ドル円各国問題を意識しつつ109円挟んだ持ち合い(5/9)

トランプ米大統領は2015年のイラン核合意から離脱すると発表した。また合意で解除された制裁を再発動して「最高レベル」の経済制裁をイランに科すとした。

ドル円各国問題を意識しつつ109円挟んだ持ち合い(5/9)

【概況】

5月2日深夜高値で110.03円をつけたあとは3日未明のFOMC、4日夜の米雇用統計へと下落、108.64円の安値をつけたがその後は下げ一服で109円を挟んだ持ち合いとなっている。FOMC声明文は特にタカ派色が強まった印象にはならず、米雇用統計も非農業部門就業者数と平均時給の伸びが予想より悪かったものの失業率は3.9%まで改善して強弱入り混じりで決め手に欠いた。
トランプ大統領がイラン核合意からの離脱問題について12日までに決定するとしていたところ、8日(日本時間9日未明)に早めたことで何がしかの妥協があるのではないかとも思惑されたが、9日未明にトランプ大統領は合意からの離脱と制裁再開を決定した。この決定を前後して直前の8日深夜には109.34円へ戻したが、決定直後には108.82円まで下落した。ただ市場反応はまだ限定的なものに止まっており、9日早朝は109円台を回復している。

【イラン核合意からの離脱】

トランプ米大統領は2015年のイラン核合意から離脱すると発表した。また合意で解除された制裁を再発動して「最高レベル」の経済制裁をイランに科すとした。米国以外は今のところ合意を継続するとし、イランも米国以外との合意継続姿勢を示している。経済制裁に関してはムニューシン米財務長官が「経済制裁再開までに最大180日の猶予期間を設ける」と述べている。トランプ大統領演説でも「現行の合意でイランの核兵器獲得を阻止できない」と非難しつつ、「イランの核問題包括的解決へ同盟国と協力する」「新合意に関しイランと交渉の用意がある」としている。

イラン核合意とは、2015年7月に米英仏独中ロ、EU、イランが「包括的共同行動計画」で合意したもの。イランは核兵器に転用できる高濃縮ウランや兵器級プルトニウムを15年間は生産せず、当時10トンあった濃縮ウランを300キロに削減。2万基近くあった遠心分離機を6104基に限定するとした。このためイランが核開発を再開しても核爆弾1発分の原料生産には1年かかるというところまで能力を落とし、その見返りで欧米は金融制裁、原油輸出制限等を解除した。 

当面、米国とイランは非難合戦を行うと思われるが、今のところイランは冷静な態度を保っている。北朝鮮問題でも米国は強硬姿勢を強めてきたが米朝首脳会談実現に向かっている。イランとも同様の交渉に入るなら市場も冷静な反応で落ち着くかもしれない。原油相場は米国側が緩い態度をとるのではないかとの見方からいったん急落したが急落分を解消する反騰で元の水準に戻っている。ドル円は109円を挟んだ持ち合いに留まり、有事リスクに対して過敏に反応するゴールドは安値圏での持合い範囲に止まっている。これらの状況はまだ相場の方向性を決定付ける材料としてはまだ定まっていないことを示し、市場も態度を決めあぐねているところと思われる。ただし、今後の展開次第では上下に大きく動く材料となってゆく可能性があるので、イラン情勢、原油相場動向等を注視してゆく必要があるだろう。

【米中通商問題、北朝鮮情勢】

ポンペイオ長官が再び訪朝するという。昨日は北朝鮮の金委員長が飛行機で電撃訪中して二度目の中朝首脳会談を行った模様。米中の貿易不均衡問題での交渉で今度は米国にて協議が行われるという。またこれらの問題で米中首脳の電話協議があったとされる。
米朝首脳会談実現へ向けて情勢も大詰め。米国がリビア方式を示し、イラン核合意から離脱する等、相変わらず米トランプ政権は強硬な米国第一主義を貫いているので、米朝会談実現手前の土壇場における混乱リスク、米中通商問題の対立激化への不安、その日米貿易不均衡問題への飛び火懸念等、不安定要素も抱えたままとなる。

