

原油相場が23日に大幅下落しているが、これも株安要因となっているほか、豪ドル、カナダドル等資源通貨安要因となり、

ドル円見通し下げ一服で戻すも勢い欠く(11月第4週)

ドル円見通し下げ一服で戻すも勢い欠く

【概況】

10月序盤から10月末まで続いた世界連鎖株安が一服し、NYダウは10月29日から11月8日まで反騰、日経平均も10月26日から11月8日まで反騰したために株安と同調して下落していたドル円も10月26日深夜安値111.37円から反騰に入り、11月12日には114.20円まで上昇した。10月4日高値114.54円まであと一歩まで迫ったものの株安再開により高値更新に失敗して下落した。
11月20日にNYダウが551.80ドル安と大幅下落する中でドル円は20日夜に112.29円の安値を付けた。6日間の下落で下げ幅も1.91円まで拡大したものの株安一服と112円割れをひとまず回避したことによる自律反発で21日には113.14円まで戻したが、113円台を維持できず、22日の米感謝祭休場ではややジリ安推移となり、23日の東京休場中も113円台回復へ進めず、23日夜はNYダウが前日比178.74ドル安、ナスダック総合指数も33.27ポイント安と下落したため、株安によるリスク回避で円高となり深夜には112.66円の安値を付けたが、ユーロ安や資源通貨安等によるドル高感もあって24日未明にかけては下げ渋って終了した。

【ユーロ安再開】

11月13日から20日まで上昇してきたユーロドルが20日深夜に急落、さらに23日夕刻から一段安している。英国の離脱問題での楽観見通しや米国株安が当初はドル安反応となったことで20日まで上昇してきたが、英国離脱問題の不透明感、イタリア財政赤字問題でのEUによるイタリア制裁への動き等から下落に転じ、23日の景況指数悪化から一段安した。
23日夕刻発表の11月ドイツ製造業PMIが51.6と予想の52.2を下回り、ユーロ圏製造業PMIも51.5と予想の52.0を下回った。ユーロ圏サービス業PMIも53.1で予想の53.5を下回った。

米国株安は米国債への逃避買いとなり米長期債利回りは低下し、金利面ではドル安ユーロ高、ドル安円高となりやすい状況となっているが、金利要因以上にユーロが弱気されるために下落してきている。
英国の離脱問題では英国の飛び地であるジブラルタルについてスペインが難癖をつけており、フランスも漁業権をめぐって英国をけん制しているため、11月14日に欧州委と英政権が合意した離脱協定案がスムーズにEU首脳会議で裁可されない可能性もある、またメイ首相の英国内での求心力も落ちている。経済指標の鈍化により来年のECB利上げ開始が先送りされる可能性も意識され始めた。11月13日に年初来安値を更新してからやや戻したに過ぎない状況から23日へ下落したため、11月13日安値割れからの一段安へ進む可能性も懸念される。

【新たな逆オイルショックと株安円高】

原油相場が23日に大幅下落しているが、これも株安要因となっているほか、豪ドル、カナダドル等資源通貨安要因となり、ドルストレートでのドル高となる一方でクロス円での円高要因となっている。
NY原油は23日終値で7.7%安となり2017年10月以来の安値となったが、供給過剰懸念によりこの1週間では10.8%安と暴落的な下げとなり、下落規模としては2014年7月から本格化した逆オイルショック暴落時に近い印象がある。

ドル全面高で米国株がトランプラリーで楽観的に大上昇する中では逆オイルショックのような原油安は企業のコスト低下要因としてかえって歓迎されるため、2014年7月から2016年1月への逆オイルショック時にはNYダウもドル指数も大上昇していた。しかし今の米国株には当時のような楽観的な強気心理がみられず、10月序盤の世界連鎖暴落をいったんは切り返しかけたものの再び失速してもう一段安へ進みかねない状況の中では、原油安がエネルギー関連株安にとどまらず株式市場全体の足を引っ張ることとなる。
ドル円にとっても2014年7月から2016年1月までの逆オイルショック時にはドル全面高と株高の最中だったために株安円安の連鎖構造でドル高円安基調で推移した。しかし原油安が株安の大きな要因になってくるとドルストレートでのドル高圧力以上に株安からのリスク回避での円買いとクロス円での円高によりドル円においても円高ドル安に帰結することとなりかねない。

