<概況>
8月29日の北朝鮮ミサイル発射騒動により29日夕刻には108.26円まで下落していたドル円はその後に反騰した。北朝鮮ミサイル発射問題に関し、日本では有事リスク拡大として円高株安要因としてかなり意識されたが米国市場ではさほど問題視されなかったことで悲観し過ぎの反動高が発生した。ケースシラー住宅価格指数、米消費者信頼感指数が良かったこともドルを押し上げたが、連騰してきたユーロが調整安に入ったことも大きく影響した。
この反騰については、8月23日高値109.82円、25日夜高値109.84円で110円到達できずに反落してきたことを踏まえて、今回も110円手前で抵抗にあうのではないかと考えたが、30日には米GDP改定値、ADP民間雇用統計が良かったことで110円突破となり、31日夜には110.67円まで上値を伸ばした。
しかし、31日夜は米個人消費とデフレーターが注目されていたが、予想通りないしはやや弱い内容で米連銀の期待するインフレ進展を示さなかったことからドルは反転下落に転じた。また米財務長官がドル安誘導的な発言をしたと報じられたことドル安円高を助長した。このため1日未明には109.88円まで下落している。
米商務省が発表した7月のPCEIデフレーターは前年同月比1.4%上昇で前月と変わらずであった。食料品とエネルギーを除く同コア指数は1.4%上昇で前月の1.5%上昇から鈍化した。今年2月に2.2%上昇となったもののその後は米連銀のインフレ目標である2%割れが続いている。今回の発表も米連銀のハト派姿勢を維持、拡大させるものと市場は受け止めた。
ムニューシン財務長官が「貿易に関しては一段と弱いドルが我々にとっては多少好ましい」と発言したと報じられたことがドル安要因となった。同長官は最近のドル下落に対して「短期的にはプラスとマイナスの影響がある。貿易にはやや良い」としたが、「(長期的には)ドルの強さはドルに対する信頼感の表れだ」との見方を示しており、当局の伝統的なドルへの姿勢を崩すものではなかったようだが、市場はドル安要因としての受け止めを優先したということだろう。
【米雇用統計】
1日夜には米労働省雇用統計がある。8月30日に先行して発表されたADP民間雇用者数は23万7000人増となり、市場予想の18万5000人増を上回った。このため本番の雇用統計も良好な数字となる可能性がある。市場の事前予想は非農業部門就業者数を18万人増とし、前月の20.9万人増からやや鈍化するものの良好な水準を維持すると予想されている。
8月4日の雇用統計が強かった時、ドル円は直前安値109.82円から8月4日深夜には111.03円まで反騰したが、その後は徐々に失速、8月8日夜のワシントンポスト紙報道とトランプ大統領発言による米朝間の緊張問題を焦点化として急落に向かい、8月11日安値108.72円まで下げている。
今回も予想以上に強い場合は短期的な上昇となる可能性があるが、日付が変わって反落する場合や上昇幅が1円に満たない程度に留まる場合は材料消化からドル安円高を再開しやすいと思われる。また予想よりも悪い場合はドル全面安により円高再開のきっかけとなりやすいと注意する。
【60分足 一目均衡表分析】
60分足の一目均衡表では29日夕安値からの急反騰で遅行スパンが好転。先行スパンを上抜き返し、両スパン好転が継続していたが、31日夜からの反落で遅行スパンが悪化した。先行スパン帯の上部にぶつかっており、潜り込み始めている。このため、31日夜高値で目先の上昇一巡、反動安に入っているとすれば、遅行スパン悪化中は安値試しを優先し、先行スパン下限のある109.50円前後を試す可能性が警戒される。さらに米雇用統計等をきっかけに先行スパンから転落する場合は週明けへ一段安しやすくなると思われる。強気再開には遅行スパン好転から31日高値超えへと進む必要があると思われる。
60分足の14本相対力指数は29日夜からの反騰において、30日から31日への相場高値更新に対して指数が高値を更新できずにジグザグを繰り返す弱気逆行気配を示していた。31日深夜の下落により40ポイント台まで下げているので、60ポイント超えへと切りかえせない内は一段安、指数の30ポイント割れへ進む可能性を警戒する。
概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、8月29日夕安値を前回のサイクルボトムとして次のトップ形成期となる30日夜から9月1日夜にかけての上昇期にあったが、31日夜高値でサイクルトップをつけて下落期に入ったと思われる。今回の安値形成期は1日夕から5日夕にかけての間と想定されるので、米雇用統計前は安値を試しやすいとみる。雇用統計から急騰なら直前安値をサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとして次の高値形成期となる5日夜から7日への上昇へ進む可能性が考えられるが、雇用統計から下落の場合はサイクルボトム形成の継続として週明けへ続落しやすいと考える。
以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)9月1日朝安値109.88円を割り込まない内は110円台前半での推移で雇用統計を迎える可能性を考える。
(2)109.88円割れの場合は109.50円前後試しへの下落を想定するが、雇用統計前の109.50円割れは買い戻されやすいとみる。
(3)雇用統計からいったん反騰しても長続きせずに発表前水準を割り込む場合は一段安警戒とし、109.50円割れの場合は109.00円前後試しを想定する。雇用統計から急落商状の場合は108円台後半への下落を想定する。
(4)雇用統計から反騰する場合は31日夜高値試しとし、高値更新からは新たな強気サイクル入りとして111円台前半試しへ向かう可能性を考える。雇用統計発表前水準を上回って終了なら週明けも続伸しやすいとみる。(了)<10:00執筆>
【週末の主な予定】
9月1日
シンガポール市場休場(ハリラヤハジ、イスラム教巡礼祭)
21:30 (米) 8月非農業部門雇用者数 (7月 +20.9万人、予想 18.0万人)
21:30 (米) 8月平均時給 前月比 (7月 +0.3%、予想 +0.2%)
21:30 (米) 8月失業率 (7月 4.3%、予想 4.3%)
23:00 (米) 8月ミシガン大学消費者信頼感指数 確報値 (速報 97.6、予想 97.4)
23:00 (米) 7月建設支出 前月比 (6月 -1.3%、予想 +0.5%)
オーダー/ポジション状況
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