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

【60分足 一目均衡表、サイクル分析】

60分足の一目均衡表では8日夜の反発で先行スパンを上抜きかけたがその後は反落している。先行スパンも109円前後で薄く横這いのため、転落もしやすい状況にある。109円割れから続落なら先行スパン転落とし、9日未明安値108.82円割れからは下落感が強まるため先行スパン転落中の安値試し優先とし、8日深夜高値超えからは先行スパン突破による上昇再開感が強まるとみて先行スパンを上回る内は高値試し優先と思われる。

60分足の相対力指数は8日夜の上昇で60ポイントをつけたがその後は50ポイントを挟んだ揉み合いであり、方向感に欠ける。60ポイント超えからさらに続伸なら上昇再開へ、40ポイント割れからは下げ再開の示唆と思われる。

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月27日深夜安値から5日目となる5月4日夜安値で直近のサイクルボトムをつけて戻していたが、前回サイクルトップの2日深夜高値から3日目となる7日夜高値でサイクルトップをつけたと思われる。8日深夜高値でも7日夜高値超えへ進めなかったので、両高値をダブルトップとして下落しやすい状況と思われる。9日未明安値108.82円を割り込む場合は弱気サイクル入りによる下落として次のボトム形成期となる9日の日中から11日夜にかけての間への下落を想定する。
ただし安値はやや切り上がり気味に推移して109円を挟んだ持ち合いのため、7日高値を上抜く上昇の場合は新たな強気サイクル入りとして10日夜から14日にかけての間への下落へ向かう可能性が出てくると思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9日未明安値108.82円を支持線、8日深夜高値109.34円を抵抗線とみておく。
(2)109円を上回る内は8日深夜高値試しとし、高値更新の場合はそのまま7日夜高値も超えると仮定して強気サイクル入りとし、2日深夜高110円試しへ向かうとみる。また8日深夜高値更新後も109.25円以上を維持する内は10日も高値を試しやすいとみる。
(3)109円以下での推移が続き始める場合は9日未明安値試しとし、割り込む場合は持ち合い下放れによる下落期入りとしてまず4日夜安値108.64円試しとし、底割れからは108円台序盤試しへの下落を想定する。また9日未明安値割れの後も109円以下での推移が続くうちは10日も安値を試しやすいとみる。4日夜安値割れの場合は2日深夜高値からの下落が二段下げとなるため、下落が長期化する可能性ありとみる。(了)<9:40執筆>

【当面の主な予定】

5/9(水)
21:30 (米) 4月生産者物価指数 前月比 (3月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月生産者物価コア指数 前月比 (3月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月生産者物価指数 前年比 (3月 +3.0%、予想 +2.8%)
21:30 (米) 4月生産者物価コア指数 前年比 (3月 +2.7%、予想 +2.4%)
23:00 (米) 3月卸売売上高 前月比 (2月 +1.0%)
26:15 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

5/10(木)
スイス、ストックホルム、オスロ休場(キリスト昇天祭)
06:00 (NZ) RBNZオフィシャル・キャッシュレート (現行 1.75%、予想 据え置き)
08:50 (日) 3月国際収支-経常収支 (2月 +2兆760億円、予想 +2兆9293億円)
08:50 (日) 3月国際収支-貿易収支 (2月 +1887億円、予想 +1兆171億円)
10:30 (中) 4月消費者物価指数 前年比 (3月 +2.1%、予想 +1.9%)
10:30 (中) 4月生産者物価指数 前年比 (3月 +3.1%、予想 +3.4%)
17:30 (英) 3月鉱工業生産 前月比 (2月 +0.1%、予想 +0.1%)
17:30 (英) 3月貿易収支 (2月 -102.03億GBP、予想 -113.50億GBP)

17:30 (英) 3月製造業生産 前月比 (2月 -0.2%、予想 -0.2%)
20:00 (英) BOE政策金利発表 (現行 0.50%、予想 据え置き)
20:00 (英) カーニーBOE総裁会見、BOE議事録、BOE四半期インフレレポート
21:30 (米) 4月消費者物価指数 前月比 (3月 -0.1%、予想 +0.3%)
21:30 (米) 4月消費者物価コア指数 前月比 (3月 +0.2%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 4月消費者物価指数 前年比 (3月 +2.4%、予想 +2.5%)
21:30 (米) 4月消費者物価コア指数 前年比 (3月 +2.1%、予想 +2.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 21.1万件、予想 21.8万件)

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