ドル円 114円台維持できずやや調整気味(10/3)

米連銀のパウエル議長が講演し、「緩やかな引き上げは両方に対処する」と従来からの利上げ姿勢を維持した。

ドル円 114円台維持できずやや調整気味(10/3)

【概況】

9月27日のFOMC利上げ直後に113.13円まで上昇したが7月19日高値113.15円を上抜けずに27日夕刻には112.55円までいったん下げた。しかし27日夜はユーロ急落を背景としたドル全面高、米長期金利上昇等により7月19日高値を突破する上昇となり、週明けの続伸で114円台に到達、1日深夜には114.05円をつけた。しかし114円台はまだ居心地が悪いようで、週末の米雇用統計等の重要イベントを控えていることやEUとイタリアの財政問題での対立等から調整色が強まって2日深夜には113.52円まで下げている。

米連銀のパウエル議長が講演したが、「米景気の好調さは出来過ぎた話ではない」「利上げが遅れてインフレが加速するリスクと、急ぎ過ぎて景気腰折れを招くリスク」があるとし、「緩やかな引き上げは両方に対処する」と従来からの利上げ姿勢を維持した。
米ダラス連銀のカプラン総裁は2日の講演で「景気を過熱したり冷やしたりしない中立金利まで利上げを進め、その後は様子を見るのが適切」「中立金利は2.5〜2.75%の間で、少なくとも2〜3回の追加利上げでその水準に到達する」と述べた。同総裁はFOMCの投票権は持っていないがハト派的なスタンスを代表していると思われる。
パウエル議長等の発言はサプライズ無しでさほど市場に影響を与えていない。

【イタリアとEUの対立、ユーロ安】

先週はイタリア財政赤字拡大見込みによるユーロ安ドル高はドル円においてもドル高に帰結したが、2日夜にユーロが一段安した際にはドル高よりも円高が勝った。2日はユーロの他にポンド、豪ドル等も下げてドルストレートでは概ねドル全面高の様相だったが、クロス円での円高感がそれに勝った格好だ。米国とカナダのNAFTA再交渉が合意にこぎつけたことを好感してNYダウが7日ぶりに史上最高値を更新しており株高に連鎖してドル円も上昇して不思議なかったが、114円超えからさらに大幅続伸してゆくには週末の米雇用統計等を見定めてからという事かもしれない。

連立政権を構成する「五つ星運動」党首ディマイオ氏は「我々は(今後3年間の財政赤字の対GDP比)2.4%目標を撤回するつもりはない。1ミリたりとも引き下がらない」「(フランスやドイツは)間違いなくイタリア政府の崩壊を望んでいる」と述べ、EUとの対決姿勢を煽った。EUの財務相理事会ではトリア伊経済・財務相が欠席する中でイタリア批判が相次いだ。欧州委員会のユンケル委員長は「イタリアはEUとして合意している財政目標から逸脱している。ギリシャ危機の対処がようやく終わったところで、イタリアで同様の危機が発生するのは見たくない」と述べている。
現在のイタリア連立政権が発足した時からこの問題は引きずっているが、EU及びユーロにとっては大きな火種となっている。

ユーロドルは8月15日安値から9月24日まで戻してきた。2月からの下げ一服であったが、9月26日から日足で3本連続陰線=黒三兵を含む5営業日連続の陰線で1.150ドル割れ寸前まで下げてきている。8月15日からの反発は8月16日の米中協議再開報道をきっかけとしているが米中協議が進まない中で上昇の推進力が後退、イタリア問題が湧き出したことで下げ再開感を強めている。1.150ドル割れから続落すると8月15日安値1.1301ドルを目指す流れとなり、ドル高要因となる一方でユーロ円の下落による円高圧力もかかってくるため、状況次第ではクロス円の円高が勝ってドル円の上昇を抑え込むきっかけになりかねないと注視しておきたい。