NYダウは11月23日に24236ドルまで下落して10月29日に付けた24122ドルに迫っている。10月3日から10月29日まで暴落的に下げ、11月8日への反騰では急落分の半値以上を戻したが再び失速している。ここまでは2月の世界連鎖株安時に近いが、戻り一巡後の下げは2月末からの反落時よりも厳しい角度で下げており、底割れに余裕がなくなっている。2月暴落時は4月1日への下落で底割れしているが、わずかに安値を更新する程度にとどまってその後は出直り、史上最高値更新へ進んだ。しかし今回はその時よりも早いタイミングで底割れしてしまうと、2月暴落時のスケールを超える下落規模へと発展してゆきやすくなる。そうなれば自ずと日経平均の下落規模も2月暴落時を超えてくる可能性が高まる。

3月26日に日経平均が底打ちし、ドル円も底打ちしている。今回の株安がさらに発展してしまうとドル円の10月4日からの下落もさらに長期化する可能性がある。
11月末の米中首脳会談で米中貿易戦争問題が一服できるのかどうか、原油暴落による株安が継続するのかどうか、EUの内部状況と経済指標の悪化、トランプラリーも丸2年を経過して神通力が後退している中で株安が深刻化するようだとドル円も崩れかねない。

【三角持ち合い上放れかダブル天井か、決着迫る】

10月4日高値を11月12日高値では上抜けず、11月20日安値への下落では10月26日安値を割り込んでいない。レンジはやや縮小する中で往来しており、113円台中後半へと上昇してくれば日足のチャートパターンは三角持ち合いとなり、持ち合い上放れによる一段高へ進む可能性も維持される。しかし11月20日安値を割り込む場合は三角持ち合いによる往来的な上昇へ進めずに下放れとなるため、10月4日と11月12日の両高値によるダブル天井形成となり、3月26日からの上昇基調が終了して円高局面入りする可能性が高まる。いずれの決着もまだついていないが、11月末から12月初旬にかけての展開で決着してゆくと思われる。

【当面の主なポイント】

【当面の主なポイント】

(1)当面は11月20日安値112.29円割れを回避して11月21日高値113.14円を上抜くのか、20日安値を割り込むのかにより状況もガラリと変わると考える。
(2)11月21日高値113.14円を超える場合は20日からのリバウンドが二段戻し型となるため、まず113.50円前後試しを想定する。113円台を固めてさらに戻り高値を切り上げるところからは113.70円台への上昇、あるいは材料次第で114円に迫るところまで戻す可能性があると考える。その場合、当初は113.50円、113.70円を段階的な戻り売り場と想定するが、114円超えからは三角持ち合い上放れによる一段高へ進む可能性ありとして11月12日高値114.20円、10月4日高値114.54円試しへ進んでいく可能性を優先する。
(3)11月23日夜安値112.66円割れからは11月20日安値試しとし、底割れの場合はまず10月26日安値111.37円試しを想定する。仮に10月26日安値割れの場合はダブル天井形成による下落期入りとして12月以降で8月21日安値109.77円を試して行くとみる。またその後は戻り売りスタンスで年末年始への下落基調継続を追いかけてゆく流れと考える。(了)<25日21:50執筆>

【当面の予定】

11/26(月)
06:45 (NZ) 7-9月期 小売売上高指数 前期比 (前期 1.1%、予想 1.0%)
14:00 (日) 9月 景気先行指数(CI)・改定値 (速報値 103.9)
18:00 (独) 11月 IFO景況感指数 (10月 102.8、予想 102.3)
18:00 (欧) プラートECB理事、講演

