ドル円見通し有事リスク緊張発生前水準へ戻す(8/16)

北朝鮮軍によるグアム近海へのミサイル発射計画が正式に報告されたことに対し、金委員長が「米国の動向を見守る」と発言したと報じられた。

ドル円見通し有事リスク緊張発生前水準へ戻す(8/16)

<概況>

米朝間の有事リスク急上昇を背景に8月8日夜高値110.82円から11日夜安値108.72円まで円高ドル安となっていたが、週末に新たな緊張拡大がなかったことからリバウンドに入り、NY連銀総裁発言、さらに金委員長発言、米経済指標が予想を大幅に上回る良好さを示す等、先週後半とは真逆の情勢変化となったことでドル円は一段高へと進み、15日夜には110.84円をつけた。

【米朝間の一触即発危機感が後退】

8月8日深夜のワシントンポスト紙が北朝鮮がICBMに核弾頭を搭載することが可能との観測記事を掲載、トランプ大統領が攻撃的な発言を繰り返し、北朝鮮がそれに呼応してグアムの米軍基地近海へ中距離弾道ミサイル4発を発射する計画をぶち上げたことで有事リスクが一挙に高まった。
金委員長の動静が隠されたことで週末に何か動きがあるのではないかと警戒されたが何もなく、15日午前には北朝鮮軍によるグアム近海へのミサイル発射計画が正式に報告されたことに対し、金委員長が「米国の動向を見守る」と発言したと報じられた。このため、北朝鮮のミサイル発射計画が実行される可能性が低下したと市場は受け止め、ひとまず8日夜からの緊張感は解消したとの反応へ進んだ。
北朝鮮動向についてはこれまでも緊張と緩和を繰り返してきたため、首脳発言や軍の動向(ミサイル発射準備の動き等)、あるいは核実験の可能性が浮上する場合には再び緊張感が一挙に高まる可能性がある。しかし新たな動きがなければ、この問題はいったん棚上げされたと市場も受け止め、本来の米連銀利上げ姿勢を探るという方向へ向くかもしれない。

8月8日夜高値110.82円の前は、8月4日の米雇用統計が強かったことで上昇した時の高値111.04円、8月2日夜の戻り高値110.98円等、111円前後で三度戻り売りにつかまっている。15日夜に110.84円まで戻したことで、この抵抗水準、緊張激化前水準までは回復した。さらにこの抵抗を超えて上昇するには、8月4日の米雇用統計反応を超えるドル高感の発生が必要となるとすれば、ひとまず戻りは一巡し、一段高するための材料、きっかけを探り、きっかけを得られればもう一段上の水準=7月27日未明の米FOMCから急落する前の112円を目指す可能性が出てくると考えられるが、きっかけを得られないうちは110円前後を支持線とした持ち合い、ないしはドル安感が再燃すれば110円割れからの続落により、再び安値を試す可能性が高まると思われる。

【米経済指標は強め、FOMC議事録公開迫る】

NY連銀の8月製造業景況指数は市場予想の10.0、前月の9.8を大幅に上回る25.2だった。
7月の米小売売上高は前月比0.6%増となり、予想の0.3%増、前月の0.2%減(0.3%増へ上方修正)を上回った。
NAHB住宅指数は68となり、市場予想および前月の64を上回った。
これら米経済指標の強さは米連銀による年内あと1回の利上げ可能性を高めるものと受け止められ、14日夜のNY連銀ダドリー総裁による「米経済が想定通りに推移するなら年内にもう一回利上げすることが好ましい」との発言を思い出させるものとなった。

しかし、米連銀があと1回の利上げを決定するには十分なインフレ率の上昇が必要であるが、それが難しいのではないかとの印象を先週10日の米生産者物価指数、11日の米消費者物価指数が予想を下回る結果に終わったことが示しているともいえる。
8月17日未明にFOMCの前回会合議事録の公開がある。その内容によって年内あと1回の利上げ確率が上昇するのか、低下するのかにより、ドル円が111円前後の抵抗を突破して一段高へ向かうのか、再び安値を試し始めるのかが決まってくるのではないか。

【当面の主な予定】

【当面の主な予定】

60分足の一目均衡表では14日午後への上昇で遅行スパンが好転、先行スパンを上抜いた。15日夜の上昇により、両スパンの好転は維持されているが、15日夜高値の後は新たな高値更新に至っていないので、現状から横ばい推移ないしはジリ安の場合は遅行スパンが悪化してくる可能性があると注意する。
15日深夜安値110.39円割れからは遅行スパン悪化となるためひとまず戻り一巡から反落に入る可能性を警戒する。その際は先行スパン上限で止まるか、スパンにもぐりこんで下限を試す可能性も警戒する。

60分足の14本相対力指数は11日の下落時に21ポイント台まで低下してから戻し、15日夜の一段高で80ポイントを超えた。14日高値形成時とは弱気逆行していないものの、80ポイントを超えてから60ポイント台序盤まで下げているため、逆行が見られなくても高値警戒圏に来ていると警戒する。60ポイント割れからは40ポイント台を試す下落入りに注意する。

概ね3日から5日周期の短期サイクルでは、8月11日夜安値からの上昇が続いてきたが、8月8日夜高値までのイッテコイを実現していること、10日午前高値から4日目に入っていることを踏まえると、15日夜高値で目先のサイクルトップを付けた可能性が考えられる。15日深夜安値110.36円割れ回避のうちは上昇継続余地ありとして16日夜から17日午前へ続伸する可能性があるが、15日深夜安値割れの場合は弱気サイクル入りと仮定して次の安値形成期となる16日夜から18日夜への下落が想定される。

以上を踏まえ、当面のポイントを示す。
(1)15日夜安値110.39円以上での推移中は戻り高値を試す可能性ありとし、15日夜高値超えの場合は111.00円から111.20円前後への上昇を想定するが、111円超えはいったん戻り売りにつかまりやすいと警戒する。
(2)15日深夜安値割れの場合は16日夜以降への安値形成期入りとして、まず110.00円から109.80円前後への下落を想定する。
(3)110円割れを切り返す場合は8月1日から8月8日にかけての、110円前後から111円前後までのレンジで持ち合い相場となったことの再現で、持合い相場入りとなる可能性を考えるが、110円割れから続落し、ドル安材料が出てくる場合は11日安値を目指す下落再開の可能性を想定する。(了)<9:50執筆>

【当面の主な予定】

8月16日
北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、第1回会合(ワシントン、20日まで)
18:00 (欧) ユーロ圏4-6月期GDP・改定値 前期比 (速報 +0.6%、予想 +0.6%)
18:00 (欧) ユーロ圏4-6月期GDP・改定値 前年比 (速報 +2.1%、予想 +2.1%
21:30 (米) 米7月住宅着工件数 (6月 121.5万件、予想 122.5万件)
21:30 (米) 米7月建設許可件数 (6月 125.4万件、予想 124.0万件)
27:00 (米) FOMC[米連邦公開市場委員会]議事録[7月25-26日分]

03:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録公表(7月25、26日開催分)

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