米中間選挙後の米国情勢と為替相場

中間選挙の結果は概ね事前の予想通り、上院は多数党の共和党が議席を若干増やし、下院は、民主党が共和党の多数をひっくり返して、多数党となった。

米中間選挙後の米国情勢と為替相場

米中間選挙後の米国情勢と為替相場

中間選挙の結果は概ね事前の予想通り、上院は多数党の共和党が議席を若干増やし、下院は、民主党が共和党の多数をひっくり返して、多数党となった。

今回の選挙の争点は、民主党サイドでは、国民に人気の高い健康保険―オバマケアの存続が最大の売りであり、共和党サイドは移民政策の厳密化である。
トランプ大統領は、絶好調の経済問題を取り上げるべきというスタッフの意見を無視し、ほぼ移民政策一本に絞って、移民に対する一般の悪感情を掻き立てることによる、支持基盤の維持拡大を狙った。この辺りは扇動者トランプの面目躍如といったところで、経済問題では支持者を投票行動まで持っていけないとみて、人々の劣情(ネガティブ・エモーション)に訴えることにより、民主党の圧倒的な攻勢をこの程度で食い止めたということだろう。

政治的な環境

米国の議会では日本のように党議拘束はない。民主党議員といえども、選挙区の都合で、共和党発議の議案に賛成投票をせざるを得ないケースもある。また民主党指導部の政策に反対の新人議員も結構出てくる。したがってそのような造反を見込むと、下院435議席の過半数218議席よりもなるべく多くの議席を確保したいのが民主党である。今回は230議席辺りまで行ったようだがそれでも盤石とはいえない。

今回の捻じれ議会の出現で、トランプ大統領の弾劾の可能性が議論されている。下院が発議できるが、実際の審議は上院で行うことになっており、上院の3分の2以上の賛成がないと弾劾は成立しない。
今回の選挙で上院共和党は議席数を3議席ほど増やして54対46の多数を確保しており、弾劾の問題はまず議論にもならないだろう。
特別検察官モラーの調査結果でよほどのスキャンダルが明るみに出ない限り弾劾はありえない。
それでも念のためホワイトハウスは、選挙後司法長官を更迭し、新しい司法長官を指名する。
大統領による指名を追認する役目の上院で、共和党多数が決定的になったので新しく指名する司法長官の追認は容易と見た、ホワイトハウスの戦術である。
トランプ大統領がモラー特別検察官の調査に危機感を抱いている証拠である。
何も後ろ暗いことがなければ、それほど慌てることはないはずだが、その辺りはトランプ大統領のかわいいところで、自ら隠し事が多いことを露呈している。
今後の米国政治はこの特別検察官のファイナルレポートを中心に動いていくことになる。

経済政策

民主党が下院を制したことにより、米国の経済政策に大きな変化が出るということは考えられない。
大雑把に見ると、法律案の審議は、上院、下院同じく行われる。したがってこの捻じれ現象で、議会の生産性が落ちることは間違いない。
経済といえば、下院は主に歳入(税金)・歳出に主導的な役割を果たしている。
従ってトランプのいうような所得減税はまず難しいだろう。
この捻じれ現象で、問題になるのは、連邦債務上限の引き上げ問題である。
米国の場合連邦政府の債務上限は法律で決められており、おおむねGDPの額に等しい枠が設定されている。今GDPが20兆jなので枠はそれくらいである。
この上限に達すると枠を増やす法律を通す必要があるが、その時に党派対立で増枠に反対する勢力が出てくると、連邦政府のシャットダウンということになり、金融市場に多大の悪影響を及ぼしてきた。これが捻じれ現象の下では起こりやすくなり、市場に混乱をもたらす恐れがある。

下院は税金、歳出に大きな権限を持っているが上院は主に、大統領指名者の追認権、これには大使、最高裁裁判官、閣僚等が含まれる。
さらには条約を批准する機能が上院に託されている。これ自体は経済に及ぼす影響は直接的にはないが、現在のトランプ政権で進行中の司法の保守化(保守系の裁判官の任命)がさらに進行しそうだ。人間の英知で成し遂げてきた数々のリベラルな理想が、司法の保守化で進歩が止まることを懸念する人が多い。

この捻じれ現象がホワイトハウスの貿易交渉にどのような影響を及ぼすかについては、はっきり言って、ほとんど影響はないだろう。

これらの貿易交渉は大統領令で律することができる上に、民主、共和両党ともこれについてはそれほど意見の相違はない。
ホワイトハウスの強硬派のナバロ補佐官やライトハウザー通商代表が仕切っており、今回の選挙ではほとんど影響はないだろう。
今回の選挙で、トランプの貿易政策により出血を余儀なくされた、農業を中心とする、レッドステーツ(共和党の地盤の州)での共和党支持が揺るがなかったことからホワイトハウスはさらに強硬な貿易戦争に打って出る可能性がある。

これからの米国政治は、減税等で景気をふかしすぎた反動の景気後退が問題となりそうで、それにモラー特別検察官のファイナルレポートが色を添える形の展開となる。

為替相場

為替相場については米景気が減速するかどうかによるところが大きいが、景気をふかしすぎた反動を懸念する向きは多い。景気サイクルを見ても景気拡大期間が今年11月で既に戦後2番目に長い113ヵ月目に入っていること、米中貿易摩擦の長期化や株式市場での予期せぬ株価急落など、心配な材料もある。株価の下落基調が長引くようなら政策金利の継続的な利上げは難しくなる。また、60j割れの原油価格も懸念材料だ。今は堅調なドル円相場だが米金利が市場の思惑通りに上がらないならドル/円の上値余地も自ずと限られよう。ドル/円相場は年末へ向けて110円方向へ、来年は100円方向への円高・ドル安を予想している。

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