ドル円見通し 貿易戦争突入不安やや後退(3/27)

米国とEU各国は英国での元ロシア情報員暗殺未遂事件への対抗措置としてロシア外交官凡そ100人を追放する方針を決めた。ロシアはすでに報復宣言をしている。

ドル円見通し 貿易戦争突入不安やや後退(3/27)

【概況】

3月22日未明の米連銀FOMCで今年1回目の利上げが決定され、利上げペース加速の可能性も拡大したが、発表当初の上昇でつけた106.63円を戻り高値とし材料消化、イベント通過として下落、米国の関税導入による貿易戦争不安を背景に世界連鎖株安となる中で23日には3月2日安値105.24円、さらに105円を割り込んで104円台に突入した。
週明けの26日朝、104.65円をつけて23日安値104.63円に面合わせしたがその後は株安一服で105円台を回復、26日夜にはNYダウが大幅上昇したことで続伸、27日朝には105.57円まで回復してきている。

【米中貿易戦争不安、やや後退?】

3月22日、トランプ大統領は500億ドル規模の中国製品に対する関税賦課の大統領令に署名。23日には鉄鋼とアルミの輸入制限措置も発動された。中国は対抗措置として米国産豚肉などに報復関税を課すと発表した。
保護主義の拡大と貿易戦争不安を背景にNYダウは22日に724.42ドル安、23日も424.69ドル安と暴落的に下げた。しかし25日にムニューシン米財務長官が貿易戦争回避の可能性やこの問題が米経済にとっては良い事と述べたため、週明けのNYダウ先物は早朝から上昇、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが「両国が通商問題の解決に向けて水面下で協議を開始した」と報じたことで楽観論が巻き返して26日のNYダウは669.4ドル高と反騰した。

ムニューシン財務長官はFOXテレビで「大統領は貿易戦争を恐れていないが、それが目的ではない」として「中国の劉鶴副首相らとの協議で対中貿易赤字削減などの解決につながる道筋に向けて取り組んでいる」と述べた。また株式市場の大幅下落に対しては「経済に大きな影響があるとは予想していない」「政権がしていることは長期的に経済にとって非常に良いことだ」とも述べた。この発言により、先週末への株価暴落はやや過剰反応だったとの認識が広まったようだ。
米トランプ政権の通商顧問であるナバロ国家通商会議(NTC)委員長も26日のインタビューで「非常に良い北米自由貿易協定=NAFTA合意が得られることを楽観する」「米国はすでに中国と交渉のテーブルに着いている」と述べて市場を落ち着かせた。

鉄鋼・アルミの関税問題も、NAFTA再交渉によりメキシコとカナダが除外され、EUや韓国等も二国間協議による数量規制等の交渉を条件に適用除外となった。日本は関税対象となり、トランプ大統領は日本の通商政策に対して皮肉交じりに批判した。
中国への関税拡大も、まずは米国が強硬姿勢を示し、中国がそれに対抗しつつ、二国間交渉に入るという流れであり、あくまでも米国第一主義による米国利益確保が大前提にある。中国に対しては従前から巨額の貿易黒字の解消へ向けた諸要求がなされており、中国側もこれにある程度こたえようという姿勢を示してきた。知的財産権や米国企業からの技術移転、貿易収支問題で二国間協議が行われて行くだろうが、米国有利での合意に達しなければ貿易戦争に突入ということになると思われるため、まだ油断できず、市場は両国の姿勢、要人発言等から一喜一憂することを強いられるかもしれないので、過度の楽観は禁物だろう。

【欧米とロシアの対立】

米国とEU各国は英国での元ロシア情報員暗殺未遂事件への対抗措置としてロシア外交官凡そ100人を追放する方針を決めた。ロシアはすでに報復宣言をしている。このうち米政府はロシア外交官60人を追放し、シアトルのロシア総領事館を閉鎖すると発表した。
ロシアのクリミア併合から欧米はロシアに対して経済制裁を課してきた。今回の事件により両陣営の外交的地政学的対立は激化し始めている。
米露対立は代理戦争状況にある中東情勢にも影響がでてくる可能性がある。米国はイランとの核合意を破棄する動きもあり、サウジは核武装の可能性を示唆している。シリア情勢を巡っても混沌とした状況と軍事緊張が継続している。

米国が米国第一主義という保護主義に走り、かつてのグローバリズムと自由貿易の盟主としての姿勢を放棄し始める中、中国では習近平による長期政権、ロシアでもプーチンによる長期政権が確立した。英国はEUから離脱し、EU内では政治混乱や既存指導勢力の弱体化も見られる。これらはすぐに金融市場全般へ大きな影響を与えるものではないかもしれないが、世界システムのパワーバランスも変容しつつある中で一連の事態が進んでいることを先行きのリスクとして意識してゆく必要があるだろう。

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

【60分足一目均衡表、サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成のサイクルでは23日安値と26日朝安値をダブル底として戻しに入った印象だ。前回のサイクルトップは20日夜高値106.60円と22日未明のFOMC直後につけた瞬間高値106.63円によるダブルトップのため、今回の高値形成期は27日の日中から27日夜にかけての間と想定するが、やや長引く場合は28日夜にかけて延長される可能性も考えられる。既に20日夜高値からは4日を経過しているので105.25円割れを弱気転換注意、105円割れから続落し始める場合は新たな弱気サイクル入りとして次の安値形成期となる28日から4月2日にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では27日早朝への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いてきている。先行スパンを上回る内は上昇継続余地ありとみるが、先行スパンへ潜り込むところからは弱気転換注意、先行スパン転落からは弱気サイクル入りによる安値試し優先と考える。

60分足の相対力指数は22日から26日朝への安値形成時に指数のボトムから切り上がる強気逆行を示し、27日朝には60ポイント台後半まで上昇している。まだ弱気逆行(相場が高値を切り上げて指数がトップを切り下げる)は発生してないので、50ポイント台を維持する内は上昇継続余地ありとし、50ポイント割れからは下げ再開を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.25円を支持線、105.65円を抵抗線とみておく。
(2)105.25円を上回る内は上昇余地ありとし、105.65円超えの場合は105.75円から106円手前への上昇を想定するが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。ただし105.50円以上を維持する場合は28日午前へ高値を試す可能性が残ると考える。
(3)105.25円割れを弱気転換注意とし、105.00円割れからは先行スパン転落とも重なるので下落再開として27日夜から28日にかけての安値試しを想定する。その場合の下値目処は第一に23日安値104.63円試しとし、底割れの場合は104円前後試しを想定する。また105円以下に留まる場合は28日も安値を試しやすいとみる。(了)<9:40執筆>

【当面の主な予定】

3/27(火)
22:00 (米) 1月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年比 (12月 6.3%、予想 6.1%)
23:00 (米) 3月 リッチモンド連銀製造業指数 28 22
23:00 (米) 3月 消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード) 130.8 131.0
24:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

3/28(水)
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行政策金利 (現行 6.75%、予想 6.50%へ引き下げ)
09:00 (NZ) 3月 NBNZ企業信頼感 (2月 -19.0)
21:30 (米) 10-12月期 四半期GDP、確定値 前期比年率 (改定値 2.5%、予想 2.7%)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前月比 (1月 -4.7%、予想 2.0%)
25:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

3/29(木)
米債券市場 短縮取引(グッドフライデー前日)

オーダー/ポジション状況

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