【概ね1年周期の天井形成期】

ドル円は昨年11月6日高値以来の114円に到達した。昨年11月6日高値は概ね10か月から1年周期の天井サイクルにおける前回の天井であった。その前が2016年12月15日天井、さらにその前が2015年11月18日天井であった。現状は昨年11月天井から11か月を経過したところにある。
前々回の2016年12月15日天井は同年6月の英国民投票ショックでつけた安値から26週=半年の上昇でピークとなった。前回の昨年11月6日天井は同年4月17日底からのレンジ拡張型往来で30週目にピークをつけた。現状は今年3月26日底から28週目に入っている。半年の上昇で節目となりやすいこと、1年周期の天井形成期に来ていることを踏まえると、10月中に流れが変わる可能性もある点に注意が要る時期と言える。週末の米雇用統計、イタリア情勢、国慶節の大型連休明けの中国市場動向、日米通商協議動向等、現状の円安ドル高をさらに加速させるきっかけにもなりうるが、流れを一挙に変えてしまう可能性もあると心したいところだ。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月27日安値を前回のサイクルボトムとして上昇してきたが、114円到達から113.70円を割り込でできているために1日深夜高値でサイクルトップをつけて弱気サイクルに入っていると考えられる。新たな安値形成期は2日午後から4日午後にかけての間と考えられるため、既にボトムをつけての反騰注意期に入っているが、3日夜、4日の日中にかけてはまだ一段安余地がある状況と思われる。113.70円超えからは強気転換注意とし、114.05円超えからは新たな強気サイクル入りとして4日夜から8日夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では3日午前への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落しているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパン揃って好転するところからとする。

60分足の相対力指数は10月1日午前から1日深夜への高値更新時に指数のピークが切り下がる弱気逆行となり、その後の下落で50ポイント割れ、さらに30ポイント台へ低下した。2日夕刻の指数のボトム以降は新たなボトムの切り下がりが見られていないので強気逆行へ進む可能性があるが、強気回復は50ポイント超えからとする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、113.50円を支持線、113.70円を抵抗線とみておく。
(2)113.70円超えへ進めない内は113.50円割れからの下落で113.00円前後試しへ向かうとみる。113円割れあれば押し目買いも入ってくるとみるが、113.70円以下での推移中は4日午前にかけても下落継続余地がありとする。
(3)113.70円超えから続伸の場合は強気転換注意として1日深夜高値114.05円試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして114円台後半を目指す上昇を想定する。また1日深夜高値更新後に113.90円以上を維持する内はその後もさらに高値を更新する余地ありとみてゆく。

※ 米雇用統計もあるので、その前ではいったん調整安的な動きに入り、雇用統計から一段高なら115円超えを目指す上昇期入りの可能性が高まる可能性があり。
例えば10月4日にいったん反発を入れ、雇用統計後ないしは週明けから一段安する場合には下落基調がしばらく続きやすくなり、また1年周期の天井をつけての下落期に入る可能性も検討されると思う。

【当面の主な予定】

10/3(水)
休 場 (中) 国慶節
10:30 (豪) 8月 住宅建設許可件数 前月比 (7月 -5.2%、予想 1.0%)
16:55 (独) 9月 サービス業PMI、改定値 (速報 56.5、予想 56.5)
17:00 (欧) 9月 サービス業PMI、改定値 (速報 54.7、予想 54.7)
17:30 (英) 9月 サービスPMI (8月 54.3、予想 54.0)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前月比 (7月 -0.2%、予想 0.2%)
18:00 (欧) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 1.1%、予想 1.7%)
19:30 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演(ロンドン)
21:05 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、講演
21:15 (米) 9月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (8月 16.3万人、予想 18.5万人)
23:00 (米) 9月 ISM非製造業景況指数 (8月 58.5、予想 58.0)
27:00 (米) ブレイナードFRB理事、講演
27:15 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、講演
29:00 (米) パウエルFRB議長、講演

10/4(木)
休 場 (中) 国慶節
09:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、カンザス大主催のイベントで講義
10:30 (豪) 8月 貿易収支 (7月 15.51億豪ドル、予想 14.50億豪ドル)
15:00 (米) ラガルドIMF専務理事、記者会見[東京]
21:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 21.4万件、予想 21.1万件)
22:15 (米) クオールズFRB副議長、講演
23:00 (米) 8月 製造業新規受注 前月比 (7月 -0.8%、予想 1.9%)
25:00 (欧) クーレECB理事、講演

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