ドル円急落、3月26日以降で最大の下落(5/24)

米中、米朝問題におけるリスク回避テーマであることからリスク回避心理はクロス円で顕著となり、円は全面高となった。

ドル円急落、3月26日以降で最大の下落(5/24)

【概況】

5月21日に111.39円の高値をつけて3月26日以降の戻り高値を更新したが、昨年11月天井からの下落幅に対する3分の2戻し111.357円に到達、また5月2日深夜と10日による110.00円でのダブルトップ破りにおけるダブルトップ間値幅の倍返し111.36円を実現、ひとまず高値警戒感となって上昇がストップしていた。そこにトランプ大統領による米中通商協議に対する「不満足」発言、米朝首脳会談に対する「延期」の可能性示唆発言等からリスク回避感が拡大、ドル円は23日午前から株安を伴って急落商状となった。
5月23日午前の急落開始で5月19日安値を割り込み、これまでの「高値切り上げ、その後の調整安でも安値を切り上げる」強気パターンが崩れた。110.50円前後でやや足踏みした後に18時台安値で109.554円まで下落、21日高値からの下げ幅は1.84円幅となった。

3月26日以降の上昇局面における修正安では、初押しとなった4月2日への下落幅が1.35円幅、110円のダブルトップ型を形成した際の5月4日への下落が1.36円幅であったが、今回はそれらの規模を超えた。
日足では前日比0.82円幅の陰線だが、昨年7月11日高値からの反落時の0.77円幅等、中勢レベルの反騰を一巡させて下落再開に入る時の最初の下げという印象を与える。
5月23日安値は26日移動平均(現在109.54円)に迫った。一目均衡表の26日基準線は現在109.27円だが、これらの中勢トレンド支持線を割り込む下落へと発展すれば3月26日からの戻りが一巡して中勢規模=概ね5か月から6か月周期のサイクルによる下落開始となる可能性も懸念される。

【ドル高で円高】

米中、米朝問題におけるリスク回避テーマであることからリスク回避心理はクロス円で顕著となり、円は全面高となった。一方では米国の仕掛ける保護主義への懸念からユーロ、ポンドが下げてメジャー通貨のドル指数は戻り高値を更新した。また資源通貨安も目立ち、豪ドルが大幅下落、さらに中東情勢や国内金融政策への不安からトルコリラの暴落も続いたため、ドルストレートではドル高感がさらに強まった。
米長期金利の指標である10年債利回りは安全資産買いとして米長期債が買い戻されたこともあって3%を割り込んでおり、ドル円にとっては上昇の梯子が外れてリスク回避の円買い戻しが全面化した印象だ。
円高の一方でユーロも大幅下落したため、ダブルパンチでユーロ円は3月23日安値を割り込んでおり、2月2日天井からの下落が二段下げ型へと発展した。ユーロ円での円高もクロス円全般での円高を助長、ドル円における円高ドル安要因となっている印象だ。

【FOMC議事録、サプライズ無し】

24日未明のFOMC議事録では特にサプライズはなし。早めの利上げが適切として6月利上げはほぼ確実とみられるが、市場も既にそれを承知しているため、イベント通過後は円高再開感が強まっている。年3回ペースか4回ペースへ加速するのかのヒントは与えられなかったが、米クリーブランド地区連銀のメスター総裁が23日の講演で「金融政策の段階的な正常化を継続する」「年内の利上げ回数が3回になるのか4回になるのかとの問題はささいなことにすぎない」と述べており、年4回ペースへ加速する可能性はあるが、同総裁の言う通り、今となっては些細なことで、それよりも貿易戦争リスク、米朝問題、イラン核合意離脱と制裁再開問題等、トランプ政権の繰り出す強硬姿勢による金融市場全般への不安の方が大きいという市場心理になってきているのではないか。

