長期トレンドがドル高転換か(週報7月第3週)

先週のドル円は、米中間の貿易摩擦激化懸念を残しながらも、いったん材料出尽くしという見方から株式市場も為替市場もリスクオフの巻き返しの週となりました。

長期トレンドがドル高転換か(週報7月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、米中間の貿易摩擦激化懸念を残しながらも、いったん材料出尽くしという見方から株式市場も為替市場もリスクオフの巻き返しの週となりました。特にドル円は、そうした中で5月高値111.40を上抜け、更には2015年1月の125円台から延びているレジスタンスライン(111円台半ばを下降中)を上抜けたことも重なって、ストップオーダーや新規のドル買いも加わり1月高値に迫る動きとなりました。

ドル円の高値は金曜東京市場につけた112.80レベルですが、1月につけた年初来高値113.39まではわずか60銭の距離です。週末前のポジション調整からいったん下押しは入っているもののテクニカルな観点からドル円は長期トレンドがドル高に転換したと考えざるを得ない段階となってきました。

今週は全面的にテクニカルな分析となります。まず、全体像を把握するために月足チャートをご覧ください。

ドル円月足

ドル円月足

これまでも週報やコラムで触れてきた2015年の125円台からのレジスタンスというのがピンクの太線で示したレジスタンスラインで、先週の終値で上抜けしたことがわかります。また2016年安値からのサポートとセットで考えるとトライアングルのパターンを上抜けしたと見ることも可能です。

いずれにしても長期的に上値が重たい展開を上に突き抜けてきたことで、当面はドル高で考えることとなりますし、まずは年初来高値、そして昨年何度も試した114円台半ばの水準を試す流れになってくるでしょう。その上には115円の大台がありますが、テクニカルに最も気になる水準は115円台半ばです。繰り返しになるので、詳細は13日の「ドル円のターゲット」をご覧いただくとして、115円台を視野に入れているのが現状と考えられます。

ただ、今回の長期レジスタンスの上抜けをトライアングルと捉えると、75円台の史上最円高値からのドル高相場とその後のトライアングルですから、120円、125円という声も出てきてもテクニカルにはおかしくありません。しかし、米中貿易摩擦の激化だけでなく日米間の交渉も続いていますし、中間選挙もあるなど、色々と考えると120円を超えるようなドル高は考えにくいのが正直なところです。

おそらく、今回の波でどこまでドル買いを伸ばせるか、そして場合に寄ってはそれで終わりになるという可能性もまだ考えておかなくてはいけないと思います。あくまでもテクニカルにはドル一段高しかありえないという見方です。

次にいつもの日足チャートもご覧ください。

上抜けたレジスタンスは、こちらでもピンクの太線で示してありますが、この上抜けた水準レジスタンスは現在はサポートとなりますので、111円台半ばは強いサポートとして機能してくると考えられます。いっぽう上値のレジスタンスは値幅観測によるターゲットとして中期的には115円台が濃厚ですが、短期的には年初来高値の113.39です。

中期的な上昇チャンネル(ウエッジに近い)を青い線で引いてありますが、この上側のラインが今週は113円台に来ること、また5月安値、6月高値、7月安値を3点とする上昇N波動を考えると113.07が100%エクスパンションとなっています。

今週は抜けた長期レジスタンスに近い111.50レベルをサポートに、年初来高値に重なる113.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

7月16日(月)
**:** 東京市場休場
08:01 英国7月住宅価格
11:00 中国4〜6月期GDP
11:00 中国6月鉱工業生産、小売売上高
16:00 トルコ4月失業率
18:00 ユーロ圏5月貿易収支
21:30 米国7月NY連銀製造業景況指数
21:30 米国6月小売売上高
23:00 米国5月企業在庫右

7月17日(火)
07:45 NZ4〜6月期CPI
10:30 豪中銀理事会(3日)議事要旨公表
16:00 トルコ5月鉱工業生産
17:00 英中銀総裁講演
17:00 南ア4〜6月期消費者信頼感
17:30 英国6月失業率
22:15 米国6月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 パウエルFRB議長上院議会証言
23:00 米国7月NAHB住宅市場指数

7月18日(水)
17:00 南ア6月CPI
17:30 英国6月CPI、PPI
18:00 ユーロ圏6月CPI改定値
18:00 ユーロ圏5月建設支出
20:00 南ア5月小売売上高
21:30 米国6月住宅着工・建築許可件数
23:00 パウエルFRB議長下院議会証言
23:30 週間原油在庫
27:00 ベージュブック

7月19日(木)
08:50 本邦6月貿易収支
10:30 豪州6月失業率
17:30 英国6月小売売上高
**:** 南ア中銀政策金利発表
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
23:00 米国6月景気先行指数

7月20日(金)
08:50 本邦6月CPI
15:00 ドイツ6月PPI
17:00 ユーロ圏5月経常収支
21:00 セントルイス連銀総裁講演

7月21日(土)
 **:** G20(〜22日)

前週の主要レート(週間レンジ)

     始値   高値  安値  終値

ドル円  110.44 112.80 110.36 112.35
ユーロ円 129.78 131.53 129.69 131.31
ユーロドル 1.1752 1.1790 1.1613 1.1685
日経平均 21838.53 22692.86 21744.25 22597.35

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

7月9日(月)
 ドル円はNY市場に入るまでは110円台半ばの狭いレンジの中で動意薄の状況が続きました。NY市場に入ると英国外相も辞任と伝えられるとポンドが急落し、その動きに沿ったドル買いの動きとなりました。NYダウが先週の関税発動でいったん悪材料が出尽くしたこともドル買いを支えました。

7月10日(火)
 東京市場のドル円は目立った材料が無い中で実需のドル買い、また米中間の貿易摩擦が一段落したことによるリスクオフ懸念の後退が円安の動きを強めました。先週高値を抜けると仕掛け的なドル買いが加わり、欧州市場では一時111.35レベルと5月高値にあと5銭の水準まで切り上げましたが試しきれず。NY引け間際にライトハイザーUSTR代表が中国に新たに2000億ドルの追加関税を準備しているとの報道に一時111円を割り込む不穏な引けとなりました。

7月11日(水)
一日終えてみるとドル大幅高となりました。東京早朝には米国が新たに2000億ドルの追加関税を検討しているとのニュースに一気にリスクオフが進み、仲値すぎにはドル円は110.77レベルまで水準を下げました。しかし、下がったところでの買いが根強い中、株価とともに前日NY水準を回復してのNY市場入り。NY朝方にはユーロドル急騰の動きから111円を割り込む場面も見られましたが急速に回復、前日高値、5月高値を上抜けるとストップオーダーも巻き込みながら112円台乗せ。112.17レベルと1月以来の高値をつけ、そのまま112円台での引けとなりました。

7月12日(木)
ドル円は前日に複数の重要なレジスタンスを上抜けた余波が続きました。東京市場の朝方からドル買いが先行し、欧州市場では112.63レベルの高値をつけました。株式市場もリスクオフの動きから抜け出し、主要国の株価指数は全面高、NY市場に入ってからはもみあいが続きましたが、下値は底堅く上値の目処が見えてこない流れでした。

7月13日(金)
 東京前場のドル円は株高と歩調を合わせ一段高の展開となりました。後場には112.80レベルの高値をつけましたが、水曜に大きく上抜けてから調整らしい調整も無かったことで、週末を前にして海外市場ではポジション調整も見られてじり安。NY市場の後場には一日の安値となる112.28レベルまで押してほぼ安値圏での引けとなりました。

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