11/27(火)
06:45 (NZ) 10月 貿易収支 (9月 -15.60億NZドル、予想 -8.50億NZドル)
23:00 (米) 9月 住宅価格指数 前月比 (8月 0.3%、予想 0.4%)
23:00 (米) 9月 ケース・シラー住宅価格指数 前年同月比 (8月 5.5%、予想 5.3%)
24:00 (米) 11月 コンファレンス・ボード消費者信頼感指数 (10月 137.9、予想 135.5)
28:30 (米) カンザスシティ連銀、アトランタ連銀、シカゴ連銀総裁がパネル討論会参加

11/28(水)
ロシア、トルコ、イランがシリア情勢めぐり協議(カザフスタン・アスタナ、29日まで)
21:00 (独) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 10.6、予想 10.5)
22:30 (米) 7-9月期GDP改定値 前期比年率 (速報値 3.5%、予想 3.5%)
24:00 (米) 10月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (9月 55.3万件、予想 58.0万件)
24:00 (米) 11月 リッチモンド連銀製造業指数 (10月 15、予想 16)
26:00 (米) パウエル米FRB議長、講演

11/29(木)
G20財務相会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス)
08:50 (日) 10月 小売業販売額 前年同月比 (9月 2.1%、予想 2.6%)
09:00 (NZ) 11月 NBNZ企業信頼感 (10月 -37.1)
09:30 (豪) 7-9月期 四半期民間設備投資 前期比 (前期 -2.5%、予想 1.0%)
17:00 (欧) ドラギECB総裁、講演
17:55 (独) 11月 失業率 (10月 5.1%、予想 5.1%)

19:00 (欧) 11月 経済信頼感 (10月 109.8、予想 109.1)
19:00 (欧) 11月 消費者信頼感・確定値 (速報 -3.9、予想 -3.9) 
22:00 (独) 11月 消費者物価指数・速報値 前月比 (10月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 10月 個人消費 前月比 (9月 0.4%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 個人所得 前月比 (9月 0.2%、予想 0.4%)
22:30 (米) 10月 PCEコア・デフレーター 前月比 (9月 0.2%、予想 0.2%)
22:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.4万件、予想 22.0万件)
24:00 (米) 10月 住宅販売保留指数 前月比 (9月 0.5%、予想 0.8%)
28:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨
28:00 (米) クリーブランド、シカゴ、フィラデルフィア、ミネアポリス、ボストン、ダラス各連銀総裁が討論会参加

11/30(金)
G20首脳会議(アルゼンチン・ブエノスアイレス、12月1日まで)
06:45 (NZ) 10月 住宅建設許可件数 前月比 (9月 -1.5%)
08:30 (日) 10月 失業率 (9月 2.3%、予想 2.3%)
08:30 (日) 10月 有効求人倍率 (9月 1.64、予想 1.65)
08:30 (日) 11月 東京都区部消費者物価コア指数 前年同月比 (10月 1.0%、予想 1.0%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前月比 (9月 -0.4%、予想 1.2%)
08:50 (日) 10月 鉱工業生産・速報値 前年同月比 (9月 -2.5%、予想 2.5%)
09:01 (英) 11月 GFK消費者信頼感 (10月 -10、予想 -11)
10:00 (中) 11月 国家統計局製造業PMI (10月 50.2)
14:00 (日) 10月 新設住宅着工戸数 前年同月比 (9月 -1.5%、予想 0.3%)
19:00 (欧) 10月 失業率 (9月 8.1%、予想 8.0%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数・HICP、速報値 前年同月比 (10月 2.2%、予想 2.1%)
23:45 (米) 11月 シカゴ購買部協会景気指数(PMI) (10月 58.4、予想 58.5)
23:00 (米) ウィリアムズNY連銀総裁、講演

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