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

【60分足 一目均衡表 サイクル分析】

60分足の一目均衡表では5月22日深夜に先行スパンから転落した。先行スパン転落は7日ぶり。遅行スパンも22日に悪化していたが、23日の急落により両スパン揃っての悪化が継続している。急落後に新たな安値更新を回避して1日を経過すれば遅行スパンが好転してくることもあるが、急落商状の場合は先行スパンを上抜き返せない内は一段安警戒を優先する。また安値更新なら遅行スパン好転も1日先送りされやすく、下落が継続しやすい。先行スパンから転落した状態でいったん遅行スパンが好転しても再び悪化する場合は新たな下落期入りとして安値試しが数日続きやすくなる。

60分足の相対力指数は23日の急落で20ポイントを割り込んで戻したが、50ポイント超えには至らずにいる。さらに安値更新の場合に指数のボトムが切り上がりとなれば強気逆行による反騰サインとなることも考えられるが、急落商状の場合は逆行が1回では底打ちできずに2回、3回と続くケースもあるので強気回復には50ポイント台回復、維持へと戻す必要がある。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、5月16日深夜安値を前回のサイクルボトムとし、21日高値を同サイクルトップとして下落した。今回のボトム形成期は22日の日中から23日深夜にかけての間と想定したが、23日夕安値からいったん戻したため、16日夜安値から5日目となる23日夕安値を直近のサイクルボトムとする。新たな底割れ回避の内は24日の日中から28日にかけての間へ戻す可能性もあるが、それよりも底割れから新たな弱気サイクル入りとなって次のボトム形成期となる28日から30日にかけての間へと一段安する可能性を懸念する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、23日夕安値109.55円を支持線、24日未明高値110.33円を抵抗線とみておく。
(2)110.00円を分岐点とし、上回る場合は110.33円試し、超える場合は110.50円手前を試す可能性を考えるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)110円以下での推移中は109.55円割れからの一段安警戒とし、底割れの場合は5月4日安値108.64円前後試しを想定する。また109.50円以下での推移中は25日、28日へさらに安値を試しやすい状況が続くとみる。
(4)3月26日底からの上昇が一巡して新たな中勢レベルの下落期に入る可能性もあるため、5月4日安値割れからはまず6月1日の米雇用統計前後への下落継続、さらに6月12日の米朝首脳会談及び6月14日未明の次回FOMC声明発表・議長会見にかけて下落基調が継続してゆきやすくなると警戒する。(了)<9:50執筆>

【当面の主な予定】

5/24(木)
未 定 (南ア) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 6.50%
15:00 (独) 1-3月期GDP、改定値 前期比 (速報 0.3%、予想 0.3%)
15:00 (独) 1-3月期GDP、改定値 前年比 (速報 1.6%、予想 1.6%) 
17:00 (米) ダドリー米NY連銀総裁、講演
17:30 (英) 4月 小売売上高指数 前月比 (3月 -1.2%、予想 0.9%)
21:30 (米) 週間新規失業保険申請件数 (前週 22.2万件、予想 22.0万件)
22:00 (米) 3月 住宅価格指数 前月比] (2月 0.6% )
23:00 (米) 4月 中古住宅販売件数 (3月 560万件、予想 556万件)
27:00 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演

5/25(金)
08:30 (日) 5月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (4月 0.6%、予想 0.6%)
17:00 (独) 5月 IFO景況指数 (4月 102.1、予想 102.0)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前期比 (速報 0.1%、予想 0.1%)
17:30 (英) 1-3月期 四半期GDP、改定値 前年比 (速報 1.2%、予想 1.2%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注 前月比 (3月 2.6%、予想 -1.4%)
21:30 (米) 4月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (3月 0.1%、予想 0.5%)
22:00 (米) パウエル米FRB議長、リクスバンク350周年記念会合出席
23:00 (米) 5月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 98.8、予想 98.8)
24:45 (米) カプラン米ダラス連銀総裁、ボスティック米アトランタ連銀総裁、エバンス米シカゴ連銀総裁、講演

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